骨の折れやすさとその対処法

皆さんは、自分自身の「骨」について考えたことはありますか?

普段の生活の中で、骨について意識することはあまりないのではないかと思います。

骨は、頭のてっぺんから足のつま先まで全身にあり体を支える芯としての役割を担っています。

しかし、丈夫な骨も大きな外力がかかった時には折れてしまうことがあります。

骨折しやすくなる原因として思い浮かぶのは、カルシウム不足骨粗鬆症加齢…などといったキーワードではないでしょうか。

そして、骨を強く丈夫にするために、牛乳や小魚などのカルシウムを積極的に摂っている人もいるかもしれませんね。

それでは、骨はどのようにしてもろくなり、また強くなるのか、そのメカニズムについて学んでいきましょう。

骨の構造

骨の主な成分が「カルシウム」であることは皆さんもご存知のとおりですね。

骨は、「リン酸カルシウム」「たんぱく質」でできており、その構造はよく鉄筋コンクリートに例えられます。

鉄筋の支柱部分にあたるのがたんぱく質である「コラーゲン線維」、そしてその周りにあるコンクリート部分「リン酸カルシウム」というわけです。

繊維状になったコラーゲンに、結晶化したミネラル(カルシウム、リン)が沈着しています。

そして、このコンクリート部分に当たるミネラル(カルシウム、リン)の量は、骨量(こつりょう)や骨塩量(こつえんりょう)という言葉で言い表されます。

骨量は、骨の成長が終わった20歳代の頃にピークを迎え、その後は加齢とともにだんだんと減少していきます

骨量は、骨密度検査で調べることができます。

骨の生まれ変わり(骨代謝)

骨は子どもの頃にはぐんぐん成長し続けますが、20歳頃になると成長が止まります

しかし、成長が止まった20歳頃の骨のまま一生を過ごすわけではありません。

骨の細胞は生涯にわたり日々新しく作り替えられていて、すべての骨は2年半で一新されるといわれています。

骨の生まれ変わりは「骨代謝」といい、古い細胞が壊される「骨吸収」新しい細胞が作られる「骨形成」の2つの働きがバランスを取り合うことで成り立っています。

破骨細胞と骨吸収

破骨(はこつ)細胞は、古い骨の表面にくっついて骨を溶かし、そのカルシウムを血液の中に吸収させる「骨吸収」を担っています。

吸収という言葉が少しややこしいですが、「カルシウムが骨から血液中に吸収される」という意味合いがあります。

骨吸収には、次のホルモンが関わっています。

骨吸収をすすめる:副甲状腺ホルモン(パラソルモン)
骨吸収をおさえる:甲状腺ホルモン(カルシトニン)

骨芽細胞と骨形成

骨芽(こつが)細胞は、必要な部分に新しい骨細胞を作り出す「骨形成」を担っています。

古い骨が溶かされた箇所を埋めたり、骨の形を整えたりしています。

骨形成には、次のホルモンが関わっています。

骨形成をすすめる:女性ホルモン(エストロゲン)
骨形成をおさえる:副腎皮質ホルモン

骨に必要な栄養

骨はカルシウムからできていて、丈夫な骨を作るためにはカルシウムを摂取することが必要であることは、皆さんもご存知のとおりです。

しかし、口から摂ったカルシウムがそのまま骨に行き渡るわけではありません。

質のよい骨を作るために、次のような栄養素が重要な役割を果たします。

カルシウム(Ca)

体の中にあるミネラルのうち最も多いのがこのカルシウムで、骨の材料になります。
摂取したカルシウムのうち約3割が小腸から血液中に取り込まれ、その99%が骨に蓄えられます
また、骨だけではなく血液の中にも常に一定のカルシウムが必要です。
食事などから摂取されるカルシウムが少なくなると、血液の中のカルシウムも不足してしまいます。
そうすると、血液中のカルシウム濃度を維持するために、骨に蓄えられたカルシウムが血液中に動員されていきます
その結果、骨に蓄えられているカルシウム量が少なくなってしまうというわけです。

成人に必要な1日あたりのカルシウムの量は、男性は700~1000、女性は650~750mgとされていますが、現代人はカルシウムの摂取量が不足しがちであることが指摘されています。

カルシウムは、牛乳やチーズなどの乳製品、大豆製品、煮干しや小エビなど骨や殻ごと食べる魚介類などに多く含まれています。

しかしたくさん摂ればよいというわけでもなく、過剰に摂取すると高カルシウム血症を引き起こす心配もあります。

リン(P)

