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サルモネラ菌とは聞いたことがあるでしょうか?
サルモネラ菌と聞くと「卵」が思い浮かぶのではないかと思います。
「卵に殻を触ったら手を洗いなさい」というのもサルモネラ菌の感染のリスクがあるからです。
今回はそんなサルモネラ菌について、症状やかかってしまったときの予防法、対処法、感染経路について詳しくご紹介します。
もくじ
サルモネラ菌とは?

サルモネラ菌について以下の項目で解説します。
- サルモネラ菌の特徴
- サルモネラ菌の感染経路
- 感染したときの症状
それぞれについて深堀りしていきます。
1.サルモネラ菌の特徴
サルモネラ菌は、大きさ0.5×2µmぐらいの棒状で病毒性を持つ大腸菌の一種です。
主にヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌の一種で、ヒトに対しては、腸チフスやパラチフスを起こすものと、感染型食中毒を起こすものに大別されます。
食品衛生上でよく食中毒の原因となるのは、感染型食中毒を起こす病原菌のことをサルモネラ菌と呼ばれています。
食中毒性のあるサルモネラ菌は、腸管上皮細胞に感染して胃腸炎を起こし、この細胞内感染がサルモネラ菌の病原性に関与しています。
サルモネラという属名は、1885年にアメリカで細菌学者であるダニエル・サルモンが発見したころから名前が付けられました。
2.サルモネラ菌の感染経路
サルモネラ菌の感染経路は、汚染された食品が原因となる「汚染された食品による感染」と「保菌者やペットによる感染」の二つの経路があります。
それぞれ深堀りします。
汚染された食品による感染
「汚染された食品による感染」は具体的に以下のような感染経路があります。
- 汚染された食品の生食、または不十分な加熱の状態で食べた場合(鶏卵、生肉、生レバー、生ケーキなど)
- 汚染された調理器具や手指を介して、二次的に汚染された食品を食べた場合(まな板、包丁、布巾、スポンジなど)
サルモネラ菌の原因となる物質は、「肉」や「卵」が代表的です。
賞味期限を過ぎた卵は食べにないように気を付けましょう。
保菌者・ペットによる感染
「保菌者・ペットによる感染」は以下のようなものがあげれます。
- 患者・保菌者の糞便処理後に手洗いや手指の消毒が不十分な場合、汚染された手指を介して接触感染
- 汚染された箇所に触れることで、手指が汚染されて間接的な接触感染
- ペットに触れ手指が汚染され感染
ペットは保菌していても症状がでないケースがあるので、ペットに触れて感染する可能性もあります。
ペットに触れた後はしっかり手洗い・消毒をしましょう。
3.感染したときの症状
サルモネラ菌に感染した時の症状は、急性胃腸炎が最も一般的にみられる症状です。
潜伏期間は8~48時間で、まず初めに悪心及び嘔吐の症状がでてきます。
そして、数時間後には腹痛と下痢を起こします。
下痢は1日に数回から十数回で3~4日間、長いときで一週間ほど続くこともあります。
サルモネラ菌に感染は、小児や高齢者では重症化しやすく、小児では意識障害、痙攣及び、菌血症、高齢者では急性脱水症を起し、回復が遅れやすくなります。
また、HIV感染などの免疫が弱まった人のサルモネラ感染症も重症になりやすくなります。
サルモネラ菌の除菌・予防・治療方法

続いて、サルモネラ菌の除菌・予防・治療方法について解説していきます。
除菌方法
サルモネラ菌に対する消毒剤は以下のようなものがあります。
- 消毒用エタノール
- 次亜塩素酸ナトリウム
- ポビドンヨード
- 逆性石けん液(ベンザルコニウム塩化物液)
このような消毒剤は市販されているのがほとんどで、サルモネラ菌は様々な消毒剤に対して弱い細菌で有効な消毒剤が多いです。
予防方法
サルモネラ菌は、一般的に「汚染された食品から感染」と「保菌者やペットを介した感染」をするのでそれぞれに合わせた予防が大切です。
汚染された食品に対する予防
汚染された食品に対する予防方法は以下のとおりです。
- 卵は冷蔵保存、割ったら早めに食べる
- 肉類を生では控え、よく加熱(75℃、1分以上)
- 生肉や卵を扱った後は手洗い・手指の消毒
- 肉類と他の食品は調理器具や容器を分けて保存
- 料理器具は良く洗い、熱湯や消毒剤で消毒
主に卵や肉にサルモネラ菌がいるので、食品だけでなく周りの器具にも気をつけましょう。
保菌者やペットに対する予防
保菌者やペットに対する感染予防は以下のとおりです。
- 料理の前やトイレの後は手洗い・消毒を行う。
- トイレのドアノブ、便座、レバーなどはエタノールで消毒する
- ペットに触った後は手洗い・消毒を行う
感染のリスクを下げるためにもこういった予防法は大切です。
治療方法
治療する場合、サルモネラ菌に対する特効薬やワクチンはないことから、発熱と下痢による脱水の対策、および腹痛などの胃腸炎の症状緩和を中心とした「対症療法」を行います。
注意点として強力な下痢止めは除菌を遅れさせたり、麻痺性イレウスを引き起こす危険があるので使用してはいけません。
抗菌薬は軽症では使用しないのが原則ですが、サルモネラ菌に対する抗菌薬として、臨床的に認められているは、アンピシリン(ABPC)、ホスホマイシン(FOM)、およびニューキノロン薬があります。
食中毒を引き起こすサルモネラ菌の薬剤耐性率はABPCには20~30%、FOMに対して10%未満、ニューキノロン薬耐性はほとんど見られず、有効な抗菌薬として使用されます。
ただ、抗菌薬を使用した場合、排菌が長時間続くことがあります。
また、解熱剤はニューキノロンと併用できないものや、脱水症状を悪化させる場合があるので、できるだけ使用しないようにします。
サルモネラ菌の感染事例

サルモネラ菌による感染症は、日本では件数および患者数ともに毎年上位にランクインしています。
例年7~9月の夏季がピークの時期になります。
日本では、年間の発生件数や感染者は約2000人ほど減少傾向にありますが、アメリカでは毎年3万~4万人の感染の報告があり、診断や報告をしていない患者も考慮すると、20倍~100倍の感染者がいることが予想されています。
まだまだ感染の収まりを見せないサルモネラ菌ですが、今回は日本で起きたサルモネラ菌の感染事例についてご紹介します。
静岡県の仕出し屋で起きた大規模な食中毒
2007年9月18日、19日の2日間にわたり、静岡県の仕出し屋で調理した仕出し弁当を食べた9844人中1148人が、下痢、腹痛、発熱、嘔吐当の症状を伴ったサルモネラ菌による食中毒が発生しました。
発生要因として明確なものがあげられませんでしたが、可能性の高いものとして、液卵の保存方法が適切でないことが考えられまいした。
液卵を長時間高温下という増殖に十分な条件下で放置したことにより、サルモネラ菌が増殖した可能性が強く示唆されています。
この感染事例は、2日間にわたり患者数が1000人を超える2007年最大の食中毒事件となりました。
千葉県社会福祉施設で起きた食中毒事例
2020年5月16日市内老人ホーム職員から入所者の複数名の発熱、下痢等の体調不良が発生しました。
調査の結果、入所者9人が発熱、下痢などの症状が出ていました。
発生要因として細菌検査をしたところ、当該施設で調理、提供された「キャベツのしそ和え」が原因食品であることがわかりました。
患者は当該施設で提供された食事のみを食べ、患者の検便と食品からサルモネラ菌が検出されたこと、患者を診察した医師から食中毒患者発生届票が千葉県保健所に提出されました。
これらのことから、千葉市内社会福祉施設を原因施設とする食中毒事件と断定されました。
まとめ
今回はサルモネラ菌についてご紹介しました。
サルモネラ菌の中には、チフスを引き起こす種類も日本でいう一般的なサルモネラ菌は、食中毒の感染症を引き起こします。
卵や肉に存在している可能性が高いことから、普段の生活でも感染する可能性は少なからずあります。
サルモネラ菌が増殖して感染しないように、正確な保存・調理・消毒を行うことが大切です。
ぜひ、参考にしてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。