血圧の高さとその対処法

読み始める前に】

かつて、血圧とは「体調を崩した時に病院で測ってもらうものだ」という考えが一般的でした。

当時の血圧計といえば、水銀血圧計といって聴診器で血管の音を聞きながら測るタイプのものが主流でしたので、医療機関でしか目にすることがなかったかも知れません。

それが今では、一人でも簡単に測定できる家庭用の血圧計が簡単に手に入るようになり「一家に一台」が推奨されています。

また、医療機関のみならず自治体や店舗、職場など、私たちの生活圏のさまざまなところで血圧測定コーナーを見かけるようになりました。

これらのように、いつでも・どこでも・何度でも・気軽に・血圧を測ることができる環境が整っているおかげで、普段の血圧がどのくらいなのかを知ることができ、コントロールも可能になり、結果として健康の管理や疾病の予防に役立っているのです。

血圧とは

血圧とは、「血管の中を流れる血液が血管の壁を押す圧力」をいいます。

心臓から送り出された血液は、逆流することなく常に一方通行で全身の血管を巡り、また心臓に戻ってきます。

心臓から出た血液は、動脈(行き) →→→ 体中の毛細血管(折り返し地点) →→→ 静脈(帰り)のルートで循環し続けていますが、その中でも(行き)にあたる動脈には、心臓のポンプから全身に向けて送り出されたばかりの血液が流れるため、その分強い圧力がかかることになります。

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①心臓の下部分「左心室」が握りつぶされたような形に変形しています。
これを収縮(しゅうしゅく)といい、この動きによって左心室に溜まっている血液が動脈に押し出され、全身に向かって勢いよく出発します。

②収縮した心臓は、今度はすぐに元の形に戻ります。
これを拡張(かくちょう)といい、同時に上部分「左心房」で待機していた血液が下部分の「左心室」に流れ込みます。
この時、動脈には圧はかからず、流れる血液はゆるやかとなります。

心臓の「ドクン」という1拍の間に、この①と②が続けて素早く行われているのです。

ところで皆さんは、自分自身の脈に触れたことはありますか。

皮膚の上から触れることができる動脈は全身に何か所かありますが、一番簡単なのは手首にある「橈骨(とうこつ)動脈」です。

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手のひらを上に向け、手首の親指側を探ると、ドクドクと脈打っている箇所が見つかると思います。

分かりにくい人は、少し深いところにあるのかも知れません。

だいだい1秒ごとのペースでドクン、ドクンと動いているのが分かると思います。

これは、心臓が収縮した瞬間に押し出された血液が、血管を膨らませながら波のように動脈の中を移動しているためにおこります。

その膨らみがちょうど手首の動脈を通過したときに、として触れるのです。

この膨らみが通過する瞬間=「ドクン」と触れる瞬間には、その部分の血管の壁に最も強い圧力がかかっています。

一方で、脈と脈の間に何も触れない瞬間がありますが、この時は心臓が拡張した瞬間のゆるやかな血液が流れているのです。

この時、血管にかかる圧力は最も弱くなります。

血圧を測る時は、この「最も強い圧力」「最も弱い圧力」を測定しています。

例えば、血圧が 110/60 mmHg の場合
110 「最も高い圧力」上の血圧 収縮期血圧 最高血圧
60 「最も弱い圧力」下の血圧 拡張期血圧 最低血圧
というふうに解釈します。

なお、血圧の単位であるmmHg(ミリエイチジー、ミリメートル水銀柱)は圧力の単位の一つで、水銀を持ち上げる力で表しています。

これを水に換算すると13.6倍した数値になります。

例えば血圧が120mmHgの場合は×13.61632mmとなりますので、人の身長ほどの高さまで水を噴き上げる上げるのと同じだけの圧力が血管にかかっているということがわかります。

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高血圧とは

「上が140、下が90を超えると高血圧」と覚えている方も多いのではないでしょうか。
あながち間違いではないのですが、その基準は年々厳しくなりつつあります。

(高血圧治療ガイドライン2019)による基準は次のとおりです。

診察室血圧
140/90以上 高血圧
130/80未満 降圧目標

家庭血圧
135/85以上 高血圧
125/75未満 降圧目標

(75歳以上はそれぞれの数値に10mmHgずつ足します)

