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細菌性赤痢を聞いたことがあるでしょうか?
もう先進国である日本ではあまり聞きなれない感染症ですが、世界大戦後は10万人を超えるほどの感染者、2万人ほどの死者が出るほど脅威的な感染症でした。
細菌性赤痢の原因は赤痢菌で、今回はこの赤痢菌についてご紹介いたします。
具体的には、
- 赤痢菌について
- 赤痢菌の除菌方法・治療法
- 赤痢菌の感染事例
について解説致します。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
もくじ
赤痢菌について

赤痢菌は毒性のある大腸菌の一種で、細菌性赤痢という感染症を引き起こす病原菌です。
赤痢菌ついて以下のポイントを順番に解説しつつ説明していきます。
- 赤痢菌の特徴
- 感染経路
- 赤痢菌に感染したときの症状
それぞれについて深堀していきます。
1.赤痢菌の特徴
赤痢菌は大腸菌の一種で、大きさ0.5×1-3µmぐらいの棒状の形をしています。
ヒトとサルのみに感染し、大腸の細胞から隣にある細胞へと再侵入を繰り返し、上皮細胞の懐死、脱落が起こり、血性下痢などの症状が起こります。
鞭毛がなく運動性がないため、細胞内にあるアクチンを利用して細胞質を移動し、隣の細胞へと侵入し感染を広げていくという特徴があります。
1898年に志賀潔によって発見され、その名にちなんでShigellaという属名が名付けられました。
酸に対する抵抗性が高く、胃酸によって殺菌されず10程度の少量の菌でも発病します。
世界的にまん延していて、日本でも発展途上国から帰国者などから患者が多く発生しています。
赤痢菌は、生化学的な特徴や抗原性の違いで、以下のA~Dの4つの亜群に分けらています。
- A亜群:S.dysenteriae(志賀赤痢菌)
- B亜群:S.flexneri(フレキシネル赤痢菌)
- C亜群:S.boydii(ボイド赤痢菌)
- D亜群:S.sonnei(ソンネ赤痢菌)
このうちA亜群の志賀赤痢がもっとも毒性が強く、次いで、B亜群、C亜群、D亜群の順番で強い毒性を持ちます。
2.感染経路
感染経路は、経口感染、つまり赤痢菌に汚染された食品や水を飲食することで感染します。
日本では、衛星環境が整っていない地域で汚染された輸入食品による感染や渡航先での飲食がほとんどの感染原因になっています。
少ない菌体量でも感染する特徴を持つので二次感染する確率も高く、患者や保菌者の便と共に排出された菌がトイレなどに付き、それを触った手指の洗浄が不十分だった場合などに感染にします。
また、住居を共にする家族内で、感染が広がるケースも多いです。
3.赤痢菌に感染したときの症状
感染したときの症状は、全身の倦怠感、悪寒を伴う急激な発熱、水様性下痢が起こります。
重度の場合は、腹部けいれんや便意の増加、しぶり腹になり、便は血液、膿、粘液が混じります。
潜伏期間は1~3日ほど。
成人の場合、重症例は少ないが、小児の場合だと重量化する可能性が高く重度の合併症が起こるケースもあります。
感染が疑われた場合、自己判断で下痢止めを服用するのではなく、適切な医療措置を受けることが薦められています。
赤痢菌の除菌方法・治療法

