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もくじ
前兆

6月上旬の蒸し暑い日が続いていたある日、
仕事を終えて寝る直前に感じたのは突然の左耳の耳鳴り、めまいでした。
耳鳴りというよりはむしろ痛みすら感じるほどでした。
薬剤師として働き始めて3年目、ようやくリズムをつかみ始め、
さらに薬剤師としての業務以外の新人教育も任され始めた時期でした。
職場環境も大学病院の門前薬局という、
患者数も処方薬数も多い厳しい状況でもありました。
疲れと判断

キーン、という耳鳴りとめまいがあったものの、5分ほどでおさまり、
なんとなくぼんやりとした感覚はあったものの、疲れだろう
と判断しそのまま就寝しました。
翌日もいつもの時間に起床しましたが、
なんとなくもやがかったような、すっきりしない感覚がありました。
そのまま仕事に行っても、
左耳がズーンというような、ボーンというような重低音の音が聞こえているような気がしていました。
しかし、その日は粉薬の調剤が多く、機械の音もうるさかったため、
そのせいかな、疲れているんだろうな、と更に無視してそのまま過ごしました。
業務を終えてからも重低音の感覚は続いていましたが、
機械の音が耳に残っているのだろうと思い、早めに帰って休むことにしました。
天井が回った

さらに次の日、
耳鳴りを感じて3日が経ちましたがやはり重低音の感覚が続いています。
暑い日が続いていたこともあり、それでも疲れだろうと思い気にもしていなかったのです。
普段から忙しい職場ではありましたが、その日は更に忙しく、
神経も極度に張りつめて業務を行っている時でした。
急に天井と床が反転したような感覚に襲われました。
重低音がひどくなり、また耳に激痛を感じ、
とても立っていられない状態に陥りました。
近くの机に手をついてよりかかり、
ぐらつく視界と重低音、耳の激痛をやり過ごそうとしましたが、
汗が噴き出す感覚もありました。
調剤途中でしたが、先輩に声をかけ、途中で作業を変わってもらうことにしました。
あまりの顔色の悪さに、
先輩から「とりあえず休憩室にいこう」と言われ、20分ほど休むと、
多少の余韻はあったものの、だいぶ楽になりました。
さすがに異変を感じましたが、
忙しい状況の中で作業を変わってもらったことや抜けてしまったことに引け目を感じ、
再度調剤室に戻り、その日の業務をなんとかやり過ごしました。
病院に行くよう言われたものの、忙しさに追われ、
重低音のような音とめまいを度々感じながら更に1週間ほど変わらず業務と日常生活を送りました。
2週間過ぎた頃にようやく受診

耳鳴りやめまいの発作の波は続いていましたが、
少しやり過ごすとなんとかなる、と自己判断し、
落ち着いたら病院にいこうと思いながら約2週間が経ちました。
その日もとても忙しい日で、感覚としてめまいが来そうだな、と思いながら業務をこなしていると、
いつもよりひどいめまいと左耳の痛みの波がやってきました。
ぐらぐらと揺れる視界の中で、波をやり過ごすために椅子に腰かけようとしましたが、
椅子にたどり着く前に座り込んでしまいました。
さすがに業務を続けることは無理だと判断し、
そのまま早退してようやく耳鼻科を受診しました。
聴力検査

問診票にそれまでの経過を記載すると、聴力検査が行われることになりました。
健康診断でよく知られる音が聞こえた時にボタンを押す検査の他に、
骨伝導を利用した聴力検査も行いました。
左耳の検査を行っている途中で、自分でも低音がほとんど聞こえていないことに気が付きました。
なんとなく聞こえづらさは感じていたものの、
静かな部屋で検査として音を聞くと、明らかな左右差がありました。
そして検査結果をもとに、診察が行われました。
そこで医師に伝えられたのは「左耳の聴力が8割ほど落ちており、ほぼ間違いなく突発性難聴だろう」と言われました。
投薬治療

自分でも危機感は感じていたものの、
疲れだと信じ切っていたため、まさか突発性難聴と診断されるとは思いもよりませんでした。
医師には
「かなりしんどかったはず。本来ならこのまま入院してステロイド治療を行うべき。」
と言われてしまいました。
症状発症から期間が経過しているため、ステロイドも効きづらいかもしれない、とも言われました。
しかし、それまでもめまいや痛みの波のたびに業務を中断したり、抜けていた私には入院という選択肢をすぐに取ることができませんでした。
医師にそれを伝えると
「突発性難聴は初動が大事です。すぐに治療を開始して、疲れやストレスを感じないよう、休息をとる必要がある病気です。ここまで進行していても入院を拒否するのであれば、内服治療をしましょう。それでダメなら、即入院してください」
と言われました。
処方されたのはプレドニゾロン錠、メチコバール錠、アデホスコーワ顆粒、イソバイドシロップ、ガスター錠の5種類でした。
突発性難聴ではよく見られる処方ですが、プレドニゾロンは1日60㎎という、内服薬としては高容量で処方されました。
投薬治療を開始して

