薬剤師が事例つきで教える:糖尿病は予防できる?重症化の予防について

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生活習慣病の1つとして知られている糖尿病。国内の患者数、予備軍を含めると約2000万人以上にも及ぶと言われています。現在すでに糖尿病の診断を受けていて治療中の方も、健康診断で注意が必要と言われている方も様々いらっしゃると思いますが、糖尿病について進行させない、重症化させない重要視すべき点について説明したいと思います。

もくじ

【目次】

・糖尿病は身近な病気である

・糖尿病を悪化させないために気をつけるべきこと

・オススメの食事内容、運動について

・重症化を予防することの意義

・実際の事例について

糖尿病は身近な病気である

日本の糖尿病患者数は毎年増加しており、現在では約2000万人以上が糖尿病の診断、もしくは糖尿病予備軍とされていますが、その背景には日本人の生活習慣や食生活の変化があると考えられています。

糖尿病は食前、食後の血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均値の指標)で診断されます。血糖値に関しては食事の内容や体調次第で数値にズレが出やすいですが、HbA1cは数値のズレがほとんどなく、診断に用いられています。

HbA1cが6.0〜6.4%が予備軍、6.5%以上糖尿病と診断されます。7.0%を越えると神経障害や網膜症の症状が出てしまったり、腎臓に負担がかかってしまうなどの影響が出るリスクが高まります。なので治療方針としてはHbA1cを6.4%以下にコントロールしていくことが当面の目標になります。

ではうまくコントロールしていくにはどうすればいいのでしょうか。

糖尿病を悪化させないために気をつけるべきこと

私の働いている薬局では、糖尿病の患者様の生活習慣や検査結果を管理して半年〜1年間の経過を見るという取り組みを行なっていました。その中で気づいた点、学んだ点をもとに情報提供できればと考えています。

まず重要なのは食事内容です。前提として、糖尿病だからといって「食べてはいけないもの」は特にありませんがバランスの良い食事を心がけることが大事です。血糖値に直接影響が出るのはタンパク質・脂質・炭水化物の3大栄養素のうち炭水化物に含まれる「糖質」です。私たちの身体のエネルギー源なので必要な栄養素ですが、代謝を越える量を摂取すると血糖値を上げすぎてしまう原因になります。糖質の低い食事内容を心がけましょう。

食事内容と同様に重要なのは運動習慣です。運動には血糖値を下げる効果がありますが、さらに継続して習慣化することで心肺機能の向上、筋力をアップさせ血糖値の吸収をさせにくくする効果もあります。適度な運動を習慣化することは体重のコントロールにも繋がり、食事内容の改善と組み合わせて太りにくい体質作りをすることで健康的な生活を手に入れることができます。

オススメの食事内容、運動について

では実際にどのような内容を心がければいいのでしょうか。オススメの食事内容と運動内容に分けて説明します。

まずは食事内容ですが、上でも説明した通り糖質の低い食事内容が重要になります。魚や肉、大豆製品などタンパク質の高い食品や、きのこ類・海藻などの糖質の低い食材をメインに献立を考えると急激な血糖値の上昇を起こすことがありません。ご飯やパン類、麺類は糖質が多く含まれているので過剰の摂取には注意が必要です。

食べ物だけでなく飲み物にも注意が必要です。果汁の多く含まれるジュースやスポーツドリンク、またビールやワインなどのアルコールも糖質の摂取原因として見落としがちです。ジュースではなく水やお茶にする、お酒であれば焼酎やウイスキーにする(蒸留酒には糖質が含まれていない)などの策をとりましょう。

運動についてですが運動には2種類あり、ランニングやウォーキングなどの有酸素運動と筋トレなどの筋肉に負荷をかける運動があります。どちらも血糖値の改善に効果があることはわかっているので取り組みやすい方法を取り入れてもらえればと思います。ご高齢でなかなか運動が難しいという方は日常生活の中での運動(より歩くことを意識するなど)を意識するだけでも変化はあります。歩数計をつけるなど日常的に取り入れられる工夫も効果的です。

重症化を予防することの意義

前述しましたが、糖尿病が進行すると神経障害や網膜症、腎臓への負担などの影響があります。またさらに進行してHbA1cが8%を越えると脳卒中や虚血性心疾患などのリスクが高まります。糖尿病の診断を受けた人や健康診断などで糖尿病予備軍と言われた方は早めに血糖値のコントロールを意識した生活を始めましょう。

実際の事例について

最後に経過を観察していた実際の事例についてご紹介します。

・患者対象:60代 男性

・仕事をされており、日常的に体を動かす習慣はある

・開始時のHbA1c:7%前半

・飲酒は適量、食事は1日3回(当初は油物が多かった印象)

日常的な食事内容を写真に収めてもらい、運動習慣など活動歴の記録、病院での検査結果などを管理させてもらっていました。仕事をされている方だったので適度に体を動かす習慣はありましたが、食事内容が脂質・糖質が多めの献立であったため、今後HbA1cを減らしていくにあたって食事内容を意識していただくことと仕事以外に軽いウォーキング等の運動を取り入れていただくことを提案しました。

その後も月に1度薬局に来ていただき、経過を確認しました。月を追うごとにHbA1cが改善し、運動を意識していただいたおかげで体重も減少していました。食事内容も当初とは大幅に変化しており、揚げ物などの献立は少なくご飯の量も減らすなど節制も続いていき、最終的に7~8ヶ月経過した頃にはHbA1cが6%半ばへと減少、体重も2~3kg減量でき、医師からも褒められたそうです。

【8ヶ月間取り組んだ内容】

・週2~3日の有酸素運動(ウォーキング20~30分程度)

・食事内容の節制(油物は控え、高タンパク質・低脂質・低糖質を意識する)

・間食での無駄なカロリー摂取を避ける

・食事の時間帯にも注意する(20時以降の夕食は控える)

【感じたこと】

糖尿病という病気を改めて身近に感じたとともに、普段の生活習慣を見直して少しずつ変化させていくことで改善、重症化の予防は行えると再認識しました。しかし、それを達成するためには患者様本人の意識にかかっていることも実感しました。

今回の経験を通して薬剤師として、患者様に有効なアドバイスやモチベーションを維持できるような提案を提供できるようになる必要があると感じました。



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