医師にとって最も役に立っている科目「解剖学」〜この知識で患者を助けている〜

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医師約3,600人を対象に、「学生時代に学んだ教科のうち、今最も役に立っている教科はなんですか?」と聞いた調査によると、実にほぼ50%の医師が「解剖学」と答えました。

医師になって何年経っても役立っているという解剖学。どのように勉強し、どのように役立っているのか、ご紹介します。

解剖学は医学の基本 

レオナルド・ダ・ヴィンチと解剖学 

イタリアのルネサンス期を代表する芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチが、近代解剖学に於いて大きな功績を残しているとことをご存知でしょうか?

彼は、自らの描く絵の写実性を高めるために、人体を解剖し、詳細に書き写しました。

これが世界において最初の解剖図だと言われています。

このように人体の構造に忠実に、かつ詳細に調べることが、解剖学の基本になります。

まずは覚えることから始めます 

医学の領域における解剖学には、病気で亡くなった方の死因を追求する病理解剖、事件で亡くなった方の死因を追求する司法解剖、事件性が低く病院外でなくなった方の死因を追及する行政解剖、そして人体のことを深く学ぶ系統解剖があります。

このうち大学で学ぶ解剖学は、系統解剖です。

系統解剖の授業では、まず骨や筋肉、血管や神経などについて覚えていきます。

例えば、人間の体には200を超える骨があると言われていますが、その全てに名前が付います。

また、それぞれの骨には出っ張りや凹みがありますが、それにも名前がついています。まずその名前を全て覚えます。

体中に張り巡らされている神経や血管も、人によって多少の違いはありますが、基本的には決まった順番で枝分かれしますので、全て覚えます。

ちなみに解剖用語はラテン語が用いられており、私の学んだ医学部では、日本語とラテン語で覚えました。

数ヶ月間かけて膨大な量の用語を全て覚え、そして解剖実習に進みます。

知識だけでなく医師としての倫理観も養う解剖実習 

教室での勉強が終わると、実際に人体を詳細に学ぶ系統解剖実習が始まります。

この実習は、ご自身の体を医学の発展のために役立てたいと言う尊いお気持ちで、死後ご自身の体を捧げてくださる方のご遺体(献体)を使って行います。

私の学んだ医学部では、4人が1つのグループになり、2か月以上かけて文字通り頭の先から足の先まで解剖します。

解剖実習の手引き書に従い、心臓や胃などの臓器だけでなく、神経、血管、筋肉など、すべてを詳細に確認していきます。

実習期間中は、連日数時間はご遺体と向き合います。

ご遺体に対して感謝の気持ちを込めて黙祷してから実習を開始しますが、実習はその日の課題が終わるまで続きます。

例えば腕の解剖では、腕にある筋肉がどの骨のどこに付着しているか、支配する神経や血管は、どこからどのような経路を通ってきているか、これら一つ一つを丁寧にメスとピンセットを用いて追っていきます。

はじめのうちは、ご遺体の腐敗を防ぐために用いられている薬液の匂いに苦しみますが、そのうち慣れてしまい、ご遺体にのめり込むようになっても気にならなくなります。

毎日長時間ご遺体に接しますので、次第にご遺体に対する思いも深まります。

生前どんなことをしておられた方なのか、どのような思いで献体を申し出てくださったのか、そのようなことを考えていると、次第に生命への尊厳、医師として患者さんに向かう倫理観が養われていきます。

解剖実習は、医師としての知識だけでなく、プロフェッショナルな姿勢を築く基盤にもなっていると言えます。

解剖学は今も役立っています 

次に、学生時代に学んだ解剖学の知識が、医師になってどのように役立っているかご紹介します。

内科系医師の場合

特に診断を考えるときに役立ちます。

例えば、痛みを訴える患者さんを診察する時、痛む部位を体の表面から触り、体の中のどこに問題が起こっているかを推察します。

またX線検査やCT検査、超音波検査の画像をみる時も、2次元で写し出されている画像から、体の中のどの部位に問題が起こっているかを類推します。

この時に、解剖学の知識が必須になります。

外科系医師の場合

手術をする時、正確な解剖学の知識がなければ、体のどこにメスを入れ、どのように問題の場所にたどり着くかがわからなくなってしまいます。

外科系の医師の中には、実際に手術をするようになって、解剖学の知識の必要性を再認識し、再び学生の解剖実習に参加する人もいるほどです。

解剖実習〜その後 

実習を終えた後のご遺体は、火葬されます。

その後、ご遺族も招いて解剖慰霊祭があります。

私たちはお世話になったご遺体への感謝の気持ちを込め、慰霊祭に参加するようにしています。

知識だけでなく、医師としての在り方の基本を築くためにお世話になった方への思いは、医師になってからも決して忘れることができません。

最後までお読みいただきありがとうございました。



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