【言語聴覚士が詳しく解説!】半側空間無視とは?

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半側空間無視(unilateral spatial neglect;USN)は、脳の損傷により(一般的には右側)、病巣と反対の刺激に対して、視力に問題がないにもかかわらず、片方の空間を無視してしまう症状を言います。

ちなみに、半盲との違いは半盲は眼球を固定したときの 視覚の欠損という視野における障害のことを言います。

では、半側空間無視とは具体的にどんな症状が出るのでしょうか。

  • 無視のある側に立っている人に気づかない
  • 車いすのブレーキ・フットレストの操作を片方だけ忘れてしまう
  • 半分だけ食事を残す
  • 衣服の片袖を通すことを忘れる
  • 無視のある方向に向かない
  • 壁やドアなどにぶつかる
  • 半分だけ髪を整える

半側空間無視の発症とメカニズム

半側空間無視は、脳卒中により、右側半球(主に右大脳半球頭頂葉)を障害されることによって発症します。

右半球脳卒中後の患者さんの約4割に見られると言われています。なぜ、半側を無視してしまうのでしょうか。

人間の脳は、左右で役割が異なります。

右利きの人の大半は、左側の脳を主に使って、話したり、聞いたり、書いたりなどを行っています。

多くの人が左側の脳が「言語性優位半球」と言えます。

では、右側の脳はどのような働きをしているのでしょうか。

右脳は、物体の位置や空間を把握する役割を担っています。

また、情報をイメージとして認識し整理する役割を果たしています

ですから、右脳に脳卒中が起こると,左の方を見てくれない「半側空間無視」という症状が起こります。

半側空間無視のリハビリ過程

半側空間無視の有無や重症度を知るために、まず検査を行います。

主に、抹消試験,模写試験,線分二等分試験,描画試験などです。

これらの検査は、BIT行動性無視検査の通常検査で実施することが可能です。

紙に書かれた無数のマークを見落とすことなく全てに印をつけたり、並行な線の中心部に印をつけたり、左右対称の絵を描かせることにより、患者さんの意識が左右満遍なく行き届いているかを検査します。

半側空間無視がある場合、左側へのマーク漏れや、平行線に対して、右に偏った部分に中心のマークをつけることや、左右対象の絵に対して、左側のみ書き忘れるなどの症状が見られます。

半側空間無視へのリハビリは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの職種とともに実践されます。

歩行や日常生活動作において、様々な場面で左側に意識を傾けるようにします。

具体的にどんなアプローチができるでしょうか?

無視があることを意識づける

半側空間無視の患者さんの多くは、病識(自分が病気であること)がありません。

特定の方向に意識が向かないので、自分が病気であることにも気付きにくいと言えます。

まずは、どういうことが難しくなっているかをわかりやすく説明し、自分の障害への理解と、どう対処していけばいいかを一緒に検討していきたいという意思を示してあげることが大切です。

無視がない方向から話しかける

左無視がある場合には、右側から話しかけ、右無視がある場合は、左側から話しかけてあげるように統一しましょう。

意識が向かない、向いていない方向から話しかけられることは、相手が見えていないのに、声がするという感覚になり、患者さんにとって、不安やストレスを煽ります。精神面への配慮が必要です。

食事はおかずの位置に配慮する。

半側空間無視のある患者さんは、食事の際、無視がある方向にあるおかずを見落としてしまう傾向があります。

トレイに乗せることや、意識の範囲におかずを置いてあげることによって、食べ残すことなく、食事を楽しむことができます。

トレイを左右で色分けする、意識が向く印をつけてあげるなどの方法で対処することもできます。

車椅子のブレーキ操作の練習

車椅子のブレーキやフットレス操作の見落としを防ぐために、何度も操作練習をし、意識づけることが必要です。

右を見たら必ず左も見るようにし、左右を見落とさないように訓練する必要があります。

見落としやすい側に、目印となるもの、例えばブレーキレバーを長くすることや、意識が向く色や飾りをつける。

意識が向く方向に、意識が向かない側を確認するようなメッセージシールや札(「左を確認‼️」など)を貼るなどして、意識づけることができます。

半側空間無視の経過とまとめ

半側空間無視が自然経過で良くなるケースは、発症から1か月程度と言われ、それ以上長引く場合は、完治が難しいと言われています。

半側空間無視があると、退院後、ご家族はどう対応すれば良いかわからず、困ってしまうことがあります。

半側空間無視の患者さんへのサポートは、本人の無視の程度を理解し、どんな手がかりや援助があれば、本人が対処できるのかを、探りながら行っていく必要があります。

患者さんが安全に、ストレスなく過ごせるよう、どんな方法があるかを入院中に、病院の看護師やリハビリスタッフにたずね、対処方法を学び対応していくことが大切です。

ライター名(ランサーズ名):Lin Let

<経 歴>

2012年に言語聴覚士資格を取得し、リハビリテーション病院回復期で2年、訪問外来リハをおこなう医院で3年の臨床経験があります。

臨床現場では、主に高次脳機能障害、摂食嚥下障害、構音障害などの疾患を持つ方を対象にリハビリを行っていました。

現在は海外で日本語教師などの仕事を行いながらライターをしています。

言語聴覚士がかかわる分野での疾患や体の機能などについて、わかりやすく説明できるように心がけています。

生活に役立つ情報を提供できれば幸いです。



カテゴリー:脳疾患, 言語聴覚士【脳疾患】

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