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人は誰しも憂鬱な気分になることがあります。

自分なんか要らない人間じゃないかと思うこともあります。
うつは“心の風邪”なんて言われていたこともありますが、親しい人にも気づかれにくく、いつの間にか深刻な状態になっていることがある“うつ”を通して心の健康を保つ方法を考えてみたいと思います。
もくじ
抑うつ気分、うつ病との違い

抑うつ気分とは
抑うつ気分は、誰しも感じることがある心の不調です。
- 意欲がわかない
- 何も楽しくない・楽しめない
- 悲しい・憂鬱な気持ち
- ささいな出来事や人から言われたことに自分に責任があると感じてしまう
- 疲れやすい・集中力が続かない
- 怒りっぽい
など、どれも特別なものではなく、皆さんが経験されたことがある感情だと思います。
持続時間がポイント
気分と病気の境目は、どのくらい憂鬱な期間が続いているか。
ベルギーの学者が学生を相手にさまざまな感情の持続時間について研究をしたところ
- 悲しみは120時間(約5日間)
- 喜びは35時間
- 希望や満足感は24時間
- 絶望や不安も同じく24時間
という結果が出たと報告しています。
希望と対局の絶望が同じくらい持続するというのも面白い結果ですが、この結果からもわかるように、感情は時間の経過とともに徐々におさまっていくものです。
飲み会やスポーツなどで瞬時に発散できることもありますしね。
抑うつ気分が2週間以上経っても軽くならない・続いている場合、うつ病を疑うファクターとして扱います。
体に出るサイン

ストレスが体にさまざまな症状を出現させることはよく知られています。
うつの場合も体にサインが出ることが多くあります。
心の不調が出ずに、体の不調が優先される方もおられるなど、症状は人によって多種多様で、その程度も様々です。
- 眠れない・寝すぎてしまう
- 体の痛み(頭痛・肩こり・胃痛など)・疼き
- 食欲不振、下痢や便秘
- 動悸・息切れ・多汗
などがうつの方によくみられる症状として知られています。
うつになりやすい人の性格傾向

従来のうつ病になりやすい性格傾向が報告されています。
- 自分が辛い状態にあることを人に打ち明けられない・言わない
- 責任感が強く、うまくいかないことは自分のせいだと考えてしまいがち
- 自分だけでなんとかしようと頑張ってしまう
こういった傾向に自覚のある方はご用心を。
世代による違い・注意点

若年から青年期
思春期特有の心の柔らかさや自意識。
自分の周りの人に同調することが良しとされるこの年代は、自分の気持ちと周りの状況との乖離に苦しむことも多いはず。
また、あくまでも俗称ですが「新型うつ病」も青年期の若者に冠された症状。
今までの頑張り過ぎる傾向の人が過剰な負荷を受けてなるうつ病と違い、ちょっとしたエピソードで働けなくなる、職場にさえいなければその症状が出ない…という病態が認められるものです。
ネットやSNSに親和性が高く、異様なほどハマってしまうのもこの世代ならではのリスクです。
成人~壮年期
職場での責任ある立場や業務におけるストレスをうけやすい年代です。
女性は出産・育児などライフイベントによるホルモンの影響がある時期かも。
家庭をもっている方は、家族に迷惑をかけたくないという想いから自分のつらさを表現できない場合もあると予測されます。
高齢期
注意力の低下や意欲の低下があることから、認知症と誤診されてしまうことがあります。
高齢者は身近な家族との死別を経験しやすく、社会のコミュニティーに所属していない方も少なくないため、孤独になりがちです。
このためうつのリスクが高いといえるのです。
もしかしてうつ?と思ったら

今まで述べてきた症状に思い当たることがある方、心と体がSOSを出しています。
まずは心も体も休めましょう。
自分がどうしたら気分転換できるのか、ゆったりと休息できるのか。
ストレスを与える場所がわかっているのなら、適度な距離をとるなどの対処も有効です。
心は不調を感じた時、自分で治ろうとする力を持っています。
これを「心の自己回復力=レジリエンス」といい、気分転換や休息はこの力を刺激して、回復を助けます。
できることなら心療内科へ受診するなど、プロの助けを借りることが望ましいですが、うつになりやすい性格傾向の方にはハードルが高いかもしれません。
こう思ってください。
うつは心の不調ですが、脳の伝達物質がうまく出ていない科学的な問題なのだと。
だから薬で少し眠れるようになったり、話を聞いてもらうだけで良くなることも多いのだと。
家族や友人の誰かひとりだけにつらい気持ちを打ち明けるだけでもかなり違うはずです。
相手にはただ、話を聞いてもらうだけでいいのです。
最初からアドバイスや励ましは不要と伝えて、ただただ言葉にしてみましょう。
症例〜出会った人〜

仕事をしている中で、認知症だと思われている方に出会いました。
確かに何を聞いても反応が鈍く、終日何をするでもなくぼんやりと日々を過ごしておられました。
エピソードを調べていくと、その方は数か月前に長年の介護の末、配偶者を亡くしていたことがわかりました。
高齢でもあり、それ以来「ボケてしまった」と周りの人は認識し、そのように接してきていたのです。
ちょうど、ケアマネジャーとお話する機会があり、主治医も理解のある方だったので相談すると抗うつ剤の処方をしてもらうことができました。
高齢なので注意深い経過観察が必要でしたが、明らかに思考の緩慢さが改善され、元通りとはいかなくても自主的に行動し、人と笑顔で関わることができるようになったのです。
うつの症状が人生に与える影響の大きさ、周りの人の観察・早期の適切な治療が生活の質を変えることを実感した出会いでした。
まとめ

うつ症状の早期発見やセルフメディケーションの大切さをお伝えしました。
普段から自分がリラックスできる方法を理解しておくことが予防や早期治療に役立ちます。
頑張り過ぎず、時には手を抜いて…
カテゴリー:うつ病, 作業療法士【うつ病】