カルシウムと同じく体内にあるミネラルの一つで、カルシウムに次いで2番目に多いミネラルです。

リンはカルシウムと結合し「リン酸カルシウム」として骨を形成する役割があります。
そのほかには、エネルギーの代謝や体を形作る材料としての役割も担っています。リンは多くの食品に含まれているので、通常は不足することはありません。
余分なリンは尿として排出されますが、腎臓病などで排泄機能が低下している場合には摂りすぎに注意が必要です。
リンの摂取量はカルシウムとのバランスが重要で、リンが増えすぎるとカルシウムの吸収が悪くなり体内のカルシウム量が不足してしまいます。

ビタミンD

ビタミンDは、肝臓と腎臓で代謝され「活性化ビタミンD」となり、摂取したカルシウムが小腸から吸収されるのを助けます
また、新しい骨を作る「骨芽細胞」の働きを高めたり、リン酸カルシウムが骨に沈着するのを助けます
尿から排泄されるカルシウムの量を減らすことで、血中のカルシウムの量を維持しています。

成人に必要な1日あたりのビタミンDは10~20μgです。

食品では、きのこ類や卵に多く含まれています。
また、食品から摂取するだけでなく、適度に日光に当たることも効果的です。
紫外線の作用によって、皮下脂肪に含まれるコレステロールからビタミンDが体内で作り出されます

ビタミンK

骨に含まれるコラーゲン線維の量を増やしてリン酸カルシウムが沈着するのを助け、質のよい骨を作るのに役立ちます。

成人に必要な1日あたりのビタミンKは250~300μgです。
 
納豆、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草などに多く含まれます。

ただし、血液をサラサラにする薬の中にはビタミンKによって作用が弱まってしまうものもありますので、主治医や薬剤師にご相談ください。

たんぱく質(コラーゲン)

骨の中に含まれるコラーゲン線維の量は骨密度を左右する重要なポイントになります。
コラーゲン線維に吸着されるようにリン酸カルシウムが集まって骨が作られていますので、コラーゲン線維が多いほど、骨の密度が高くなるというわけです。
また、コラーゲンは骨に適度な弾力を持たせることができ、外からの衝撃を吸収することに役立ちます。

コラーゲンと聞くと、豚足や軟骨、牛すじ、スッポン、フカヒレなど高級食材が連想されるかも知れません。
ですが、コラーゲンは卵や肉、魚などのたんぱく質にも多く含まれていますので、通常の食事が問題なく食べられていればコラーゲンが不足することはないとされています。

骨が折れやすい状態「骨粗鬆症」

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨量が低下した状態、いわゆる骨がスカスカの状態を指します。

骨には、破骨細胞が古くなった骨を溶かす「骨吸収」骨芽細胞が新しい骨を作る「骨形成」という2つの働きがあり、双方がバランスを取り合いながら日々骨を新しく作り替えています。

しかしこの2つの働きのバランスが崩れて骨形成よりも骨吸収の方が上回ってしまうと、骨が溶かされていくスピードに新しい骨を作るスピードが追いつけなくなり、骨粗鬆症となってしまうのです。

骨粗鬆症には自覚症状がないため、知らず知らずのうちに進んでいることがよくあります。

骨粗鬆症の原因

加齢

加齢に伴って食べられる量そのものが減ってしまうことが多く、また、摂った栄養を体に取り込む能力も低下しますので、カルシウムやビタミンDなど、骨を作るために必要な栄養をまかなうのが難しくなります

女性ホルモンの低下

閉経後の女性は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が低下します。
エストロゲンは骨芽細胞の働きを活発にする役割がありますので、エストロゲンが減ることで骨形成のスピードも遅くなります
そうすると、古い骨はどんどん溶かされていくのに新しい骨を作るのが追いつかないということが起こり、結果的に骨量が減少してしまうのです。

生活習慣

栄養の偏り、運動不足、過度のダイエット、喫煙、飲酒などの生活習慣は骨粗鬆症のリスクを高めることが指摘されています。

疾患によるもの

続発性骨粗鬆症といって、糖尿病、慢性腎臓病、内分泌疾患、関節リウマチなどの合併症として起こる場合があります。
また、ステロイド剤の副作用として起こる骨粗鬆症も有名です。

家族性

骨粗鬆症になりやすい体質が遺伝する可能性も指摘されています。

骨粗鬆症になるとどうなるか?

