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もくじ
1.はじめに
最近、中堅の人気お笑い芸人さんで腎細胞がんが見つかったというのが話題となりましたね。
本来は、別の病気(偏頭痛)で検査入院していたのですが、肝機能の数値が高かったということで「超音波検査をやってほしい!」と強く願い出たらしいです。
超音波検査で異常が見つかったのは、肝臓ではなく腎臓でした。
腎臓に約5cmのシコリが見つかったのです。
さらにMRIによる精密検査がおこなわれて腎細胞がんと診断されたのでした。
これって偶然のように思いますが、腎細胞がんは超音波検査を検診などでやったときに発見されることが多い病気なんです。
今回は、そんな腎細胞がんについて臨床検査技師の立場からお伝えいたします。
2.腎臓の役割とは
病気の話の前に腎臓について簡単に説明します。
腎臓は、ソラマメのような形をしていて、大きさは握りこぶしより少し大きいくらいです。
また、腰から少し上の背中側の位置に左右ひとつずつあります。

腎臓の働きには、
- 老廃物を尿として体から出す
- 塩分と水分の量をコントロールして血圧の調整をする
- 体内のイオンバランス(電解質)と体液量の調節をする
- 赤血球を増やすホルモンを作る
- 強い骨を作るためのビタミンDを活性化させる
などがあります。
3.腎細胞がんとは?

種類
腎臓には、2種類の「がん」が存在します。
腎臓から出た尿を尿管に接合する腎盂(じんう)に発生する腎盂がん
腎臓の実質の細胞が、がん化して発生する腎細胞がん
この2つがんは、性質や治療法が異なるため別々に区別されます。
特徴
がん全体の1%を占めています。
男性は女性の2倍かかりやすいです。
発症は、40~50代に多いです。
喫煙者は非喫煙者の約2倍リスクがあります。
(ちなみに今回見つかった芸人さんは48歳でした。)
原因
原因は大きく分けると2つあげられます。
1つは、生活習慣の乱れによるもの(肥満、喫煙、高血圧など)、もう1つは透析を長期間受けている方です。
症状
初期症状は、ほとんどありません。
がんが進行すると、血尿、お腹にシコリ、お腹や背中の痛みなど人によって異なりますが色んな症状が出てきます。
また、腎細胞がんではなく転移先の癌が先に見つかる事も少なくありません。
4.腎臓細胞癌の検査について
血液検査
腎細胞がんになると、肝機能、腎機能や炎症反応の値が高くなりますが、この数値だけで腎細胞がんを特定するのは非常に困難です。
腫瘍マーカー検査は、特定される腫瘍マーカーがないため検査できません。
腹部超音波検査(腹部エコー検査)

どのような検査?
CTやレントゲン検査と違って、人体に無害で痛みもないため手軽に何度も検査を行うことが出来ます。
検査方法は、超音波を出す器具(プローブ)にