世間一般的には、コレステロールは体に悪いものであり、食べすぎや肥満、中性脂肪、生活習慣病、動脈硬化などと関連が深いものとして認識されています。
コレステロールは場合によっては健康を害する原因となる一方で、人間の生命維持のためには不可欠なものでもあることも確かです。
コレステロールの数値が高いと、肥満や食べ過ぎなど生活習慣の見直しや改善を求められることがありますが、反対に低い場合はどうでしょうか。
実は、コレステロール値が低い場合にも脂質異常症(旧名 高脂血症)と診断されることがあるのです。
もくじ
コレステロールとは
コレステロールとは血液中にある脂肪のことをいい、7~8割は肝臓で作られ、残りは食品から摂取されます。
血流に乗って全身各所に運ばれると細胞の膜やホルモンの材料として活用されるのですが、コレステロールは自分で移動する能力がないため、必要な場所までたどり着くためにはいわゆる「運び屋」が必要なのです。
この運び屋が「悪玉(LDL)」と「善玉(HDL)」と呼ばれるものです。
悪玉と善玉のはたらき
運び屋である「悪玉」と「善玉」は、それぞれ「コレステロール」という荷物を配達する役割を担っています。
そしてその名の通り、悪玉の働きは体に悪い影響を与え、善玉はそれを阻止しようと働いています。
その仕事の内容と特徴は次のとおりです。

悪玉(LDL)
- 数が多い(善玉の倍以上)
- 血液中のコレステロールを全身各所に届ける(その後、細胞の膜やホルモンの材料として利用される)=本来の正当な役割
- 血管壁の内側に潜り込み、余分なコレステロールを溜め込んでしまう(プラークの原因、動脈硬化を引き起こす)
善玉(HDL)
- 数が少ない(悪玉の約半分)
- 血管壁の内側に溜まったコレステロールを回収して肝臓に返却してくれる(その後、コレステロールは肝臓でリサイクルされる)
コレステロール値とは
病院や健康診断などで採血をした時に、コレステロール値を調べた経験はありませんか。
15年ほど前の健康診断では、コレステロールの検査といえば「総コレステロール」のみを調べていましたが、2007年以降は「悪玉」「善玉」を区別して検査をするようになりました。
そして次のような検査項目が、コレステロールを調べる項目として重視されています。
LDLコレステロール(LDL-C、LDL-Choなど)
コレステロールを運搬中の悪玉の数 基準値=140mg/dL未満
HDLコレステロール(HDL-C、HDL-Choなど)
コレステロールを運搬中の善玉の数 基準値=40mg/dL以上
また、この2つと併せて脂質異常症(旧名 高脂血症)の診断に利用されるのが
中性脂肪(トリグリセリド、トリグリセライド、T-Gなど)
食べ物から摂取した脂肪や糖分 基準値=150mg/dL未満
です。

脂質異常症とは
脂質異常症(旧名 高脂血症)は、血液中の脂質の数値に異常がある状態をいいます。
血中の脂質には、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪がありますが、このうちのいずれかが基準値から外れた場合、脂質異常症と診断されます。
脂質異常症と診断されても、特に自覚症状があるわけではありません。
しかし改善しないまま放置すると、動脈硬化を引き起こす原因となります。
ここで注目していただきたいことは、コレステロール等の脂質はすべて低ければよいというわけではないという点です。
LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)の値が低い場合は、おおかた健康的な生活が送られていると考えられます。
しかし、HDL(善玉)コレステロールに限っては高いほうが良く、低い場合に脂質異常症と診断されますので基準値を下回らないようにする必要があります。
コレステロール値に影響するものとは
HDL(善玉)コレステロール値が低く40mg/dLを下回っている場合、たいてい中性脂肪が高値となります。
中性脂肪が高値になるとHDL(善玉)が下がるというシーソーのような関連性がありますので、中性脂肪を上げる要因を減らすことでHDL(善玉)を上げる効果が期待できます。
中性脂肪を上げる要因には、カロリーの高い食事、甘いもの、アルコール、油こいもの、運動不足や喫煙などが挙げられます。
HDL(善玉)コレステロール値を上げるためには、減量、禁煙、有酸素運動、和食中心の食事(糖質や脂質を控えめにしてたんぱく質を多めにとる)が効果的です。
脂質異常症の予防と改善のために
コレステロール値や中性脂肪の異常を指摘されたとしても、すぐに何らかの症状が出るわけではありません。
しかし、脂質異常症は動脈硬化の原因になり、動脈硬化は狭心症や心筋梗塞、脳血管障害などさまざまな疾患を引き起こします。
将来の自分自身のために健康的な生活を送り、コレステロールや中性脂肪を改善しましょう。

おわりに
LDL(悪玉)コレステロールを下げるための治療薬はたくさんの種類がありますが、HDL(善玉)を上げるための薬はありません。
ですので、HDL(善玉)を増やすには有酸素運動などで中性脂肪を減らすことが一番の近道となります。
ウォーキングなど少し息が上がる程度の軽い運動を20分以上続けることは、身体面だけでなく精神面にもさまざまなよい効果をもたらしますので、もし習慣がない方は一度試してみてはいかがでしょうか。
最後までお読みくださりありがとうございました。