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現在の日本では回虫による感染症は少なくなりましたが、ひと昔前までは回虫の寄生が当たり前の時代もありました。
そんななかで、
- 「回虫ってどんな寄生虫なの?」
- 「回虫の予防や治療にはどんなことができるの?」
こんな疑問はありませんか。
今回は、回虫について詳しく解説します。
具体的には、
- 回虫について
- 回虫の検査・予防・治療方法
- 回虫で花粉症などのアレルギー症状が抑えれる⁉
について解説します。
ぜひ、参考にしてくださいね。
もくじ
回虫について

回虫は回虫症を発症し、人間の線虫感染症の中でもっとも多くみられる感染症です。
今回、回虫について以下の項目で紹介します。
- 回虫の特徴
- 感染経路
- 症状
それぞれについて深堀りしていきます。
回虫の特徴
回虫は、ヒトをはじめとする多くの哺乳類の小腸に寄生する線虫に属する寄生虫です。
雄と雌と異なった形をしていて、雄は全長15~30cm、雌は20~35cmとなっています。
環形動物のミミズと形が似ているが全くの別物で、ミミズにある体節や環帯はありませんが、生殖器は発達していて、体の大部分を占めています。
成熟した雌の場合、一日に1日に10万個~25万個の卵を産みます。
回虫の卵は、小腸で産み落とされますが、そのまま孵化することはなく、便とともに排出されます。
排出された卵は、15℃の気温、一か月間で成熟し、経口から胃の中に入ります。
胃液で卵の殻が溶けると、回虫は小腸に移動し、小腸壁から血管に侵入し肝臓を経由して肺に到達します。
このころには、1㎜ぐらいに成長しています。
そして、数日以内に気管支を上がって口から飲み込まれて、再び小腸に戻り、成虫になります。
成虫になるまで3か月ほどかかり、寿命は2年~4年あります。
こうした複雑な体回りをすることから「回虫」と名付けられましたが、このような感染経路をたどる理由はまだ明らかになっていません。
感染経路
感染経路は、回虫の受精卵に汚染された野菜などの食べ物を食べることによって感染します。
回虫の卵は丈夫で、土のなかで何年も生存することができます。
回虫の卵の含む糞便で汚染された土壌と、接触した食べ物を摂取することで、卵を飲み込んでしまいます。
回虫の卵が一旦口から入ると、腸で孵化して幼虫になります。
幼虫は、小腸壁を通り抜けてリンパ管や血流に入り、肺に行きます。
そこから気道にいき、再び飲み込まれて小腸で成虫になります。
成虫から、産み落とされた虫の卵は、便とともに体外に排出され、土壌中にばらまかれ、摂食されると感染のサイクルが再び始まります。
この感染症は、衛生状態の悪い熱帯地域でよくみられます。
症状
回虫に感染すると、初めての感染の場合、幼虫が肺に移ると、発熱、咳、喘鳴が起こります。
ときには血の混じった痰(血痰)が出ることがあります。
少数の回虫では消化器に症状がみられませんが、数が増えると、腹部けいれん・腸閉塞がみられますが、ほとんど小児にで見られます。
腸閉塞が起こると、吐き気、嘔吐、腹痛、腹部の腫れが起こります。
また、成虫が盲腸、胆管、膵官に詰まることがあり、重度の腹痛が起こることもあります。
数多くの回虫が小児に感染した場合、低栄養になり、成長が妨げられることもあります。
回虫検査・治療・予防方法

回虫の検査・治療・予防法についてご紹介します。
検査方法
回虫の検査方法は以下のとおりです。
- 排便の成虫検査
- 鼻腔、口腔、直腸から排出された成虫の検査
その他にも幼虫の肺移行期に好酸球増多の症状が現れて、見つかることがあります。
その場合、吐いた痰の中や、胸部X線像で幼虫の有無を確認します。
予防方法
回虫症を予防するためには、基本的に「回虫の卵を体内に取り込まないようにする」ことが対策方法になります。
具体的な対策方法として以下のようなものがあります。
- 飲食物を取り扱う前にしっかりと手を洗う
- 生野菜は食べる前に洗浄して加熱調理する
特に人の肥料を使って野菜を栽培している地域での生野菜や洗っていない野菜には気を付けましょう。
治療方法
回虫は治療薬(駆虫薬)を用いて治療します。
具体的な治療薬と効果的な内服量は以下のとおりです。
- アルベンダゾール:400mg,経口,単回
- メベンダゾール:100mg,経口,1日2回,3日間,または500mg,経口,単回
- イベルメクチン:150~200μg/kg,単回
これらの治療薬は胎児に害を及ぼすため、妊婦の方が利用する場合、医師の方は回虫症によるリスクと、治療薬を使用した場合のリスクを比較して判断する必要があります。
ロア糸状虫症の人にイベルメクチンを使用すると脳炎が起きる可能性があることから、使用する前にロア糸状虫症ではないかを医師が確認します。
回虫によって腸閉塞が起こった場合、駆虫薬で治療できない場合は手術または内視鏡で成虫の駆除をします。
肺に病変がある場合、駆虫薬は使わず、気管支拡張薬やコルチコステロイドを用いて、対処療法を行います。
回虫で花粉症などのアレルギー症状が抑えられる⁉

回虫を体に飼うことによって花粉症などのアレルギー症状が抑えられるのではないかという一説があります。
というのも、アトピーや喘息などのアレルギー疾患は、寄生虫がまん延していた時代にはほとんどありませんでした。
現代では、そんな寄生虫や細菌などを除菌・排除することによって、本来無害なものに対しても免疫が反応していしまい、花粉症などのアレルギー反応を引き起こしてしまうと考えられています。
そもそも、花粉症などのアレルギー反応は花粉に特異的なIgE抗体が作られ、そのIgE抗体がマスト細胞(肥満細胞)に結合します。
そして、結合すると、マスト細胞からヒスタミンなどが分泌され、くしゃみや鼻水などの症状を引き起こします。
寄生虫が体内にいると、非特異的なIgE抗体がたくさん作り続けられます。
その非特異的なIgE抗体は、数多くあることからマスト細胞に覆うように結合することによって、花粉に特異的なIgE抗体が結合できなくなり、アレルギー反応が発症しなくなるという仕組みです。
これは、衛生環境の整っていない発展途上国の住民のIgE値の高さや、マウスによる研究によって明らかになりました。
このように、少数の回虫であれば人にメリットを与え、共生関係がある可能性があうることが考えられています。
しかし、ある実験では違う種類の回虫を寄生されると、アレルギーを引き起こすIgE抗体産生量が増加するという研究結果もあり、一概に共生関係があるとは言えないのが現状です。
まとめ
今回は、回虫について詳しく解説致しました。
回虫は昔から人への普遍的な寄生虫で多くの人が感染していました。
それから衛生面が整えられ、感染率は急激に減少しました。
しかし、一方で回虫などの感染率が減ったことから、アトピーや花粉症などのアレルギー疾患の人が増加している可能性もあります。
一概には良し悪しを言うことがでませんが、そのような共生関係など今後の研究展開が楽しみですね。
ぜひ、参考にしていただけたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。