めまいとその対処法

読み始める前に】

人は、二本足で立つ生き物です。

普段は意識せずに当たり前のようにできていることなのですが、よく考えてみるとものすごく高度な能力だと思いませんか?

例えば、人間と同じ形の人形を二本足だけで立たせてみようとしても、それは物理的に難しいことですよね。

すぐに倒れてしまったり、支えが必要だったりするのではないでしょうか。

人間の体というのは、縦に長く、重い頭部や体幹が上半身に集中しています。

にもかかわらず、それを支えるための下半身は細い足が2本、接地面積(足の裏)が狭く、非常に不安定でバランスが悪い作りになっているのです。

それなのに、上半身を揺さぶっても傾けても倒れることなく、何食わぬ顔で長時間立って静止していられるのですから不思議です。

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前置きが長くなってしまいましたが、一体この話がめまいとどう関係しているのでしょうか。
実は、バランスとめまいのメカニズムには密接な関係があるのです。

平衡感覚とバランス~小さな感覚受容器~

人間が、この不安定な作りの体を二本足だけでどうやってバランスを保って立っていられるのかは、身体に備わった「平衡感覚(へいこうかんかく)」が大きなカギを握っています。

平衡感覚というのは、自分の体が今、真っすぐなのか傾いているのか、動いているのか止まっているのかを感じ取る機能を言います。

それでは、この平衡感覚をつかさどる器官は、身体の中のどこにあるのでしょうか?

答えは、下の図の中にあります。

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これは、人間の耳とその奥にある器官を断面で表したものです。

耳から耳の穴(外耳道)を通って鼓膜を超えた先に、カタツムリのようなうず巻きに3本のループ状のものが付いたもの(水色で描かれた部分)がありますね。
これが、平衡感覚をつかさどる器官の正体です。

これは「内耳(ないじ)」と呼ばれる部分です。
耳の奥の硬い骨に囲まれた場所にあるので外からは見ることができません。

この内耳は立体的な構造をしており、非常に小さいものです。
このうず巻き部分を伸ばしても3cmほどの長さしかない小さな器官が、人間の大きな体のバランスを取る重要な役割を担っているのですね。

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この内耳は図の説明にあるように、カタツムリ状の「蝸牛(かぎゅう)」、管がループ状になった「半規管(はんきかん)」、そしてその中間にある「前庭(ぜんてい)」の3つの部分に区別され、それぞれが重要な役割を担っています。

これら3つのうち、平衡感覚にかかわるのは「半規管」「前庭」の2つです。
なお、この「半規管」は3本あるので「三半規管(さんはんきかん)」と呼ばれたりもします。

それでは、これらがどのような働きをしているのか、詳しく学んでいきましょう。

平衡感覚のメカニズム

普段の何気ない会話の中で「三半規管がやられた」「三半規管が弱い」といった言葉を使ったり聞いたりしたことはありませんか?
乗り物酔いをしたり、めまいを感じたりした時に使われることが多いようですね。
これは、三半規管が平衡感覚に関係していることに由来しているのです。

先ほどの話にも出てきましたが、内耳のうち「三半規管」「前庭」がそれぞれ平衡感覚にかかわる重要な役割を担っています。

まず「三半規管」は、回転性の動きを感知するのが得意な部分です。

三半規管は3本の管がそれぞれ輪っかのようになっていますが、管の中はトンネル状になっていてリンパ液という水分で満たされています。

頭を回転させると、その運動につられるように管の中でリンパ液の流れが起こります。

すると、管の内側にある有毛細胞がリンパ液の流れを感知し、脳に「今、頭が回転している」ということを伝えます。

そして、もう一つの「前庭」は、頭の傾き具合や加速度運動を感知するのが得意です。

前庭には耳石器というセンサーが2つあり、その内面にも同じように有毛細胞があります。

その有毛細胞に乗っている耳石(平衡砂と呼ばれるものの集まり)が、頭を傾けたときに重みで重力によって引っ張られると、有毛細胞が耳石の動きを感知して、脳に「今、頭が傾いている」ということを伝えています。

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それらの情報と合わせて、目から見える景色身体の動きなども、脳にとっては頭の傾きや動きを判断するための重要な情報です。
これらの情報がピッタリ一致したときに初めて、脳はバランスを取るための正確な指令を体に送ることができるのです。