今の時代、家庭でも簡単に血圧測定ができるようになり、毎日同じ時間帯に同じ条件で継続的に測ることが可能です。

一方で、病院での血圧測定は精神的な緊張などからどうしても普段より血圧が高くなりがちです。

そのような意味でも、病院で測った血圧よりも家庭で測った血圧のほうがより参考になるものとして重視されるようになりました。

また、高血圧は次の2つのタイプに分けられます。

本態性高血圧(一次性高血圧)
一般的にいう高血圧のうち95%がこちらに分類されます。
本態性とは「明らかな原因がない」という意味で、その多くは生活習慣やストレスなどが大きく関係していると考えられています。
血圧を下げるためには生活習慣の改善が必要です。

症候性高血圧(二次性高血圧)
疾患などが原因で高血圧が起こるものです。
原因となるものには、腎臓や腎動脈の異常、内分泌の異常、神経の疾患、薬剤の副作用などがあります。
血圧を下げるためには、原因となっている疾患の治療が必要となります。

血圧が上がるメカニズム

血圧を左右する条件に「血液の量」「血管の状態」があります。

水道の蛇口についたゴムホースに例えて考えてみるとイメージがしやすいかも知れません。

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「血液の量」について

例えば同じ太さのゴムホースに水を流す場合、少量の水であればチョロチョロ流れますが、蛇口を全開にして水を出すとホースの先から勢いよく水が噴き出します

血圧も、この水圧と同じことです。

血液の量が増えると、その分心臓から押し出される血液の1回量も多くなりその結果、血管を流れる勢いが強くなる=血圧が上がるのです。

ところで、輸血や点滴などをしたわけでもないのに、どうして血液の量が増えるのでしょうか。

そのカギを握るのが「塩分」なのです。

塩分は体内の電解質バランスを保つのに必要なミネラルですので、食事で摂取した塩分は、栄養として血管の中に取り込まれます

しかし、その塩分が多すぎると、血液の塩分濃度が上がりすぎないように、水で薄めようとする働きがおこります。

血管の中に水が引き込まれ、結果として血液の量が増えるというわけです。

塩分の多いものや味付けの濃いものを食べるとのどが渇くのはそういった理由からです。

「血管の状態」について

これは、血管の抵抗を表しています。

同じ量の水を流そうとした時、太いホースと細いホースでは、細いホースのほうが水が噴き出す勢いが強くなります。

血管も同じように、血液の通り道が狭くなると、その分血流の勢いが強くなる=血圧が高くなるというわけです。

血管の太さはその部位によって違い、心臓から出たばかりの動脈は直径が数センチとかなり太いものですが末梢に行くにつれ徐々に細くなるなど、その部位の血流の強さに耐えうる太さになっています。

しかし、動脈硬化により血管の内腔が狭くなったり、精神的ストレスや寒冷などの刺激で血管が収縮すると、なだらかな血流であっても水道のゴムホースを指でつぶした時のように流れの勢いが強くなります。

5.血圧に影響を及ぼすもの

血圧は常に一定というわけではなく、活動に合わせて必要な血液が全身に送られるよう調整されています。

就寝中が一番低く、活動するにつれ上昇していくのが通常で、一日の中でも10~20mmHgの範囲で変動しています。

といっても、なだらかにゆっくり変動するのが理想的で、急激な血圧の上昇は血管に大きな負担をかけてしまうことになります。

急激に体を冷やす、ストレスや怒り、怒責(どせき=強くいきむこと)などは、血圧を急上昇させる要因になるためできるだけ避けたいことです。

また、血圧を測る環境によって血圧が変動するものに、次のようなものがあります。

白衣性高血圧
家庭で血圧測定すると正常値であるのに、病院で測定すると血圧が上がってしまうものをいいます。
医療従事者の白衣を見ると緊張して血圧が上がってしまうことからこの名前がつけられたようです。
しかし、将来的には本当の高血圧に移行してしまうケースも多いため注意が必要です。

仮面高血圧・かくれ高血圧
家庭では高血圧にもかかわらず、病院では正常値になるものをいいます。
白衣性高血圧とは逆のパターンであるため「逆白衣性高血圧症」ともよばれます。
家庭で血圧を測る習慣がない場合は見過ごされやすいので注意が必要です。

