【MRが教える】医薬品ができるまで〜経口避妊薬を例に解説!〜

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

※運営よりお知らせ:記事を簡潔に掲載する都合上、専門用語の解説は少なめになっています。気になる言葉を左クリックを押したままなぞり、右クリックで検索をかけることができますのでその方法をご利用ください。

これだけ科学が進んでも、残念ながら治せない病気があります。

治療方法がわかっている病気はその原因やそこに働く薬があります。

しかし、まだ治せない病気はその原因がわからなかったり、それを制御する方法が解明されていなかったりします。

例えば、ある腸内細菌認知症では増えている事がわかったとします。

その腸内細菌を抑える事で認知症が防げる事が解明できれば治療薬の開発が始められます。

ただ、その腸内細菌を減らしても効果がないのであれば、腸内細菌が増えた事は認知症の原因ではなく認知症の症状の一つと考える事もできます。

他の原因も一緒に治療しないと効果がないのかもしれません。

このように、病気の原因究明は複雑で一筋縄ではいきません

この世に存在する薬はそれらを乗り越えて開発されています。

叡智の結晶と言っても過言ではないと思います。

ここでは、経口避妊薬を例に医薬品ができるまでを紹介していきます。

医薬品の開発

女性は妊娠すると生理が止まる事はわかっていて、その理由は性ホルモンが常に分泌されている事もわかっていました。

このことから、性ホルモンの血中濃度が高ければ妊娠しない事がわかっていました。

女性ホルモンには卵胞ホルモン黄体ホルモンの2種類があり、それぞれが協力したり拮抗したりバランスを取っています。

そのうちの黄体ホルモン排卵を抑える力が強いことも、これまでの研究でわかっていました。

問題は飲み薬にする事にありました。

分泌されている黄体ホルモンをつくる事はできましたが、飲み薬にすると効果がなくなってしまいます。

そこで黄体ホルモンと同じ働きをする成分化合物と言います)の開発が始まりました。

化合物は新しい物質なので、人体にどのような影響があるかわかりません

ましてや、経口避妊薬健康な人が妊娠しないための予防薬です。

副作用のリスクを負っても病気を治す治療薬とは立ち位置が違います。

数々の研究や動物実験、少人数の成人男性、実際に対象となる妊娠可能な女性などでの試験で効果と安全性を慎重に調べました

その結果、ある化合物が世界初の経口避妊薬が発売されました。

経口避妊薬は従来の避妊法よりも簡単で避妊効果も高いため、避妊方法の主流となりました。

発売後の情報収集

医薬品は物質としての薬に情報が加わって始めてその真価が発揮されます。

このため、発売後に多くの情報による付加価値が加わる事で、さらにその医薬品の完成度が高まっていきます。

この製薬会社は発売後に経口避妊薬の効果や副作用についての情報を集めました

発売前の実験や試験で見つけられなかった副作用想定される副作用の危険性などを調べるためです。

その結果、黄体ホルモンの副作用で健康被害がおこる可能性があることがわかりました。

黄体ホルモンの作用から懸念されていた脂質代謝への悪影響です。

この副作用から心臓への悪影響がでて、残念ながら亡くなる方も出てしまいました。

なお、「経口避妊薬は太る」と言う認識はこれに関連した情報です。

他にも月経不順が高頻度でおこるなどの報告があがっていました。

原因として、2つの女性ホルモンの1つしか飲んでいない事が考えられました。

そこで2つの女性ホルモンを含んだ経口避妊薬の開発が始まりました。

ここでも先程と同じような研究、実験、試験などを経て、新しい経口避妊薬が発売されました。

ここでも製薬会社は薬の情報を集めました。

すると、今度は加えたホルモン、卵胞ホルモンの作用から懸念されていた副作用がおこりました。

卵胞ホルモンには血が固まりやすくする働きがあり、また卵胞ホルモンで悪化する癌がある事が知られていました。

経口避妊薬を飲んでいる方で心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症がおこり、癌との関連性も報告されるようになりました。