めまいの正体

頭の向きや動きを感知して全身のバランスを保つためのしくみについては先ほどお話しした通りですが、この一連の経路のうち一つでもどこかに不具合が生じると、全身のバランスを取ることが難しくなります。

自分の頭や身体が今、どちらの方向に向いていて、どんな姿勢や動きをしていて、どれくらい傾いているのか。
そのことを脳が判断するためには

  • 三半規管のリンパ液の流れから感知した回転
  • 耳石器の石の動きから感知した傾きや加速度
  • 目に見える景色
  • 実際の身体の動きや姿勢

これらの情報をもとにして一つの判断を下しています。

しかし、何らかの原因でこのうちのどれかが間違った情報を脳に伝えてしまう場合があります。
一方からは「止まっている」という情報が届いたのに、もう一方からは「回っている」という情報が届くと、その矛盾に脳は混乱し、バランスを取るための正確な指令を出すことができなくなってしまうのです。

このように、実際には動いていないのに動いていると脳が錯覚を起こしてしまった状態が、めまいの正体です。
めまいは、医学的には眩暈(げんうん)とも呼ばれます。

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病気によるめまい(耳性のもの)

めまいのうち、約7割は内耳に原因があるもので、天井や景色がグルグル回る「回転性めまい」が特徴です。

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① 良性発作性頭位めまい症

内耳の前庭にある耳石(砂粒のかたまり)の一部が何らかの原因ではがれ落ち、その石が三半規管に入り込んでしまうことによっておこるめまいです。

通常は頭の動きと三半規管を満たすリンパ液の流れは一致するのですが、三半規管に入り込んだ石がある特定の頭の位置や動きによって動き、リンパ液の流れを激しく乱してしまいます。

そうすると、体の動きとリンパ液の流れが合わず、脳が混乱してめまいとして自覚するのです。

数十秒~数分で治まる短時間のめまいを繰り返すのが特徴で、嘔気嘔吐を伴うことも多いのですが、耳鳴りや難聴などは起こりません。

横向きの姿勢のまま長時間寝ていたり、枕が低すぎると、はがれた耳石が三半規管に入り込みやすくなります。

治療として、医師の指導のもと、三半規管に入り込んだ石を追い出す体操を行うこともあります。

② メニエール病

何らかの原因で、三半規管を満たしているリンパ液が増えすぎることによって起こります。

そうすると、そのむくみは内耳全体に及び、平衡感覚をつかさどるセンサー(三半規管や耳石器)が正常に働かなくなってしまうのです。

めまいは数十分~数時間続くこともあり、週に数回~年に数回と何度も繰り返します

また、聴力をつかさどる「蝸牛」にも影響を与え、耳鳴りや難聴を伴います

リンパ液が増えすぎる原因ははっきりとはわかっていませんが、ストレスや疲労との関係が大きいようです。

状況に合わせて、薬での治療や外科的治療が行われることもあります。

③ 突発性難聴

突然、片方の耳が聞こえにくくなる病気です。

その際にめまいを伴うことが多くありますが、めまいそのものを繰り返すことはありません。

内耳の血流が悪くなることや、ウイルス感染が関係していると考えられています。

メニエール病と少し似ていますが、別の病気です。

突発性難聴によるめまいは長引くことはありませんが、難聴については早めの治療が必要です。

④ 前庭神経炎

内耳で感知した情報を脳に伝えるための神経「前庭神経」が何らかの原因で炎症を起こし、激しい回転性のめまいが起こります。

左右のどちらか片方だけに起こり、障害された側の神経は脳にうまく情報を伝えることができなくなります。

そうすると、左右それぞれから違った情報を受け取った脳が、混乱してめまいを起こすのです。

1日~数日間断続的に激しいめまいが続いたあとは繰り返さずにおさまり、耳鳴りや難聴を伴わないのも特徴ですが、めまいがおさまった後も、ふらつきや不安定感が続くケースもあります。

薬で神経の炎症を治療したり、ふらつきを改善するリハビリを行うこともあります。

病気によるめまい(その他のもの)

頻度は少ないですが、耳が原因のめまい以外にも次のような原因のものがあります。

「非回転性めまい」が特徴で、「浮遊性」ふわふわと浮いたような、「動揺性」ゆらゆら揺れるような、と表現されることもあります。

⑦ 脳が原因のめまい

めまいのうち約1割を占めるものに、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍によるめまいがあります。

