この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。
※運営よりお知らせ:記事を簡潔に掲載する都合上、専門用語の解説は少なめになっています。気になる言葉を左クリックを押したままなぞり、右クリックで検索をかけることができますのでその方法をご利用ください。
“尿酸値”という言葉は聞いたことがあると思います。血液検査をしたときに数値が高いと指摘されたりした方や、もしくは今すでに尿酸値を下げるための薬を飲んでいる方もいるのではないでしょうか?
尿酸値が高いと体にどんなことが起こるのかご存じでしょうか?一番有名な症状は痛風だと思います。実はその他にも、自覚症状はあまりない腎障害や、様々な生活習慣病を合併することがあります。尿酸値が高いまま放っておくことは危険なので必ず治療をしたほうが良いです。
治療をする、もしくは予防をする前に「痛風になるとどのくらい辛いのか」「尿酸値を下げるためにはどのような食事をすれば良いのか」を知っておくことは大切です。つらい思いをしないためにもぜひ参考にしてください。

目次
・なぜ尿酸は体に溜まっていくのか。
・痛風発作はどのくらい辛いのか。
・痛風になりやすい人の特徴
・高尿酸血症を改善する為の食事
・なぜ尿酸値は体に溜まっていくのか。
尿酸とは、プリン体という物質が体内で分解されてできる物質です。動物や植物の細胞の中には核酸という物質が含まれています。核酸の成分にもプリン体は含まれているので、食べ物として摂取すればプリン体が体に取り込まれることになります。体に入ったプリン体は尿酸になっても、ある程度の量までは体の外にうまく排泄されます。正常な状態であれば、一定量の尿酸が体の中で作られて一定量の尿酸が排泄されるので血中の尿酸値は大体一定になります。

尿酸が上がる原因は、尿酸を体の外に排泄する能力が下がっている、尿酸が体の中で過剰に作られている、もしくはこの二つの症状が同時に起きている状態によって引き起こされます。血中の尿酸値が一定の数値を超えることを高尿酸血症と呼びます。ちなみに尿酸値が一定の数値を超えたからといって痛風発作が起きるわけではありません。
・痛風発作はどのくらい辛いのか。

痛風になるとすごく痛いという話は聞いたことがある方が多いと思います。痛風の痛みは一年中ありません。尿酸値が高い状態が続いていると尿酸が血液内で溶け切らず結晶になって間接に沈着していき、何らかの原因で間接に沈着した結晶が剥がれ落ちて、それを白血球が攻撃することで突然激しい炎症が現れます。よく症状が現れるのは足の親指の付け根です。痛風発作が起こると、患部が赤く腫れあがることがあります。そして激痛に襲われます。成人男性が2,3日歩けなくなるほどの痛みなので、どれほど痛いのかは体験したことない方には想像できないかもしれません。日本でよく例えられるのは“風が吹くだけでも痛い“という表現です。海外だと”悪魔に槍で突かれているような痛み“などと例えられるようです。痛風発作は様々な要因によって引き起こされるので、いつ起こるかわかりません。また痛みが強すぎて通常の痛み止めでは効果がないということもあるので発症してしまうと打つ手がなくなってしまうこともあります。歩けないほどの痛みにしばらく耐えるしかないと考えると、とても辛いことはわかると思います。つらい思いをしないようにする為には、痛風発作を起こさないように予防、治療を行うことが大切です。
・痛風になりやすいタイプの方の特徴
・お酒を飲む人
お酒を飲むと体内でプリン体が産生されます。プリン体カットのビールを飲めば問題ないと思っている方もいるかもしれません。しかしアルコールはプリン体を作る材料になりますので、プリン体をカットした飲み物を飲んでも体の中で作られてしまうので結果として尿酸値は上がります。また、アルコールからは乳酸が作られます。乳酸には尿酸の排泄を邪魔する働きがあるので、血中の尿酸値を上げてしまいます。更に飲酒は多尿になるので水分が体から多く出てしまって脱水傾向になります。それによって尿酸が濃縮されて痛風発作の引き金になることもあります。なので飲酒をする人は高尿酸血症のリスクが高くなります。
・激しい運動をする人
激しい運動をする時には、必要なエネルギーを作り出すためにATPという物質が体の中でつかわれます。その物質が使われると体の中に急激にプリン体が作られます。なので高尿酸血症の方は無酸素運動など激しい運動をすると痛風発作が起こることがあるので注意が必要です。
・肥満の人
肥満の方は多くの場合が過食傾向の方が多いです。プリン体はほとんどすべての食べ物に含まれるので、食べ物をたくさん食べる方はその分尿酸値が上がりやすくなります。尿酸値は上がれば上がるほど痛風のリスクが上がるので、肥満の方は痛風になりやすいといわれています。
・ストレスの多い人
ストレスを強く感じると痛風発作が起こるという報告は多いです。嫌なことを前にして急に痛風発作が起こることもありますが、逆に楽しみなことを前にして気持ちが高揚したときにも痛風発作は起こることがあるといわれています。普段から尿酸値が高くない人はこういったことは起こりづらいので、肝心な時に痛風にならないためには普段からの予防が大切ですね。
・あまり水分を取らない人
尿酸は尿と一緒に排泄されるので、水分を多くとらないと尿酸が体の外に排泄されません。高尿酸血症の方は一日2L以上水分をとると良いといわれています。尿酸値の高い方は水分を摂るように心がけてみてください。

