【医薬品情報担当者から】医薬品を正しく使うための情報 ー添付文書ー

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みなさんは薬は効いて当たり前。

副作用はありえない。

こう思っていませんか?

残念ながら、全ての薬には副作用があり、期待通りの効果がない事があります

プラセボ効果という言葉はご存知でしょうか。

薬の成分が何も入っていないのに、その薬が効いたり副作用が出たりする事です。

このような事からも、ゼロリスクの薬はありませんし、100%効く薬もありません

ワクチンやサプリメントも同じ事がいえます。

ただ、効果を最大限に出し、副作用を最小限に抑える方法はあります。

逆に製薬会社はこれを見つけるためには何年も掛けて薬を開発しています。

この情報が記載されたものが添付文書です。

もくじ

添付文書とは

添付文書は簡単に言えば、その薬の公式文書です。

そこ書いてある内容は全て国(厚生労働省)が責任をもって認可した内容となっています。

極端に言えば、記載通りに使用していれば国や製薬会社が責任を持ちますが、逸脱すると自己責任となります。

添付文書には様々な情報が記載されていますが、その内容はA4用紙で数ページにまとめられています。

内容は、薬の飲み方、その薬が効く病気、起こりうる副作用など、効果や副作用だけでなく、薬の保管方法や包装形体なども記載されています。

みなさんが薬局で薬をもらう時に受ける説明は、添付文書が元になっています。

添付文書には、副作用がおこりやすくなる状況や効き目が弱くなる状況も書いてあります。

病院や薬局で問診票を書いたり、質問を受けたりすると思います。

それはこの状況に当てはまるかどうかを知るためにしているので、漏れなく正確に答えてください。

「こんな事は関係ないよね」と自己判断しないでください。

それが重要な情報だったりします。

副作用情報収集の重要性

添付文書の記載内容は科学的根拠に基づいています。

その「科学的根拠」は集積された情報を統計解析して、算出しています。

情報は国際学会などの研究報告、製薬会社の発表など世界中から集めています。

国内では副作用がおこったら製薬会社や厚生労働省に報告する制度となっています。

この国内情報の集積の担い手がMRとなります。

MRは自社医薬品を処方している医師やその処方せんを受けている薬局に訪問して、安全性や有効性について意見交換をしています。

その意見交換の中で、厚生労働省に報告すべき情報があれば、医師や薬剤師の協力を得ながら報告書を提出します。

薬の作用には人種差もあるので、海外の状況がそのまま日本人に当てはまるとは限りません。

また研究報告などは発表までにどうしても時間がかかります。

そのため、国内でおこっている事をタイムリーに集積するMRの活動は重要になります。

特に新しく開発された薬では、情報量が少ないので、細心の注意を払って集中的に情報収集を行います。

情報解析と添付文書改訂

MRが集めた情報はすぐに厚生労働省に報告されます。

例えば「血圧上昇」の副作用とします。

これがおこった患者さんの多くが「喫煙者」だったとします。

「喫煙者」に「血圧上昇」が多いという統計結果は数人の報告だけでは科学的根拠にはなりません。

ある程度の報告が上がって初めて科学的根拠となり、「喫煙者は血圧上昇がおこりやすいので、この薬を処方するべきか、他の薬ではダメなのか考えてから処方してください」と言った意味の注意書きが添付文書に追加されます。

この情報はこの薬を処方できる全ての医師、薬剤師が知る必要があります。

もちろん、すぐにホームページなどに載せますが、多忙な医師、薬剤師が毎日全ての最新情報を確認する事は不可能です。

そこでMRがその薬を安全に使うための情報提供を行います

また添付文書改訂の詳細な内容(血圧上昇の程度、喫煙歴、副作用の経過など)を伝え、安全に薬を使うための意見交換を行います。

医薬品を正しく使うために

冒頭にも書きましたが、ゼロリスクの薬はありません。

重要なのは効果と副作用のバランスです。

例えば、抗がん剤であれば、命にかかわらない副作用(脱毛など)より治療効果が優先されると思います。

逆に命にかかわる副作用がある痛み止め薬があれば、治療効果より副作用回避が優先されるでしょう。

そのバランスについて、MRは医師、薬剤師と意見交換を行っています。

薬がなければ副作用はおこりませんが、自然治癒力でしか治せません。

事例を一つ紹介します。

アメリカで「ある治療を行うと乳癌になる危険性が高まる」との研究結果が報告されました。

これを受け、該当する薬の添付文書が改訂になりました。

「本剤の使用にあたっては、患者に対し本剤のリスクとベネフィットについて十分な説明を行うとともに必要最小限の使用にとどめ、漫然と長期投与を行わない。」(原文から抜粋)

ある医師と意見交換をすると「乳癌になるなら、この治療はやめる」との事。

この治療はこの報告までは、患者さんによっては劇的に症状がなくなると高い評価を受けていました。

この治療をやめる事で、症状に苦しむ患者さんの利益が失われる事が危惧されました。

そこで、アメリカの報告内容を紹介しました。

確かにこの治療を受けると乳癌が26%増えると書いてあります。

統計解析の結果、95%以上の精度で増えるようです。

確実に増えると言っても過言ではありません。

ただ、増えた人数は1万人あたり8人とあります。

この治療をしていない人たちでは1万人あたり30人が乳癌になり、この治療で1万人あたり38人に増えたそうです。

この情報を伝えると「全てやめる必要はないかもしれない」「乳癌の危険性は高まるがそのリスクは低く、患者さんには”リスクとベネフィット”を説明して判断する」との見解になりました。

添付文書改訂の意味が正確に伝わらないと、治療すべき患者さんの利益が失われる可能性があります。

薬は正しく怖がる事で「効果を最大限に出し、副作用を最小限に抑える」事ができます。

その一端をMRが担っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。



カテゴリー:”薬”立つ情報, 医薬情報担当者(MR)【医薬品】

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