吐き気・嘔吐(おうと)とその対処法

吐き気や嘔吐(おうと)は、多くの人が一度や二度は経験したことがあると思います。

非常につらい症状ですが、年齢や健康状態に関わらずちょっとしたきっかけで起こりやすい症状でもあります。

例えば、体調が悪い時、食べ物に当たった時、精神的に緊張した時、不快なにおいや映像を見た時、食べ過ぎた時、酔った時などさまざまな原因があります。

これらのように日常的によくある出来事が一体どのように吐き気や嘔吐につながるのか、そのメカニズムや対処法について学んでいきましょう。

吐き気・嘔吐とは

吐き気は、医学的には「悪心(おしん)」「嘔気(おうき)」とも呼ばれます。

「吐き気がする」「気持ちが悪い」「ムカムカする」といった、嘔吐したいような、また吐き戻してしまいそうな感覚、胸のあたりの不快感を表します。

吐き気嘔吐が起こる前の前触れのようにも現れることが多いのですが、嘔吐の原因によっては吐き気を感じないまま嘔吐することもあります。

吐き気が強い場合など、実際に吐き戻してしまうことを「嘔吐(おうと)」といい、胃の内容物が逆流して口から外に吐き出される現象をさします。

気分が悪く胸のあたりの不快感が強いだけでなく、繰り返す嘔吐は脱水の原因になったり、食道の粘膜を荒らしたり、体力を消耗させるなど、二次的な問題にもつながります

吐き気・嘔吐のメカニズム

脳の延髄に「嘔吐中枢」という部分があり、この部分が刺激されることで吐き気や嘔吐が誘発されます。

この刺激が弱い場合は「吐くほどではないけれど吐きそう」「吐きそうだけど吐けない」という吐き気を感じる状態となります。

嘔吐中枢への刺激が強くなるほど吐き気も強くなりますが、吐き気にこらえられなくなると、今度は意思とは関係なくお腹に力が入り「我慢できずに吐いてしまった」という状況、いわゆる嘔吐が起こります。

嘔吐中枢への刺激の経路

脳の延髄にある嘔吐中枢が刺激されることで吐き気や嘔吐が起こるわけですが、刺激を与える原因となるものは数多くあります。
それらの原因が嘔吐中枢に伝わる経路は4つあると考えられ、単独で起こるものもあればさまざまな原因が複雑に絡み合っておこるものもあります。

大脳皮質から

大脳皮質は、脳を全体的に覆っている部分を指し、物事を考えたり感じ取る、判断や記憶、体を動かす指令を出すなど、さまざまな働きをしています。
この大脳皮質を経由する吐き気・嘔吐は、精神的・心理的なものが原因となって誘発されるものがあります。
これらの原因が大脳皮質を興奮させ、その刺激が近くにある嘔吐中枢に伝わるものと考えられています。

強いストレス、激しい痛みや苦痛
不快なにおい、味、光景、音
激しい感情の変化(怒り、悲しみ、恐怖、不安、拒絶)

また、脳の病変が嘔吐中枢を直接刺激して吐き気や嘔吐を誘発するものもあります。
脳は硬い頭蓋骨に囲まれており中のスペースには限りがあるため、脳の容量が増えると中の圧が高まって嘔吐中枢が刺激されます

脳出血、脳腫瘍、脳浮腫、頭蓋内圧亢進

化学受容器誘発帯(CTZ)から

体のさまざまな部位から嘔吐中枢へ伝わる刺激は、嘔吐中枢に到達する前に化学受容器誘発帯(CTZ)と呼ばれる部分を通ります。
CTZは、体から受け取った血液の情報をもとに嘔吐中枢を刺激する役割があり、化学受容器引金帯とも呼ばれます。
血液に有害物質が含まれたり組成の変化が起こると、CTZはその異常を感知して興奮し、嘔吐中枢に刺激を伝達します。

薬物の副作用、食中毒など細菌の毒素、各種中毒によって体内で産生される毒素、貧血や高山病などの酸素不足、放射線被ばく、熱中症や脱水などで起こる電解質異常

内耳(前庭器)から

内耳には、体の向きや回転、動くスピードなどを感知したり平衡感覚を司る働きがあります。
この内耳で感知した情報と実際の動きにズレが生じると、脳が混乱してめまいや吐き気を起こします