・高尿酸血症を改善する為の食事
プリン体を多く含むものは尿酸値が高い方は避けたほうが良いです。具体的な数値は、『一日400mgを目安にしたプリン体の摂取制限』と高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインに記載されています。そういわれてもどのくらいの量なのかわからない方が多いのではないでしょうか?ビールには一缶あたり12~25mg/350mlが含まれています。それくらいなら毎日飲んでも問題ないと思う方もいらっしゃると思いますが、プリン体はほとんどすべての食材に含まれているのでビールだけではなく他の食材からも摂取することになります。更にビールを毎日飲み続けると、尿酸値が上がるというデータもありますので飲酒は控えた方がよいと思います。食べ物では、魚卵、干物、カツオ、マグロ、イカなどに大量に含まれています。日常生活でプリン体の低いものを食べつづけるというのはとてもつらいとおもうので、尿酸値の高いものをなるべく避けるようにするという意識が大切です。
また最近では、高尿酸血症を改善する為の食事療法で重点を置くべきといわれているのが総エネルギーを制限することです。プリン体を摂取しないようにするのではなくあまりカロリーを摂らないようにすることのほうが大切といわれています。これにより肥満の改善も期待できます。以前までの高尿酸血症の食事療法では、プリン体の過剰摂取を避けるために低たんぱく、高炭水化物が勧められてきたが、高炭水化物食は生活習慣病で合併しやすい糖尿病に悪影響があることや、高たんぱく食も肉、・魚介類などの動物性たんぱく質は尿酸値を上昇させるが、乳製品由来のたんぱく質は尿酸値を低下させて痛風のリスクを増加させないので摂取するようにすることが望ましいといわれています。
高尿酸血症の食事療法は最初から厳格にプリン体制限、飲酒制限、エネルギー制限を行うと最初は頑張れるがしばらくすると反動で暴飲暴食をするということが起こりやすいようです。なので大事なことは自分で自発的に食事療法に取り組めるようになることです。食事療法は高尿酸血症の治療を行うためには必ず必要になってくるので、我慢するのは自分の為と思って最初のうちはできる範囲で制限を行い、治療していくことが大切です。
まとめ

高尿酸血症は、主にプリン体の摂りすぎや、過食など俗にいうぜいたく病の一種といえると思います。痛風発作は起こるととても痛いですし、高尿酸血症に合併する病気もなると治療に長い時間がかかるものばかりです。生活習慣病に共通して言えることは、食生活の改善が治療につながるという点です。食事はなるべくプリン体の多いものを避けて、あまり食べ過ぎないことが望ましいです。飲酒も痛風発作を起こしやすくするので控えることが望ましいです。水分は尿酸を排泄してくれるので一日2L以上摂ることを目標にしてください。
高尿酸血症は長く付き合い続けると、痛風発作を繰り返しやすくなるリスクも上がります。歩けなくなるような痛みが一年のうちに何度も起こったら日常生活に支障をきたすのは間違いないですよね。高尿酸血症が気になる方も、治療中の方もまずは食事から見直してみてください。
カテゴリー:薬剤師【高尿酸血症】, 高尿酸血症
[…] […]