なぜ高血圧はいけないのか

「サイレントキラー」の異名を持つ高血圧は、その名の通り「静かなる殺し屋」として恐れられています。

血圧が高くても体調は特にいつもと変わらないことがほとんどです。

高血圧がよくないのは知っているけど、血流に勢いがあるのだからいいことなんじゃないの?と疑問に思う人もいるかも知れません。

確かに、理屈としては間違っていないようにも思えます。

全身にせっせと酸素と栄養を運んで、老廃物を回収して、血流が活発なほうが何だか健康的な気がしますよね。

しかし、血流の勢いはほどほどが一番であり、良すぎる血流は血管にダメージを与え続けてしまうことが非常に厄介で危険なことでもあるです。

血管も、ゴムホースと同じように経年劣化していきます。

それだけでなく、積み重なったダメージにより劣化がますます加速していきます。

全身の血管の中で、特にダメージを受けやすい血管は「脳」「心臓」「腎臓」の動脈です。

これらに共通していることは、太い血管から急に細く枝分かれするという構造だということです。

太い血管に流れていた多くの血液が急に狭いところに流れこむことになるので、血管への負担がとても大きい部分だということがわかります。

そして、この脳、心臓、腎臓は特に、生命の維持に重要な役割を担っている臓器でもあるのです。

高血圧という激しい血流に長年さらされ負担がかかり続けた血管は、ある時、突然破綻し、命を脅かすことになります。

サイレントキラーと言われているのは、そういうことなのです。

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高血圧の対処法

血圧を正常に保つためには、まず、日ごろの自分の血圧を知ることから始まります。

朝起きた時、夜寝る前にできれば毎日同じ条件で測り、記録をつけましょう。

血圧は1回の測定値だけではなかなか判断ができませんが、継続して測ることによって血圧の平均や変化などのパターンが見えてきます。

そして、最も大切で効果的なことは一言でいえば「健康的な生活を続けること」です。

その具体策については、次のとおりです。

減塩
1日あたりの塩分摂取量を6g以下にすることが望ましいですが、濃い味付けに慣れてしまっている人がいきなり6g以下に制限するのは非常に難しいことです。
まずは普段どれくらいの塩分を摂取しているのかを試しに計算してみてもいいですし、「ここまでなら減らしてもいいかな」と思える分だけ塩分を控え、段階的に舌を慣らしながら減らしていくのもおすすめです。
また、減塩の調味料や香辛料などを使って味付けしたり、柑橘系などの香りづけなど調理を工夫してみても案外おいしく食べられるものです。

適度な運動
肥満の場合、体重が減るにつれて血圧も下がっていく場合が多いです。
また、肥満でなくても血圧を下げるためには有酸素運動が効果的です。
高血圧のある人は、激しい運動や息をこらえるような運動はさらに血圧を上げてしまうことがありますので、少し息が上がるくらいの運動を最低30分以上続ける運動がおすすめです。

節酒
アルコールは、適量であれば血流が良くなり、血管も広がって血圧も若干下がりますが、飲みすぎはかえって血圧が高くなることがあります。
また、お酒のおつまみには塩分の高いものが多く、飲んだあとのラーメンなども塩分の摂りすぎになりますので注意が必要です。
お酒を飲む習慣のある人は、節度ある適度な飲酒を心がけましょう。

禁煙
たばこに含まれるニコチンには血管を収縮させてしまう働きがあります。
それだけでなく、喫煙すると、血中の酸素を補おうとして血流が激しくなります。
収縮して狭くなった血管の中を勢いよく血液が流れるという二重の悪影響によって血圧が上がります。
喫煙者にとってたばこはリラックスやリフレッシュのために欠かせないものでもありますが、心臓や血管への影響はかなり大きいため、禁煙が一番です。

降圧薬
生活習慣の改善をしても血圧が下がらない場合は、血管の劣化を最小限にするために降圧剤(血圧の薬)を飲むことになります。
血圧の薬は一生飲み続けないといけないというイメージがありますが、中には血圧が正常化して薬が不要になったという人もいます。
しかし、その判断は医師が長期間経過をみながら慎重に行うものですので、自己判断で薬の中断や中止はしないようにご注意ください。

おわりに

加齢によって血圧は高くなる傾向があり、さらには血管も「経年劣化」していくものですので、年齢を重ねるごとに血管をいたわる意識を持つことが大切です。

血圧は、血圧計さえあればいつでも気軽に測ることができます

血圧を適正に維持することは健康の管理や疾病の予防につながりますので、今は高血圧の心配がないという人も、まずは自分の普段の血圧を知ることから始めてみませんか?

最後までお読みくださりありがとうございました。

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