続いて、赤痢菌の「除菌方法」や感染したときの「治療法」について解説していきます。
赤痢菌の除菌方法
赤痢菌がいるまたは、いる恐れがある場合には消毒薬を用いて除菌します。
赤痢菌に関して有効な消毒薬は以下のとおりです。
()内に具体的な商品名を示しています。
- 消毒用エタノール
- 次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン、ハイターなど)
- 第4級アンモニウム塩(逆性せっけん液、ハイアミンなど)
- 両性界面活性剤(テゴー、ハイパールなど)
トイレは、手の触れる機会の多いところ(水洗いレバー、ドアのノブ、便器、蛇口、床、ドアなど)を規定の濃度に薄めた消毒薬に浸して絞った布でよくふきます。
保菌者・患者の便に汚染された衣類は、消毒薬に浸してから家族のものとは別に洗濯し、天日で十分乾かします。
使った食器類は洗剤と流水で洗い、台所はよく掃除し、流しや蛇口、食器棚や冷蔵庫の扉などは消毒薬でよく拭きます。
赤痢菌の治療法
赤痢菌に対する有効なワクチンはまだ開発されておらず、治療には「抗菌薬療法」と「対処療法」があります。
抗菌薬療法
抗菌薬療法は、発症の初期段階に成人には、「ニューキノロン系抗菌薬」、「マクロライド系抗菌薬」、「ST合剤」、小児には、「ノルフロキサシン(NLFX)」、「FOM」のような抗菌薬を用いて、5日間内服投与を行います。
治療が終わると48時間以降に、24時間間隔で2~3回の糞便の培養検査し、2回連続で陰性だと除菌完了ということになります。
対処療法
対処療法は、主に強力な止瀉薬は使用せず、乳酸菌、ビフィズス菌などの生菌調整薬を服用します。
解熱剤を使用する場合は、脱水を憎悪させる可能性があったり、ニューキノロン薬と併用できない薬剤が多いので投与は慎重に行います。
脱水が強い場合、静脈内または経口輸液によって脱水を防ぎます。
薬剤耐性を持つ赤痢菌の場合は、こういった対処療法で治療します。
赤痢菌の感染事例

日本国内では、戦後はかなり多くの感染者・死者が出ていたが、近年では水道が整備されるなど衛生環境が向上したことから感染例は減少傾向にあります。
しかし、多剤耐性菌の出現や旅行者からの輸入など先進国でも問題になることがあります。
今回は、日本での赤痢菌の感染事例について紹介します。
大阪府枚方市の保育園で発生した感染事例
2012年の2月大阪府枚方保健所管内の保育園においてShigella sonnei による集団感染が発生しました。
初めに管内の医療機関からA保育園に通園する4歳の男の子がS.sonneiの発生がわかり、保健所は直ちに保育園に対する疫学調査を行いました。
学級閉鎖を行うなど対策を行われましたが、二次感染、三次感染と起こっていった可能性から、最終的には19人から赤痢菌が検出されました。
検出された19種の赤痢菌に対して薬剤感受性試験を行い、すべての株にアンピシリン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、スルフイソキサゾール耐性を持っていまいた。さらなる解析の結果、同一の遺伝子型であると考えられました。
感染拡大防止対策を行うために感染源の把握しようと試みようとしましたが、「他にも感染があった」という情報はなく調査することができず、感染源は特定することができませんでした。
山梨県身延町の魚介類販売業で発生した感染事例
2018年の10月に山梨県身延町の宿坊で夕食をとった42人が赤痢菌の食中毒が発症しました。
感染源は、同町身延の魚介類販売業「魚市」で仕入れた食材が原因だと断定されました。
山梨県で宿坊のほかにも、峡南保健所管内の飲食店の計14施設で食事をした41人が5日間にかけて下痢などの症状が出たことが公表され、最終的には、集団赤痢感染合計が98人まで上り詰めました。
すべての施設で「魚市」が同時期に製造、仕入れた刺身や総菜を客に提供していたことが感染の原因になっていて、山梨県は衛生確保が確認されるまで、「魚市」を営業禁止処分としました。
まとめ
今回は赤痢菌についてご紹介致しました。
海外旅行にいったりする際には、細菌性赤痢といったような日本ではあまり見られない感染症には気をつけてくださいね。
また、日本でも二次感染、三次感染といったことがあり、絶対に安心というわけではありませんので、症状や除菌方法などは押さえておきましょう。
赤痢菌に感染した症状が現れたときは下痢止め薬を自己判断で飲むのではなく、医療機関で適切な治療を受けてください。
ぜひ、参考にしてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございした。