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インフルエンザウイルスやコロナウイルス、ピロリ菌など、我々の健康を脅かす微生物は世の中にたくさん存在します。
最近では、多剤耐性細菌が出てきたりもしていますよね。
そんな中で、
- ウイルス・細菌・真菌の違いがよくわからない。
- ウイルス・細菌・真菌それぞれの特徴について教えて欲しい。
こんな疑問をお持ちではありませんか?
そんな方のために今回は「ウイルス・細菌・真菌の違い」についてご紹介します。
ぜひ、参考にしてみてください。
もくじ
ウイルス・細菌・真菌の特徴

ウイルス・細菌・真菌の違いについて、以下の項目で解説していきます。
- 病原体の例
- 大きさ
- 基本的な構造
- 感染・増殖方法
それぞれについて深堀りしていきます。
病原体の例
ウイルスの病原体の例としては以下のようなものが挙げられます。
- インフルエンザウイルス
- ノロウイルス
- コロナウイルス
- HIVウイルス
- 麻疹
細菌の病原体例は以下のようなものがあげられます。
- サルモネラ菌
- 赤痢菌
- レジオネラ菌
- ピロリ菌
- 結核菌
真菌については以下のようなものがあげられます。
- カンジダ
- アスペギルス
- 白癬菌
このように、聞いたことのある感染症の病原体の中にも、ウイルス・細菌・真菌の種類に分けられていて、全く違う特徴をもっています。
大きさ
ウイルス・細菌・真菌はともに小さくて肉眼で見ることはできません。
大きさを比較すると以下の図のとおりです。

ウイルスは、約20~300nmで微生物の中でも小さいです。
例えば、インフルエンザウイルスは80~120nmの大きさになります。
細菌の大きさは、約1~5µmになります。
そして、真菌の大きさは約5µ以上になります。
細菌や真菌は光学顕微鏡で観察することができますが、ウイルスは電子顕微鏡でしか観察することができません。
基本的な構造
それぞれの構造の特徴を解説していきます。
ウイルス
ウイルスは核酸と、それを囲むカプシドと呼ばれるタンパク質の殻から構成されています。
ウイルスの種類によってエンベロープと呼ばれる膜成分などを持ちます。

核酸には「DNA」と「RNA」の2種類があり、以下のような機能があります。
- DNA→情報が含まれている
- RNA→タンパク質の合成する働きがある
ウイルスは、この「DNA」と「RNA」のどちらか一方をもっています。
細菌
細菌は原核細胞からなる単細胞生物です。
原核細胞なので、細胞膜と細胞壁がありその境に鞭毛と線毛があります。

細胞内の構造は、仕切りなく裸の状態であるDNAとリボソームのみしかありません。
細菌は細胞の形によって分類分けされ、以下のような形態があります。
- 球菌(球形)→ブドウ菌、レンサ球菌
- 桿菌(棒状)→大腸菌、ジフテリア菌
- らせん菌→コレラ菌、ピロリ菌
- 糸状細菌
真菌
真菌は、真核細胞からなる多細胞生物です。

核と呼ばれる「DNAなどの遺伝情報を包み込む膜」が存在していて、細菌よりもヒトに近い構造になっています。
感染・増殖方法
感染方法や増殖方法もウイルス、細菌、真菌によって異なります。
それぞれの感染・増殖方法について解説していきます。
ウイルス
ウイルスは、単独では増殖することができません。
ヒトの細胞の中に入り込み、侵入した細胞の力を借りて増殖していきます。

細菌
細菌は細胞分裂して、自分で増殖していきます。

感染方法は毒素を出しながらヒトの細胞に侵入して、細胞を侵略していきます。
真菌
真菌はヒトの細胞に定着すると、菌糸が成長・分岐によって感染していきます。
カンジダなどの酵母細菌は出芽や分裂して増殖していきます。

ちなみに、カビやキノコなどの真菌は胞子によって増殖していきます。
ウイルス・細菌・真菌の治療法および予防接種について

ウイルス・細菌・真菌それぞれの治療法およびワクチン・予防接種について解説していきます。
治療法
基本的な構造や感染方法も違うことから、治療方法も異なります。
つまり、ウイルス性の病気に抗菌薬を飲んでも意味がありません。
適切な治療法が大切になってきます。
ウイルスの治療法
ウイルスの治療法は「抗ウイルス薬」を使用します。
しかし、ウイルスには細胞膜がなく、ヒトの細胞に寄生して感染することから、治療薬はあまりなく開発中のものが多くなります。
「抗ウイルス薬」としては、ウイルスに直接作用するものと免疫機能を調節するものがあります。
ウイルスの治療薬の例は以下のとおりです。
- ヘルペスウイルス感染症治療薬
- サイトメガロウイルス感染症治療薬
- 抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体
- HIV感染症治療薬
- インフルエンザ治療薬肝炎治療薬
細菌の治療法
細菌の治療法は、「抗生物質」や「合成抗菌薬」を使用します。
「抗生物質」は、細菌の細胞に作用したり、増殖を止める役割があります。
抗生物質はさまざまな種類があり、細菌の特徴に応じて「殺菌性抗生物質」「静菌性抗生物質」「化学療法剤」を使い分けます。
真菌の治療法
真菌治療法は、「抗真菌薬」を使います。
「抗真菌薬」は細胞膜の破壊や、細胞膜の合成を阻害する役割があります。
「抗菌薬」の例として以下のようなものがあります。
- ポリエン系抗生物質
- フルシトシン(5-FC)
- イミダゾール系
- トリアゾール系
- アリルアミン系
- キャンディン系
- ニーモシスチス肺炎治療薬
ワクチン・予防接種
ウイルス・細菌に対するワクチン・予防接種はありますが、真菌に対してはありません。
今回はウイルス性や細菌性の有名な病気に対するワクチンをご紹介します。
ウイルスのワクチン例
ワクチンで予防接種することができる代表的なウイルスは以下のとおりです。
- インフルエンザ
- ポリオ
- 麻疹
- 風疹
- おたふくかぜ
- 日本脳炎
これらのウイルスに対しては予防接種で予防することができますが、他にも様々な感染症のウイルスに対しては開発段階であったり、なかったりします。
細菌のワクチン例
細菌に対するワクチンは、細菌が作る毒素を不活性化したり、弱めたりするものをもとに作られています。
ワクチンで予防できる細菌の代表例は以下のとおりです。
- 百日せき
- 肺炎球菌
- ヒブ
これらの細菌に対しては予防接種で予防することができます。
まとめ
今回は「ウイルス・細菌・真菌の違い」についてご紹介致しました。
感染症において、同じ症状だったとしてもウイルス性・細菌性・真菌性なのかで治療法・対処法は変わってきます。
また、ウイルスや細菌は病毒性が高いものであれば流行しやすい特徴もあります。
世の中で感染症がいったいどのような特徴を持っているのか、頭の片隅にいれておくのもいいかもしれませんね。
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
カテゴリー:生物学者【ウイルス】, 生物学者【真菌】, 生物学者【細菌】, 感染症