内耳疾患、メニエール病、めまい症、乗り物酔い

これはめまいのメカニズムと共通する部分もありますので、下記リンクも参考にしてみてくださいね。

末梢から

臓器などに張り巡らされている神経が刺激を受け、その刺激が嘔吐中枢に伝わることで吐き気や嘔吐が誘発されることがあります。
主なものには、のどのあたりにある舌咽神経、臓器にある神経(迷走神経や交感神経)があります。
舌の根元にある舌咽神経は、舌を押さえたり、激しい咳が続いたり、歯磨きなどで刺激されることがあます。
また、臓器に張り巡らされている迷走神経や交感神経への刺激は、臓器の激しい動き、壁が過剰に伸びる(満腹など)、臓器そのものの病変や炎症、腫れ、腸管の通過障害(イレウスなどで腸が詰まる)などが原因となります。

嘔吐した時の対処法

嘔吐は非常につらい症状なので何とかして早く嘔吐を止めたいという気持ちになりますね。
しかし、嘔吐の中には「胃腸に入ってきた有害なものを体外に出す」という防御反応として起こっているものもあります。
ですので、吐き気を積極的に止めたほうがいいのか、おさまるのを待つほうがいいのかは、ケースバイケースであるといえます。

吐き気や嘔吐が続くときは、できるだけ楽に過ごすこと無理に活動せずに安静にしていることが一番です。

しめつけない衣類を着るにおいや光などの刺激がない静かな部屋で休むことも大切です。

そしてまわりにいる人は、窓を開けて換気する衣類や寝具が汚れたら交換するうがい用の冷たい水を準備する、などのサポートができるといいですね。

吐き気・嘔吐の対処法

もしも原因がはっきりしていれば、その原因を取り除いたり遠ざけることが一番です。
例えば、乗り物酔いであれば揺れのないところで静かに休む、不快なにおいが原因であればにおいの元から離れたり始末するなど、吐き気の原因が解消できれば自然とおさまります。

しかし、吐き気や嘔吐の原因に心当たりがない場合や他の症状を伴う場合は、まずは原因の究明が必要です。
医師の診察を受け、原因がわかればその治療を行います。
また、脱水を予防改善するための点滴を行ったり、制吐剤(吐き気止め)によって症状を和らげたり、原因によっては絶食して胃腸を休めることが必要になります。

吐き気や嘔吐の原因は全身あらゆるところにあるため、原因を突き止めるまでに時間がかかる場合もあります。
次のような情報からある程度原因を推測できることもありますので、医師の診察を受ける時に伝えることで診断の助けになることがあります

  • いつ嘔吐が始まったか、何回(または何分・何時間おきに)繰り返したか
  • 吐き気や嘔吐のきっかけになったこと
  • 熱や下痢、頭痛など、吐き気・嘔吐以外の症状
  • 食べてからの時間と、吐いたものの性状
  • 食べていないものの色がついていないか(黒、赤、黄、緑、茶など)
  • 水分や食事はとれているか
  • 尿は出ているか、尿の色は濃いか薄いか

胃腸炎による嘔吐、下痢

口から入った細菌やウイルスに感染して胃腸炎を起こすものです。

回復のためには、感染源となっている細菌やウイルスを追い出すことが先決です。
そのため、吐き気止めや下痢止めなどで無理に嘔吐や下痢を止めず、「水分補給しながら出し切ってしまう」という方法が取られます。

ウイルス性感染症の嘔吐

ノロウイルスロタウイルスなど、多くのウイルスは冬に流行します。

激しい嘔吐や下痢を繰り返すのが特徴で、吐物や便から感染するため集団感染が発生します。また、家庭内での感染も起こります。
共有のトイレで感染したり、吐物の後始末や洗濯で感染するケースも多くみられます。

