【薬学入門】身近な薬学(食事とくすり)

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薬は私たちにとって日常生活と密接した身近な存在ですが「食後に飲む薬、今は空腹だけど飲んでいい?」「この薬を飲む日は晩酌してもいいの?」など、飲むにしても分からないことだらけで、説明の紙を見てもなかなか解決は出来無いかと思います。

全てを説明するには覚えることが膨大にありますので、今回は皆さんが毎日必ず行っている「食事」に注目し、薬と食事との影響についてお話ししていきます。

あなたが飲んでいる薬も、特定の食事や日常生活で影響が出るものがあるかもしれませんよ!

薬の分解について

体内にてさまざまな効果を出した薬は、酵素の働きで別の化合物に形を変え、糞便や尿になって排泄されます。これを「代謝」と呼びます。多種にわたる酵素によって分解が得意な薬がそれぞれありますが、人種や遺伝の違いで持っている酵素の種類が人によって違ったり、日常生活によって酵素の働き方に変化が出たりと個人差が発生しています。食事によってもその代謝には変化があるのです!

有名な食事との影響例~グレープフルーツジュース~

グレープフルーツジュースと薬の飲み合わせ

薬と飲食物の影響でも有名なものの一つです。薬剤師も大学時代に学びます。

これは、グレープフルーツを絞り出す製法課程にて皮に含まれている「フラノクマリン類」と呼ばれるフラボノイド類が混入する事が理由となっております。なので、普段皮を食べることの無いグレープフルーツの果肉を摂取する上では影響が出ないとされています。

このフラノクマリン類が、小腸にある酵素「CYP3A4」の働きを弱めます。この酵素は、多くの薬を違う化合物に変えて代謝してくれて、酵素の中でもエース級なのですが、働きが弱まる事によって多くの薬の分解が遅くなり、効果が強く出てしまいます。

影響が出やすい薬品名用いられる疾患
シンバスタチン高脂血症
アゼルニジピン高血圧
トリアゾラム不眠症
シクロスポリン免疫疾患

この影響は4日程度続くと言われているため、該当する薬を飲んでいる際は控えた方がいいでしょう。

血栓を予防する薬のワルファリンは食事の影響を受けやすい!

心臓の疾患などで多く用いられるワルファリンですが、多くの薬や食品と影響が出る事が知られております。近年は、食事と影響の出ないタイプの抗血小板薬も多く発売されていますが、それらは薬代が高価ですので、安価で効果も確かなワルファリンは現代医療でも重宝されております。以下が代謝に影響が出る食品です。

①ビタミンK含有食品

 納豆や青汁、クロレラ、スピルリナに多く含まれるビタミンKは、血を固める働きを助ける機能を持っております。ケガをしたときなどに必要な要素となるのですが、一方で反対の効果を発揮するワルファリンの働きを弱めてしまい、医師が期待する効果が出せなくなってしまいます。

②アルコール

アルコールはCYP2E1という代謝酵素の働きを強めます。それによって、ワルファリンの分解が早くなり、効果が落ちる事が考えられます。晩酌程度であれば問題ないとされていますが、ワルファリンの飲む時間を飲酒時間とずらすなどの工夫が必要ですね。

③グルコサミン

サメ軟骨の健康食品などにも多く含まれるグルコサミン、膝関節の痛みが気になる方も過去に飲んだことがあるのではないでしょうか。実はこのサプリメントもワルファリンの効果が増強したことが報告されています。

その他、薬の分解に影響を受ける食材

日常でよく食べられるものも、薬を分解する酵素に影響します。ただ、一緒に摂取しては絶対ダメという訳でもなく、適度に摂取すれば問題ないものも多いです。心配な場合は薬剤師に相談くださいね。

・カフェイン

カフェインはCYP1A2という酵素によって分解されますが、それを抑える薬と一緒に飲むとカフェイン中毒による頭痛、不眠の可能性があります。例としてフルボキサミンと言う抗うつ剤と一緒に摂取すると、カフェインを5倍摂取した時と同じ状態になると言われております。

また、アロプリノールと言う尿酸を下げる薬を飲んでいると、キサンチンオキシダーゼというカフェインを代謝する他の酵素の働きが抑えられてしまい、カフェイン過剰状態が発生する可能性があります。コーヒーだけでなく栄養ドリンクにもカフェインは含まれているので、摂りすぎには注意してくださいね。

・胃酸が少ない人はビタミンB12が不足しがち

 突然栄養の話になった?と思われたかもしれませんが、薬とも関係します。逆流性食道炎やピロリ菌の治療を受けている方は、「プロトンポンプ阻害薬」と言う種類の薬を飲む場合が多いです。治療には必要な薬ですが、十分な胃酸が出なくなることで動物性たんぱく質に含まれるビタミンB12が吸収されなくなります。このビタミンが不足すると目の疲れや手足のしびれといった体の神経の働きに影響が出ます。サプリメントやカイワレのようなビタミンB12が含まれる野菜を摂るとよいでしょう。

・アルコールと薬

薬を飲む際、「晩酌はしてもいいの?」という疑問は多く持たれると思います。晩酌程度であれば問題ないことが多いですが、アルコールもCYP2E1と呼ばれる代謝酵素に影響が出るため、市販の薬で影響の出るものがいくつかあります。

風邪薬の熱さましや鎮痛剤としてしばしば含まれるアセトアミノフェンと言われる成分は、このCYP2E1で肝臓にダメージを与えるN-アセチル-p-ベンゾキノンイミンという成分に変化してしまいます。普段からお酒を飲まれる方は、アセトアミノフェンの使いすぎには注意が必要です。

また、「コリホグス」など市販の肩こり内服薬に入っている筋肉をリラックスさせる成分クロルゾキサゾンはCYP2E1で代謝される薬ですので、お酒によって薬の分解が早くなり効き目が弱くなってしまいます。

お医者さんが処方する薬でも血圧や心臓の負担を下げる「プロプラノロール」、てんかんを予防する「フェニトイン」、先ほども挙げた「ワルファリン」などの薬は普段から大量にアルコールを飲んでいると効果が弱まるとされます。

感染症の際ごく稀に出される「メトロニダゾール」という薬は、アルコールの分解を邪魔して体内にアルデヒドという酒酔いの原因成分が溜まり、悪酔いしますので併用は避けます。

睡眠導入剤では逆に強く効果が出てしまう事がありますので、適度に楽しみましょう。

おわりに

 以上、ごく一部ですが、身近にある食品が薬の効き方に影響が出る事をお伝えしました。適度に摂取すれば問題ない場合が多いですが、そうでないものもありますので、医師、薬剤師の指示に従いましょう。

 そして薬の事をより身近に感じ、興味を持っていただけたら幸いです。

 



カテゴリー:”薬”立つ情報, 薬剤師【薬】

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