多くは、ろれつが回らない、顔面や手足の左右どちらかに力が入らない、言葉が出てこない、意識がぼんやりするなどの症状を伴います。

このような場合は命に関わることもありますのですぐに病院を受診しましょう。

⑧ その他が原因のめまい

うつ病、パニック症候群などによるものや、原因不明のものなど、めまい全体の約2~3割を占めます。

めまいの一種「酔い」

病気ではありませんが、日常生活のなかで感じる「酔い」も軽いめまいの一種です。

① 乗り物酔い、回転遊具

長時間、激しい揺れにさらされ続けると三半規管の中のリンパ液の流れが激しくなります。

すると体の揺れがおさまってもリンパ液の流れが止まりにくくなり、目から見える景色とリンパ液の流れに矛盾が生じます。

その結果、脳が混乱してめまいや吐き気を起こします。

② 3D、VR酔い

実際には身体は止まっており内耳も体の動きを感知していないのに、目からはまるで動いているような景色が見えます。

その情報のズレに脳が混乱して、乗り物酔いのような症状が出ることがあります。

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めまいの対処法

ここでは、「耳が原因のめまい」についての対処法を紹介します。
耳が原因のめまいは、めまい全体の7割ほどを占めます。

めまいの対処法の基本は、4.めまいの正体にある内容に対抗する方法をとることです。

めまいは、体の動きや向きと、内耳が感じる動きのズレによっておこりますので、そのズレをなくしてあげると良いのです。

そのためにはまず「脳に伝わる情報を、ひとまず遮断する」ことがポイントとなります。

  • 安静にして、内耳の動きを止める(三半規管のリンパ液の流れを止める、耳石器の動きを止める)
  • 目を閉じる(目からの情報を遮断する)
  • 横になる(体の動きそのものを止める)
  • 強い光や音など、刺激になるものを避ける(脳を休ませる)

このように、目や耳、体から脳に伝わる情報をいったんすべて停止させることで、脳の混乱をしずめます。

この対処によって脳の混乱が落ち着き、再度、脳への情報のズレが起こらなければめまいは回復します。

そして、もう一つ大切なことがあります。
それは、めまいによっておこるケガや事故を防ぐことです。

めまいが起こった時に自宅など安静にできる場所にいればよいのですが、外出時や運転中などに急にめまいを起こした場合、危険がたくさんあります。

もし近くにめまいを起こした人がいたら、ぜひ救いの手を差し伸べてあげてください。

  • 交通量の多い場所、転落の危険がある場所からは速やかに離れ、安全な場所に移動しましょう。
  • 立ったままの姿勢では万が一転倒した場合ケガをするおそれがあります。
    しゃがむ、座るなど姿勢を低くして、できれば背もたれ付きの椅子に腰かける、壁によりかかって座るなど、支えがあるほうが安定します。
  • できれば、めまいがおさまるまで近くで付き添ってあげられると良いですね。
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病院に行く?行かない?

軽いめまいであれば、一定時間安静にしていれば回復します。

しかし、中には詳しい検査や治療が必要なものがあります。

特に、めまいの原因が脳にある場合は、早急な対応が必要な場合もあります。

症状だけでははっきり区別をすることができないのですが、多くの場合は次のような症状を伴いますので、早めに専門医(脳神経外科または神経内科)の診察を受けましょう。

  • ろれつが回らない
  • よだれが流れる、口元がゆるむ
  • 顔の動きや感覚に左右差がある
  • 手足の左右どちらかがしびれる、力が入りにくい
  • 話そうとしても言葉が出てこない
  • 意識がもうろうとする
  • 呼びかけに応じない
  • 呼吸がおかしい

また、上記のように急を要する状況ではなくても、

  • 嘔気嘔吐が続く
  • なかなかめまいが治まらない
  • 食事や水分がとれない

といった場合は、どなかたに付き添ってもらい病院を受診しましょう。

おわりに

めまいは、朝起きた時、また時間やタイミングに関係なく、突然に起こることがよくあり、回復するまでの時間もさまざまです。

いずれにしても日常生活に大きな影響を及ぼし、発作をコントロールしながら持病として長期間付き合っていかなければならないものもあります。

このように、めまいといっても原因やタイプがいくつもありますので、まずは原因を特定し、それに応じた対策を取りましょう。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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