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薬は医師や薬剤師に言われた通り飲んでますよね。
指示通りに飲まないと効かなかったり副作用がおこったりしますよ。
でも人間なので飲み忘れたりすることもあると思います。
対処方法を知らなければ、その分は飛ばして次からちゃんと飲んでください。
一度に2回分飲むのは危険です。
絶対に飛ばしてはいけない薬も中にはありますが、そのような薬であれば飲み忘れた時の対処方法を必ず教えてもらっているはずです。
自社医薬品の専門家であるMRは医師、薬剤師に飲み方や飲み忘れの対処方法を伝え、薬が安全で最大限の効果となるよう情報提供を行っています。
適正使用の重要性
薬の飲み方は添付文書という、薬の説明書で決められています。
添付文書の内容は国(厚生労働省)が認可した内容になりますので、これを守らないと認可外治療になります。
この添付文書に沿った治療を行う事を”適正使用”と呼んでいます。
薬の効果や副作用は”適正使用した場合は”という前提条件に基づいた情報となります。
逆に適正使用していない場合はどのような事がおこるのかは責任が取れません。
このため、医師や薬剤師は添付文書に従って薬の飲み方を患者さんに指示しています。
医師や薬剤師は患者さんが指示通りに飲んでいるという前提で治療を行っています。
患者さんが指示通り飲まなければ、治るものも治りませんし、想定外の副作用の危険性もあります。
薬は処方する側、される側、両方が適正使用する事で始めて本来の力を発揮します。

薬の適正使用情報
薬は飲む回数、時間、期間などが決まっています。
それらにはちゃんと理由があります。
「症状が治まったから」とか「朝ごはんは食べないから」とかの理由で自分で飲み方を変えないでください。
例えば「1日2回、食後、7日間」と薬局で言われたとします。
「食後」にはいくつか理由があります。
「食後の方が胃に負担が少ない」、「食後の方が吸収されやすい」、「飲み忘れ防ぐため」など、薬の特徴によって様々です。
「1日2回」、「7日間」も同様です。
この情報を元に”朝ごはんを食べない”、”夜勤などで不規則な生活”など、様々な生活様式の患者さんに合わせた服薬指導を行っています。
適正使用情報は膨大な量があるため、添付文書に全てを記載する事はできません。
そのため、MRは薬剤師にそれぞれの設定理由を説明しています
「1日2回、食後、7日間」の根拠となる情報を元に薬剤師は様々な患者さんが適正使用できるよう服薬指導をしています。

適正使用情報のアップデート
MRは適正使用情報の提供以外にも、実際に使われた薬の副作用や治療効果の情報収集も行っています。
MRが集めた情報を製薬会社は分析して、適正使用情報のアップデートを行っています。
例えば、薬を飲むと胃が痛くなるという副作用がおこったとします。
まず、調べるのが過去にその副作用があったかどうかです。
添付文書に書かれていれば、おこりうる副作用なので、過去の対処方法に従って対応していきます。
ただ、その報告に傾向が見えてくる事があります。
「同じ持病がある」、「同じ時期におこる」、「高齢者に多い」など、特定の条件の患者さんで高頻度におこるのであれば、発売時に想定していなかった副作用の可能性があります。
この情報は厚生労働省と共有され、検討されます。
その結果、科学的に明らかな理由がわかれば、その患者さんへの注意喚起を行う事になります。
注意喚起は添付文書の改訂という形式で行われます。
患者さんの健康に関わる情報なので、MRは早急に確実に医師や薬剤師に伝達していきます。

日常にある相互作用
薬の効き目が出にくい一番の理由は吸収不足です。
飲み忘れが一番の理由ですが、飲み合わせ(相互作用)の問題もよくおこります。
これらがあると体内に摂り込まれる薬の量が少なくなるので効き目が弱くなる事があります。
数種類の薬を飲む時には、薬剤師が必ず相互作用の有無をチェックします。
おくすり手帳で飲んでいる薬を全て確認して、それらとの相互作用もチェックします。
処方した医師もチェックしているので、ダブルチェックとなっています。
ここまでしているのに、何故「よくおこる」のでしょう。
薬同士が相互作用をおこすかどうかは理論的にわかりますし、相互作用の有無を確認する試験も製薬会社は行います。
その結果は添付文書に書かれて注意喚起がされています。
しかし、薬の開発は日進月歩で、常に新しい薬が発売されています。
それらの薬の中には想定外の相互作用をおこすものもあります。
MRの情報収集には相互作用の情報収集も含まれています。
副作用情報と同様の対応で相互作用情報のアップデートを行っています。
ただ、相互作用はドラッグストアで買える薬やサプリメントでもおこりますし、食べ物や飲み物でもおこります。
これらの開発も日進月歩です。

おくすり手帳に書いていない、これらとの相互作用をチェックする事はとても困難です。
病院や薬局で書く”問診票”はこれらを確認する目的もあリます。
「これは関係ないよね」と自己判断せずに正確に漏れなく書いてください。
適正使用情報とMRの仕事
MRは自社医薬品の専門家です。
自社医薬品の適正使用のために、日々、医師や薬剤師と意見交換を行っています。
実例を紹介します。
1日1回食前投与の飲み薬についての意見交換です。
この薬は1回飲めば24時間以上効果があるので「1日1回」です。
食事によって吸収されにくくなるので「食前」です。
また食事の30分前に飲めば、食事の影響はない事がわかっています。
医師や薬剤師からはこのような問い合わせを受けます。
・朝、昼、夜、いつがよいの?
・食前に飲み忘れたらどうすればよいの?
・24時間開けなければいけないの?
・食事の影響は何時間ほど続くの?
これらについて、適正使用情報から以下のように答えています。
・時間はいつでも構いませんが、同じ時間に飲む習慣をつけた方が飲み忘れが防げると思います。
・飲み忘れたら次の食前に飲みますが、翌日の飲む時間が迫っていれば飛ばしてください。1度に2錠飲まないでください。
・24時間以内に2錠飲んだ報告はありませんが、体内蓄積などのデータから、大きな問題はおこらないと考えられます。
・食後の影響時間は個人差があるので、わかりません。空腹であれば吸収の問題はないと思いますが、データがないので効果や安全性には十分に注意してください。
・ただ、同じ時間に規則正しく飲まないと、薬の効果が不安定になり、思わぬ副作用につながる可能性があります。
・患者さんと確実に飲める時間を決めて、その時間に確実に飲むようお伝えください。

このようにMRは医師や薬剤師と蓄積された情報を元に意見交換を行っています。
情報は基本的には適正使用に則っています。
薬は適正使用して始めて本来の力を発揮します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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