【作業療法士がみなさんに教えたい!】嚥下~肺炎予防と美味しく食べるために~

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

食べることはお好きですか?

美味しいごはんやスイーツに癒されることはありませんか?

今回はそんな当たり前の生活にとても大切な「嚥下」のお話です。

もくじ

なぜ嚥下が大切なの?

嚥下(えんげ)とは食物や水分などを飲み込むことです。

日々私たちは意識せずご飯を食べ、ドリンクを飲んでいます。

それには「嚥下というとても大切な体のシステムありき」なのです。

もしこのシステムが壊れてしまったら、私達の健康や生活はどうなるのでしょうか?

肺炎

口に入れた食べ物は、普通であれば胃に入りますね。

嚥下にトラブルがおきると、気管や肺に食べ物が入ってしまうことがあります。

肺に入った食べ物や水分は、もはや害をなす「異物」です。

これによって肺は炎症を起こし、発熱や呼吸困難などの症状となって現れます。

これを「誤嚥性肺炎」といいます。

栄養状態の悪化

飲み込みがうまくいかなくなると、食べたり飲んだりするのに時間がかかったり、労力を必要とするようになります。

食べるだけで疲れてしまうことも。

そうすると、自然と食事量や水分量は低下し、必要な栄養を体に取り入れることができなくなります。

特にタンパク質を含む肉や魚、ビタミン類を含む野菜などの摂取が難しくなり、筋肉量は低下し骨はもろくなります

進行するとサルコペニアやフレイル骨粗しょう症のような健康を害した状態になってしまうのです。

《フレイルや骨粗しょう症について知りたい方はコチラ↓↓》

【骨粗鬆症の方、必見!】骨粗しょう症の方の健康な骨を作る食事をまとめました

【フレイルとかロコモって何?】若いからと安心できない⁈もしかしてあなたも…

生活の質の低下

最初にも述べましたが、「好きなもの・美味しいものを味わえること」「お腹いっぱいと思えること」、これってとても大切なことだと考えています。

必要最小限な栄養素を摂取すれば、人は生きていけます。

ですが、それって味気なくないでしょうか?

必要最小限にプラスアルファされる、暮らしの幸せや豊かさ、それを生活の質といいます。

「食事に興味ありません・時間の無駄だし補助食品で大丈夫です」という猛者もいらっしゃいます。

そういう価値観もありますし、食べることに対して心の潤いを求めていない場合は、好きなものを食べられないということでは生活の質は低下しないのでしょう。

生活の質は主観的なものです。

もし、これを読んでくださっているあなたが食べることに幸せを感じるタイプの方であれば、少しだけお時間をとってこの先の記事に目を通して下さい。

健康でいるために「のど」を鍛えましょう

嚥下のトラブルは健康障害と生活の質の低下を招くリスクがあることを述べてきました。

では、嚥下をスムーズに保つためにはどうしたら良いのか。

キーになるのは「のど」です。

嚥下のメカニズム

医学的に言いますと、嚥下は口に入れる前・食べ物を見て認識するところからはじまります。

が、今回は口に取り込むところから始めてみましょう。

「飲み込むものがどこにあるか」でざっくり3つに分けて考えられます。

ターン1.唇からのどまで【噛んで丸めて送る準備】

ターン2.のどを通過【気管をよけて食道へ向かうY字路】

ターン3.食道から胃袋へ【逆戻りしないように送る】

この1~3のどの機能が低下しても嚥下のトラブルは起こります。

どこも大切なのですが、ここでは命に直結する場所、ターン2の「のど」にフォーカスをあててみます。

鍛えるべき2つのポイント+日々のケア

では、「のど」のどこを鍛えるべきなのか。

嚥下全般に良い効果があるのは歌うことです。

カラオケの趣味をお持ちの方はどんどん続けてください。

そうでない方に、トレーニング方法を。

1.鼻に向かうドアをしっかり閉める

むせた時に鼻から何か出てきたことはありませんか?

のど(口の中)は鼻とつながっていて、飲み込む時には鼻へ向かうドアがしっかり閉まって食べ物のの迷い込み防止や飲み込むための圧力補助をしています。

半ドアでは色々とよろしくないのです。

なので、ドアをしっかり閉めるトレーニングが必要です。

この場合は口すぼめ呼吸が効果を発揮します。

水を入れたコップにストローをさして息を吹き込む(ブローイング)方法や吹き戻しを使ってみましょう。呼吸のトレーニングにもなりますよ。

2.気管に間違って入らないように蓋をするスピードを上げる

食道と気管はY字路のようになっており、飲み込む時は気管に蓋がされる仕組みがあります。

加齢や病気(脳卒中など)でこの蓋のスピードが飲み込むスピードに間に合わなくなることがあり、そうすると気管に食べ物が侵入⇒肺炎になります。

蓋の動きは反射なのですが、蓋を動かすのは筋肉ですので、そこをトレーニングしましょう。

仰向けの状態なら、あごを引いて頭を持ち上げるだけ。

おきている状態なら、あごのところに指を置いて軽く抵抗をかけたまま、あごを引きましょう。

3.日々のケア

実は、水分が肺に入っただけでは肺炎になりづらいという研究結果があります。

一番気を付けなければならないのは、食べ物や水分と一緒に肺に入ってきた雑菌です。

この雑菌はどこから来るのか?

それはあなたの口の中です。

ですので、日々のお口のケアはとても大切です。

特に舌。歯磨きの最後は、舌も軽くブラッシングして雑菌のコロニーを作らないように気を付けましょう。

嚥下能力が低下してきた時のサイン

  むせやすくなった?

嚥下は能力低下があっても、あまり自覚されず重症化するまで放置されがちです。

以下のサインがあったら要注意。

  • 水分・味噌汁でむせる
  • 食事の後、声が変わる・しばらく痰がらみがある
  • 食事に時間がかかるようになった・食べていて疲れる

意外な落とし穴・食べてなくても肺炎に

また、病気療養中で点滴しかしていない・口から食べていないという方も誤嚥性肺炎になります。

原因は自分の唾液。

ご自分の唾液をきちんと飲み込めず、肺に唾液と雑菌が入ってしまうことがあるからです。

食べていなくてもお口のケアが大切といわれる理由のひとつです。

診断と治療はどこで?

嚥下に関する検査は耳鼻科です。

誤嚥の程度にもよりますが、内視鏡や透視下で検査を行います。

脳卒中やパーキンソン病も嚥下のトラブルを抱えることが多いため、そのような持病をお持ちの方は脳外科や神経内科の医師に相談して下さい。

治療はリハビリテーションの他、食事の形態を考える栄養士、お口の環境を整える歯科・介護士などあらゆる方面からお手伝いを受けることができますよ。

まとめ

ごくごく簡単に嚥下についてお伝えしてきました。

肺炎を予防しつつ、いつまでも好きなものを美味しく食べる生活のためにお役に立てれば幸いです。



カテゴリー:その他・予防法, 作業療法士【予防】

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