たいていのウイルスは、次亜塩素酸ナトリウム(商品名:キッチンハイターなど)を水で薄めたもので拭き取り消毒することが効果的です。

また、吐物や便で汚れた衣類や寝具などは、次亜塩素酸ナトリウムで浸け置きしたあとに洗濯機を回すことが望ましいですが、濃色のものは色落ちしてしまうため注意が必要です。

抗がん剤による吐き気・嘔吐

抗がん剤の種類によっては吐き気や嘔吐の副作用が出るものがあります。

制吐剤を併用して症状を和らげることもできますが、完全にゼロにすることは難しいので、耐えられる吐き気や嘔吐の程度と、抗がん剤の量や種類との兼ね合いをみながら治療をすすめていく必要があります。

つわり・妊娠悪阻(にんしんおそ)

つわりは個人差が大きく、吐いてばかりで食べられない、食べられるけど吐いてしまうというケースもあります。
中には「妊娠は病気じゃないから」「時期が来ればおさまるから」とひたすら耐えている妊婦さんもいますね。

嘔吐を繰り返す場合でも、妊娠初期の赤ちゃんはお母さんの体に蓄えられている栄養で十分足りるので、赤ちゃんの心配はいりません
しかし、母体にとって最低限の水分や栄養が摂れない場合は、点滴などによって補う必要があります

緊急性のある吐き気・嘔吐

吐き気や嘔吐を起こす原因の中には救急搬送が必要なケースがありますが、そのような場合は吐き気や嘔吐が単独で現れることは少なく、たいていは同時に他の症状もみられます

次のような場合は、速やかに医療機関を受診するか救急要請しましょう。

  • 意識がぼんやりして反応が鈍い、呼びかけに反応しない
  • いつもと違う呼吸をしている、呼吸がない、いびき
  • 激しい痛み、感じたことのな痛み(頭、胸、肩や背中、お腹)
  • 発熱、高熱
  • けいれん
  • だらんとしている

意識が正常でない場合や、小さな子どもやお年寄りなどは吐いたもので喉を詰まらせる恐れがあります。

嘔吐している場合は、起き上がっていられない状態であれば顔を横に向けるか体ごと横向きにして支え、必ずそばで付き添って顔色や呼吸状態を観察しましょう

また、これらのように緊急性がない場合であっても、小さな子どもやお年寄りは、嘔吐を繰り返すことで脱水を起こしやすくなります
嘔吐がおさまらない場合や水分があまり取れない場合は、医療機関を受診しましょう

食べたり飲んだりしてもいい?

一概には言えませんが、原因や吐き気嘔吐の程度によって、少しずつでも食べたほうが良い場合と絶食が好ましい場合があります。

医療機関に受診する必要がなくとも、小さな子どもやお年寄りの場合は、嘔吐が窒息につながる危険性があります。
無理に食べることはせず、状況に合わせて慎重に少しずつ水分や食事を摂りましょう

吐き気のある時の食事

まずは少しの水分から始めます。
白湯番茶やほうじ茶などのタンニン・カフェインを多く含まないお茶がおすすめです。
常温か体温程度の温かい温度一口ずつ様子をみながらゆっくり飲みましょう。

水分を摂っても吐き気が強くなったり嘔吐が誘発されないようであれば、消化のよい食べ物を少量ずつ食べてみましょう。
おかゆ、やわらかく煮たうどんなど、胃腸に負担の少ない食べ物をゆっくりよく噛んで食べます。
油物や固いもの、繊維質のもの、味が濃いものや刺激物は胃腸への刺激が強いためしばらくは避けましょう。

おわりに

吐き気や嘔吐は非常につらい症状で、普段の生活や活動に大きな影響を及ぼすだけでなく、誤嚥や脱水、栄養低下などさらに新たな問題につながることもあります。

しかし、近くにいる人の協力とサポートがあれば、適切な対処と早期の回復を助けることができますし、第一にとても心強く安心感を得ることができます

吐き気・嘔吐がある時に背中をさするという行為は、苦痛や不安を軽減させる、気分を落ち着かせる、嘔吐を促すなど、さまざまな効果が期待できます。

もし、本人が嫌がらなければこのような精神的なケアができるとさらにいいですね。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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