「血糖値が高い」と聞くとまず「糖尿病」という病気を思い浮かべますが、血糖値が高いと糖尿病になる、糖尿病は血糖値が高い、というイメージは多くの人が持っているのではないでしょうか。
最近は、メディアや日常生活の中でも血糖値に関するキーワードや話題をよく耳にするようになりました。
それだけ糖尿病や血糖値への関心が高まっているということがわかります。
糖尿病はある日突然発症するものではなく、発症の前には予備軍の段階があります。
発症を予測し、そして発症を予防することが可能なケースが多い糖尿病ですが、一体どのようなことに気を付けるとよいのでしょうか。
もくじ
血糖値とは
血糖値とは、血液中に糖分(ブドウ糖)がどのくらい含まれているかを示す値をいいます。
血糖値は常に一定というわけではなく、食事や運動などの影響を受けながら変動しています。
一日の中で一番低いのは空腹時で、70~110mg/dL程度です。
また食後に一番高くなるのですが、それでも140mg/dLを超えることはなく、食後2時間ほどで空腹時の数値に戻ります。

血糖値の変動のメカニズム
血糖値は一日の中でもある一定の範囲で変動していますが、その幅を超えて極端に上がったり下がったりしないようホルモンの働きによって調節されています。
このうち血糖値が上がりすぎないように抑えるホルモンは「インスリン」といい、膵臓(すいぞう)から分泌されています。
血糖値は次のようなメカニズムによって調節されています。
①食べ物や飲み物から糖分を摂取します
②体内に入ってきた糖分は「ブドウ糖(グルコース)」に変化します
③ブドウ糖が血液中に取り込まれ血糖値が上昇します
④膵(すい)臓の「ランゲルハンス島(とう)β(ベータ)細胞」からインスリンが放出されます
⑤インスリンは、血液中のブドウ糖を全身の細胞へ送り届けます
⑥ブドウ糖は全身でエネルギー源として利用されるほか、肝臓や筋肉などに貯蔵されます
⑦使い切れずに余ったブドウ糖は、中性脂肪として貯蔵されます
⑧その結果、食後2時間後には血糖値が戻ります

糖尿病とは
血糖値を調節する一連の流れがうまくいかない病気で「1型」「2型」の2つのタイプがあります。
1型糖尿病
遺伝や膵臓の病気などでランゲルハンス島β細胞が破壊されて発症するもので、子どもや若者に多い糖尿病です。
インスリンが分泌されないためインスリン療法(注射)が必要となります。
糖尿病全体のわずか数%ほどで、自己免疫疾患と考えられています。
2型糖尿病
中高年から発症する糖尿病はほとんどがこちらです。
遺伝や生活習慣と深い関わりがあり、生活習慣病のひとつでもあります。
治療としては、まずは食事療法と運動療法、薬物療法が行われますが、進行するとインスリン療法が必要になります。
・インスリンの量が足りない
食生活の乱れ、糖分の摂りすぎなどでインスリンがたくさん必要になりますが、そのうちβ細胞が疲弊してしまい、インスリンの分泌が少なくなってしまうものです。
・インスリンが効かない
インスリンは分泌されているのですが、肥満などが原因でインスリンの効きが悪くなり、ブドウ糖が細胞内に取り込まれにくくなります。
これを「インスリン抵抗性」といいます。
高血糖が体に与える影響
血糖値が高い状態が続くことで、体にさまざまな変化が現れます。
高血糖による症状
・異常に喉が渇く
・水分をたくさんとる
・尿の量がかなり増える
・やせる(体の脂肪が分解される)
・血中の脂質が増える
・体力の低下(筋肉や体重の減少)
・抵抗力の低下、感染しやすい
・動脈硬化、高血圧
・傷が治りにくい
高血糖が引き起こす合併症
インスリンの量が十分でなかったり、うまく効かなかったりすると、血液中にブドウ糖が多く溜まったままになります。
糖分の多い血液は血管を傷付け続け、小さく細い血管ほどダメージを受けやすくなります。
糖尿病の三大合併症とも言われる神経障害、網膜症、腎症は、いずれも毛細血管が傷つけられた結果起こるものです。
糖尿病でも血糖値がうまくコントロールできていれば合併症を予防することができます。
しかし、血糖値が高いままの状態が何年も続くと合併症を起こしやすくなります。
神経障害
発病から5年以内と、早期に現れやすい合併症です。
毛細血管がダメージを受け正常に機能しなくなったことで神経細胞に必要な酸素や栄養を届けることができなくなり、神経障害がおこります。
手足などの痛み、しびれ、感覚が鈍くなる、こむら返りなどの症状が左右対称に現れます。
また、自律神経が障害されると、異常な発汗、たちくらみ、便通の異常、勃起障害、排尿の異常などが起こります。
網膜症
発病から7~8年で症状が現れやすく、急激に進行する合併症です。
網膜は眼球を包む一番内側にある膜で、視力に関わる重要な役割を担っています。
網膜に網目のように張り巡らされている毛細血管が詰まると、それを補うために糸のような細い血管(新生血管)が眼球の中に向かって伸びてきます。
この新生血管は非常にもろく破れやすいため、眼球の中で大出血を起こし失明に至る可能性もあります。
網膜症は、早期に症状はないことがほとんどです。
しかし視力の低下など症状が現れた時にはすでに進行しているケースもあるため、年1回以上の眼底検査が推奨されています。
腎症
発病から10年以上たつと、腎臓の障害が現れてきます。
腎臓の糸球体(血液から尿を作る時のフィルター)の毛細血管がダメージを受け、正常なろ過ができなくなります。
早期には自覚症状がないことがほとんどですが、この時はすでに尿中に微量のアルブミンが流れ出ていることがあります。
腎障害がかなり進行してから、倦怠感やむくみ、吐き気、食欲不振といった自覚症状が出てきます。
それでも血糖値が高いままの状態が続くと腎不全となり、自分の体で尿を作ることができなくなるため、透析療法が必要となります。

血糖値を適正に保つために
血糖値を適正に保つには食事療法・運動療法などの生活習慣の改善が基本です。
食事の食べ方
基本的に、食べてはいけないものはありません。
急激な血糖値の上昇を抑えるために次のような食べ方が効果的です。
・三食規則正しく
・バランスのとれた食事
・ゆっくりよく噛んで
・腹八分目
・ベジファースト(まず野菜から食べ始める)
・おやつやアルコールは適量に
運動療法
・血液中に増えたブドウ糖をエネルギーとして消費することで血糖値を下げる
・脂肪を消費することでインスリンの効きをよくする
・血流を良くして動脈硬化を予防する
ただし、病状によっては安静が必要であったり、可能な運動が限られる場合もありますので主治医に相談しましょう。

おわりに
糖尿病は、生涯付き合っていく必要のある病気ですが、その付き合い方によって今後の生活が大きく変わってきます。
まずは、糖尿病という病気についてよく知ること、そしてうまくコントロールしながら生活するためにはどのような方法があるのかを考えることが一番の近道です。
あれもダメ、これもダメとがんじがらめになる必要はありません。
正解は一つではなく、一人ひとりベストな方法がありますので自分自身にあった方法を見つけられるといいですね。
最後までお読みくださりありがとうございました。