プレドニゾロン錠とイソバイドシロップは、とても「苦い、不味い」薬です。
冷やして飲んだり、多すぎない程度の水で薄めて服用しましたが、
慣れることはありませんでした。
プレドニンが高容量だったため、
副作用である不眠や胃の荒れを心配しましたが、
私の場合は特に副作用を感じることはありませんでした。
服用を開始しましたが、
めまいや耳鳴りの改善は自分では感じることができないまま1週間が経過し、
再度受診の日を迎えました。
検査結果はほんの少し良くなってはいたものの、
やはり左耳の聴力は低いままでめまいやふらつきも続いていました。
医師に
「休むことも治療です。一度入院して、休んでください」
とはっきり言われたものの、それでも入院に引け目を感じていました。
上司に診断結果を伝えると
「一度入院して、きちんと治してから働かないとエラーにも繋がる」
と言われ、ようやく入院することに決めました。
入院

日程を調整し、入院したのは最初に耳鳴りやめまいを感じてから約1か月後でした。
処方薬はプレドニンの点滴、メチコバール、アデホスコーワ顆粒、イソバイドシロップ、ガスター錠でした。
プレドニンはパルス療法という高容量での点滴だったため、200mgで開始しました。
入院して休んだからか、プレドニンのおかげかはっきりと断定はできないものの、入院3日目ほどですぐに自分でも改善したことがわかりました。
それまでは立ち上がろうとするとめまいに襲われ、
重低音の耳鳴りも続いていたのですが、めまいも耳鳴りもかなり軽減されました。
入院3日目くらいに聴力検査を行うと、今まで聞こえなかった低音がわかるようになりました。
通常、突発性難聴におけるステロイド治療は症状発症してから1~2週間以内でないと効果がないと言われています。
私の場合は内服治療を始めた時には2週間が経過してしまっていたため、
あまり効果がないと言われていましたが、
入院してパルス療法を始めると
幸いにもかなり改善が見られました。
徐々にステロイドを減量し、入院1週間を終えるころには100mg前後になっていました。
入院1週間目に行われた聴力検査では、ほぼ右耳と変わらない程度には聴力が回復していました。
あと1週間入院して、再度聴力低下やふらつきが見られなければ、
14日目で退院しよう、という説明をうけました。
入院2週間目

入院2週間目に入ると、ステロイドは点滴ではなく、内服薬に変わりました。
この頃には、たまにふらつきや虫の羽音のような耳鳴りを感じることはあったものの、
以前のように立っていられないような発作に襲われることはありませんでした。
ステロイドも50mg、30mg、20mgと順調に減量することができました。
入院して13日目の聴力検査では、右耳とほぼ同じレベルに回復が確認されたため、14日目に退院することになりました。
退院後の治療

14日目で退院したのちは、
ステロイドを1日当たり10mg、5mgと減量しながら
メチコバール、アデホス、イソバイドシロップ、ガスター錠の服用を続けました。
職場にも復帰し、無理のない範囲で仕事をするよう努め、自分自身にも気持ち的な負荷をかけないよう過ごしました。
その後

突発性難聴は発症初期ですぐに受診する必要がありますが、
思いもよらなかった上に、忙しさを理由に受診を先延ばしにしてしまいました。
医師にもステロイドの効果は保証できないと言われていたため、改善が見られたのは非常に幸運だったと思います。
しかし、完治した、というわけではありません。
その後も冬のインフルエンザシーズンのような繁忙期に入ると、
以前ほどひどくないものの、耳鳴りやめまいを感じることがあります。
前回の経験を踏まえ、すぐに病院を受診し、仕事量や私生活の負担もできるだけ早めに調整するようにしています。
ステロイドを飲むほど悪化することはないものの、
メチコバール、アデホスコーワ顆粒、イソバイドにはいまだにお世話になることがあります。
そうして体力、精神的に負担を減らすようにして
すぐに病院を受診し、3種を服用するようにうまく付き合うようようにしています。
突発性難聴で大事なのは、異変を感じたらすぐに受診をする、そして休息を取る、ということだと身をもって経験しました。
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