経口避妊薬は癌になる」と言う認識はこれに関連した情報です。

そこで卵胞ホルモンの量を減らした経口避妊薬が発売されましたが、今度はまた黄体ホルモンの悪影響がおこってしまいました。

その後、製薬会社は新しい黄体ホルモンを開発したり、飲み方を工夫したりして現在の経口避妊薬が開発されました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

すみません。怖い話になってしまいました。

これは約半世紀前の事例です。

今ではこのような経緯で医薬品が開発される事は考えられません。

旧来の経口避妊薬との違いを表すため「低用量経口避妊薬(低用量ピル)」と呼ばれています。

低用量ピルは様々な副作用の危険性を可能な限り抑えています。

低用量ピルは太ることも癌になる可能性も低いと考えられています。

ただ、成分であるホルモン量を必要最低限にしていますので、、飲み忘れは厳禁です。

医薬品の進化

医薬品は情報によって進化を続け、低用量ピルのような安全性の高い薬に成長していきます。

この成長は安全性だけではなく、新しい治療方法にもつながっています。

経口避妊薬を飲むと「生理が楽になる」との報告がみられるようになりました。

生理痛の原因はいくつかあり、完全な治療方法はまだありません

生理痛の原因の一つに「子宮内膜症」と言う病気があり、不妊症や卵巣癌の原因の一つと考えられています。

低用量ピルが子宮内膜症の治療につながる可能性について現在も研究が続けられています。

予防薬から治療薬への進化です。

避妊薬としてのピルには生理が不可欠です。

生理がないと妊娠の有無が判断できませんから。

そのため、毎月必ず生理が来るように1週間程度の休薬期間が必要になります。

実際に飲まないケースもありますし、プラセボ(成分が入っていない薬)を飲む事もあります。

一方、治療薬の目的は生理痛の改善です。

単純に「生理がなければ生理痛はおこらない」と言う考え方もあります。

このため、3ヶ月程度飲み続けて、その間の生理を止めてしまうと言う治療が行われる事もあります。

なお、この間に含まれる女性ホルモンの量はさらに少なくなり、「超低用量」と呼ばれるようになっています。

ただ、ここでも課題は残っています。

血栓症の可能性は完全に消える事はありませんし、超低用量化による副作用の増加も懸念されます。

また、この治療では子宮内膜症の症状は抑えられますが、治す事はできません

さらなる成長が望まれています。

医薬品開発とMR

医薬品はこのように成長を続けています。

「医薬品ができるまで」というタイトルですが、医薬品に完成はないと思っています。

医薬品の成長に必要な情報を集めるの業務MRが行っています。

MR自社医薬品の効果や副作用について医師、薬剤師と意見交換を行い、その情報を報告しています。

特に新しい薬に関しては集中的に情報収集を行い、経口避妊薬の事例のような事態を未然に防いでいます

例えば希少疾患の治療薬では、このような活動を行っています。

①その希少疾患を診察している病院で、発売前にその薬の使い方や注意点を説明し、正しい処方を理解してもらう。

②その病院からの処方せんを受けている薬局でも同じような対応をする。

発売後に薬が納入されたら薬局で処方した医師などの情報を教えてもらう。

処方した医師薬を使用した状況などを教えてもらい、今後の状況についても教えてもらうように依頼する。

集めた情報を情報元の薬局や社内関連部署に報告し、情報共有する。

このような活動により、薬の情報が集積され成長の糧となっていきます。

経口避妊薬が開発された頃とは比べられない程、安全性対策は進化しています

最後までお読みいただきありがとうございました。



カテゴリー:”薬”立つ情報, 医薬情報担当者(MR)【医薬品】

タグ:,

1件の返信

トラックバック

  1. 【製薬会社開発部からお知らせ】医療用新薬は売り出しすぐに飛びつくのは危険? – お役立ち健康情報局

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。