骨粗鬆症となると、骨がもろくなった分、骨折しやすい状態となります。

特に60歳以降の女性に骨折が急増しています。

骨粗鬆症によって起こる骨折は、脊椎(背骨)や脚の付け根に多く発生します。

脊椎圧迫骨折

一般的な骨折のようにポッキリ折れる骨折ではなく、縦に連なっている脊椎(背骨)の骨が上下に押しつぶされる形になるのが特徴です。

尻もちをついた、重いものを持ったなどの比較的軽い衝撃によって起こることも珍しくありません

発症して3週間〜1ヶ月程度は、痛みによって思うように体を動かせなくなります。ひどい場合は起き上がるのつらく、一日のほとんどを布団の上で過ごし、人の手を借りながらの生活になることもあります。
そうしているうちに筋力も低下し足腰が弱っていきますので、痛みがやわらいだらなるべく早く、痛みに合わせてできる範囲で少しずつ元の生活に戻していくことになりますが、それがうまくいかないと圧迫骨折がきっかけで寝たきりになってしまうこともあります。

大腿骨頚部骨折

高齢の女性に多い骨折ですが、高齢の男性にも起こります。脚の付け根、骨盤との関節付近に起こる骨折です。

転んで尻もちをついた後に股関節に痛みが出て歩けなくなった場合、ほとんどはこの骨折が疑われます。
また、硬い地面だけでなく畳や布団の上で転んでも骨折する場合があります。

この部位の骨折は治りが遅く、自然に治るのを待とうと思うと何週間、何ヶ月と安静にする必要があります。
寝たきりを予防するために早期に手術が行われることが多いですが、受傷前のように歩けるようになるかどうかはケースバイケースです。

その他

転んだ時に手をついた衝撃で、手首や腕の付け根を骨折することがあります。
それまで使えていた片方の手が急に使えなくなることで、骨折が治るまでは日常生活で不便な思いをします。
また、患部の安静のために片方の腕が固定された状態になることで、体のバランスがとりづらくなり、さらに転倒しやすくなるというリスクを抱えることにもなります。

骨粗鬆症の対処法

骨粗鬆症の治療の目的は、骨折を予防することです。

骨折は痛みを伴う大きなけがであるだけでなく、生活の質に影響を及ぼすことも懸念されます。

治療の方法には食事、運動、薬物があります。

食事

カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨に必要な栄養を積極的に摂取するように心がけます。
また、それと同時にたんぱく質も不足しないように注意します。
飲酒、喫煙の習慣がある人は、節酒・禁煙を目指しましょう

運動

骨に縦方向の刺激を与えることで、骨を形成する骨芽細胞を増やすことができます。
最も効果的な運動は、縄跳びやバレーボール、バスケットボールなどジャンプと着地を繰り返す運動ですが、これは比較的筋力や体力のある成長期の人におすすめです。

体力に自信のない人や、すでに骨粗鬆症と診断されている人にとっては、激しい運動はかえってよくありません。

転倒に注意しながら、家の中で足踏みしたり、つま先立ちになって一気にストンとかかとを落とす運動も、骨に刺激を与えることができます。
また、ウォーキング、ランニング、エアロビクスなどの少しきつく感じる程度の運動も効果的です。
夏場は熱中症への注意が必要ですが、日光を浴びながら軽い体操をするのもいいですね。

薬物

骨粗鬆症を治療する薬剤には、骨が破壊されるのを抑えるタイプや骨を作る働きを助けるタイプ、骨の破壊と形成のバランスを正常にするタイプなど、いくつかの種類があります。
検査によって骨粗鬆症で治療が必要であると診断された場合に処方されます。医師や薬剤師の指示に従って飲み続けましょう

骨密度を知るために

骨密度は、特殊な機械を使って測定することができます。

骨密度の検査は方法や機械によって違いはありますが、かかとや手首の骨に超音波やX線を当てて調べるので、痛みはありません。

超音波を当てるタイプのものは手軽に行えて結果も1~2分で分かるので、街中で開催されている健康イベントなどにコーナーが設けられていることもあります。

骨粗鬆症は自覚症状がありません
気づかないまま放置していると知らず知らずのうちに進行していきます

しかし、早期発見によって適切な対処を行えば、改善することも可能です。定期的に骨密度チェックをしましょう。

おわりに

日本国内では、1280万人もの人が骨粗鬆症と診断されそのうち約8割は女性であるといわれています。

まだ年齢が若い人にとっては、骨粗鬆症は遠い先の話に思えるかも知れません。

しかし近年、骨粗鬆症の若年化が問題視されています。

また、若い頃の運動や栄養、生活習慣が高齢になったときの自分自身の骨に表れてきます。

今からでも遅くありません。将来、健康的に生活するためにも丈夫な骨をつくっていきましょう。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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