【言語聴覚士が教える】失語症ってなに?

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・失語症とは?

失語症とは?

主に脳梗塞や脳出血などにより、脳の血管が障害され、それによって脳の言語を司る、言語領域に障害が出ることを言います。言語機能の中枢(言語野)が障害されると、「聞く」「話す」といった音声に関わる機能面の障害や、「読む」「書く」といった文字に関わる機能が障害されるます。脳の機能面の障害を高次脳機能障害と言います。

失語症とは続き

失語症には大きく分けて、運動性と感覚性の失語症に分けられます。わかりやすく言うと、運動性とは「話す」など表出面の障害。感覚性とは「聞く」などの理解面の障害を言います。けれども、「話す」「聞く」以外にも様々な症状が起こりうることが考えられます。失語症の主な症状を分類分けすると、失語症には細かく分けて、7タイプ (ブローカ失語症、ウェルニッケ失語、全失語、超皮質性運動失語、超皮質性感覚失語、混合型皮質性質語、伝道失語) に分かれると考えられています。


・失語症の治療法について

まず最初に、失語症の有無や、どのタイプに当てはまるか、重症度レベルなどを診断する必要があります。CTやMRI画像を見つつ検査を行い、診断し、診断結果から、リハビリテーションプログラムを立てていきます。

主に使われる検査は、標準失語症検査(SLTA)です。この検査は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算」など5つの項目の検査を行いグラフ化することで、タイプを選別が行えます。しかし、失語症といっても一人一人症状は異なります。状態を観察し、必要な検査を受け、全体像を理解したうえで訓練を行なっていく必要があります。例えば「聞く」「話す」「読む」「書く」が苦手でもどの程度(単語レベル・短文レベル・長文レベル)で苦手なのでしょうか。

●「聞く」分野が苦手

・単語・短文・長文の聞き取り

●「話す」分野が苦手

・単語・短文の呼称

・復唱

・漢字の音読

・仮名の音読

・短文の音読

●「読む」ことが苦手

・漢字の理解

・仮名の理解

・短文の理解

●「書く」のが苦手

・漢字の書字・聞き取り

・仮名の書字・聞き取り

・短文の書字

・内容の説明

これらの項目から、苦手分野はどれなのかを詳細に理解して、苦手な分野を訓練していきます。

絵カードや文字カード、簡単な漫画や写真などを使い訓練を行なっていきます。言語聴覚士は、一人一人にあったリハビリテーションプログラムを立て、訓練を実施します。発症から3ヶ月ほど経過した後、訓練の効果と再検討のため、再検査を行い、プログラムの改善と実施を行います。ちなみに発症から3か月は、比較的回復が目覚ましい時期といわれています。ですから、3か月でどこまで症状が回復するかはリハビリテーションの力にかかっていると言われています。

●失語症の患者さんの気持ち

失語症は、その名の通り、言葉を失うと書きます。言葉を失うとどんな気持ちになるでしょうか。伝えたい気持ちはあるのに、うまく伝わらない。言葉は、心と直結しており、感情を表すために必要な手段です。その言葉を失うことは、ライフスタイルに大きな影響を及ぼします。また、言葉は足や手と違い、誰かに動かしてもらうことで訓練することはできません。本人の心が動かない限り、訓練を行うことができません。患者さんと向き合う際に、精神面のケアや本人のモチベーションが必要になります。まずは、気持ちに寄り添うことからリハビリテーションは始まります。

症例:Aさんの場合〜治癒までの軌跡〜

Aさんは失語症になり、うまく言葉が出せなくなったショックから、コミュニケーションをとることを嫌がるようになりました。訓練時間に病室へ迎えにいっても、首を横に振る毎日。。ただ、大好きなお孫さんや家族が来るとニコニコしていました。その様子を見ていて、お孫さんやご家族に家族写真を持ってきてもらうことにしました。また、趣味や好きな音楽をお聞きし、訓練に取り入れることにしました。訓練室ではなく病室や庭で、大好きな音楽を聞きながら、用意した歌詞カードを目で追いながらの発語訓練や写真を見ながら、ご家族の名前の書字や呼称、復唱を行いました。Aさんは、少しづつ訓練へのモチベーションが上がっていき表情も明るくなりました。病棟の職員に対しても明るい表情を見せ、リハビリに積極的になりました。

リハビリテーションの分野は、治療の分野とは異なります。完全に元に状態に戻す治療とは異なり、リハビリテーションは、今残っている能力や機能を最大限に発揮させてあげる分野です。なので、患者さんの能力や機能面の限界を考慮したうえで、訓練を行います。失語症患者さんの最大の目標は、自分のできる限りのコミュニケーションで、これからの生活を楽しむことです。そのためにも、本人の心に寄り添いながら経過を見ていくことが必要です。

ライター名(ランサーズ名):Lin Let

<経 歴>

2012年に言語聴覚士資格を取得し、リハビリテーション病院回復期で2年、訪問外来リハをおこなう医院で3年の臨床経験があります。

臨床現場では、主に高次脳機能障害、摂食嚥下障害、構音障害などの疾患を持つ方を対象にリハビリを行っていました。

現在は海外で日本語教師などの仕事を行いながらライターをしています。

言語聴覚士がかかわる分野での疾患や体の機能などについて、わかりやすく説明できるように心がけています。

生活に役立つ情報を提供できれば幸いです。



カテゴリー:脳疾患, 言語聴覚士【脳疾患】

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