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認知症とお聞きになるとどんなイメージが浮かびますか?

物忘れや徘徊や性格が変化すること、脳の障害や老化が原因でなるもの。そんなイメージでしょうか?脳の障害であることは確かにそうですが、認知症にも実は種類があります。
老化による物忘れは、年齢による脳の生理的変化であって、認知症とはまた異なります。
認知症は脳の神経系の変化や脱落により生じるもので、気質的な変化があるものです。
なので、老化による物忘れよりも進行は早く進む印象です。
脳の神経系の変化によって引き起こされる認知症には、具体的にどんな種類や症状があるのでしょうか。
その種類によって、症状や経過、周囲の理解や対応方法は異なります。
認知症には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症などがあり、「三大認知症」と呼ばれていて認知症の約85%以上を占めています。
他の認知症としては、治療で治すことができる認知症が含まれています。
では、具体的に詳しく見ていきましょう!
●アルツハイマー型認知症
認知症のうちおよそ半数はこのアルツハイマー型認知症であると言われています。最近では映画や小説などで取り上げられることにより、知名度も上がってきている印象ですね。普段の生活が少しずつ崩れていくという印象でしょうか?そのとおりです。アルツハイマー型認知症は、物忘れから始まり次第に日常生活でできていたことができなくなる、新しいことが記憶できない、また思い出せないなどの症状へと進んでいく病気です。
〇原因
脳に異常なタンパク質(アミロイドβ)が溜まっていき、徐々に脳が萎縮していく病気です。そして、萎縮は脳全体へと徐々に広まっていきます。MRIなので実際に脳画像を見ると脳が萎縮して小さくなっている、空洞が目立つことがわかります。脳が小さくなれば、記憶を司る場所(海馬)も障害され記憶障害が生じます。
〇主な症状〇
記憶障害が主に生じ、新しいことが覚えられない。
日付や昼夜の理解ができない。ご飯を食べたことを忘れる。
今いる場所がわからない。自分の名前や家族がわからない。
計算ができなくなる。などの症状が見られます。
こういうことが原因で、徘徊行為や物取られ妄想が生じます。
〇精神面
うつ、妄想、無関心、徘徊、興奮や暴力行為などが見られます。
〇対応方法
本人の記憶障害の進行を理解しながら、安心させてあげるために話をよく聞いてあげましょう。
何度も同じことを繰り返し言うことや妄想などを言い、イライラすることがありますが、妄想であっても本人にとっては現実だと思っているので、穏やかに対応しましょう。
物を取られたなどの妄想を話す場合には、興奮している場合があるので、さらに興奮させないために否定せずに話を聞いてあげましょう。
嫌な記憶は残りやすく不安を感じストレスが増すと症状の悪化につながるので、本人に合わせた対応が必要になります。


●レビー小体型認知症
主な症状は「幻視」です。見えないものが見える、眠りながら怒鳴ることや奇声をあげるなどの異常行為が見られます。また、パーキンソン病のように小刻みに歩くなどの症状が見られます。認知機能がしっかりしている良い状態のこともあれば、悪い状態の日もあり、症状に波のある病気です。初期では認知症に気づかない人もいます。
原因
脳の神経細胞に「レビー小体」というタンパク質がたまり、脳の神経細胞を破壊することにより認知症が生じます。また、レビー小体によって脳のドーパミン神経が壊されることにより、全身の筋肉に運動指令を与えるドーパミンという神経伝達物質が生成出来なくなることよって、体がうまく動かせなくなり、パーキンソン病の症状が生じます。
〇主な症状〇
認知機能の低下により、注意力の低下や幻視などが見られます。
幻視では、いるはずのない人が見えたり、何かを何かに見間違えたりするなどの症状が見られます。
頭がしっかりしている時もあれば、ぼーっとして判断力が鈍るなど、日により症状に波が見られます。
〇睡眠時の異常行為
レム睡眠障害といわれ、眠りの浅い状態の際に奇声をあげる、暴れる、暴力行為などが見られることあります。
〇身体的な症状
パーキンソン症状がみられ主に、筋肉のこわばり、小刻み歩行、無表情、転びやすくなるなどの症状が見られます。
〇対応方法
日により症状に変化が生じるので、対応に日々変化を加える必要があると思います。パーキンソン症状が見られる際は、歩行時の状態を観察し、転ばないか、倒れていないか見守りながらサポートしてあげることが大切です。

●脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血なので発症する認知症のことを言います。脳の障害範囲により症状は様々で、認知症以外にも身体的な障害である麻痺なども同時に出ることがあります。
〇原因
脳の血管に血栓ができ詰まることによって生じる脳梗塞や血管が破れ出血することによって生じる脳出血により生じます。障害される部位により、様々な障害が出ます。
〇主な症状〇
脳血管障害により細胞が障害された機能が低下します。
ですから正常に機能する部分もあれば、障害されてしまった部分もあるということです。
物忘れや覚えられない(記銘力低下)などの記憶障害はあるものの、判断能力や専門知識などは残っている。
このように、障害された能力との正常に機能する能力がある状態を「まだら認知症」と言います。
脳血管障害になると、普通よりも疲れやすくなります(易疲労性)。
障害された部分を持ちながら脳が働くわけですから、普通以上に負荷がかかります。
そのため、日により疲れやすかったり、ぼーっとしてしまったりなど日により、症状の程度が異なることがあります。
〇身体障害
脳梗塞や脳出血が起こる場所により、肢体に麻痺が出ることがよく見られます。
言語領域である部分で生じた場合、言語障害が見られることがあります。
〇対処方法
本人のできることできないことを見極め、できる分野を伸ばせるようにまたは維持できるようにリハビリなど行いながら、普段の生活ができるようにサポートしてあげることが大切です


認知症の種類によって症状の特徴や進行に違いがあるので、治療や症状に対する介護の仕方や生活の注意点なども違ってきます。
認知症の疑いが少しでもある場合、病院でまず検査していただくことをお勧めします。
問診や診察以外にも、MRI検査や脳血流SPECT(スペクト)検査により詳しく調べることが可能です。
症状によっては、お薬により症状の緩和や進行を押させる治療が可能です。

ライター名(ランサーズ名):Lin Let
<経 歴>
2012年に言語聴覚士資格を取得し、リハビリテーション病院回復期で2年、訪問外来リハをおこなう医院で3年の臨床経験があります。
臨床現場では、主に高次脳機能障害、摂食嚥下障害、構音障害などの疾患を持つ方を対象にリハビリを行っていました。
現在は海外で日本語教師などの仕事を行いながらライターをしています。
言語聴覚士がかかわる分野での疾患や体の機能などについて、わかりやすく説明できるように心がけています。
生活に役立つ情報を提供できれば幸いです。
カテゴリー:言語聴覚士【認知症】, 認知症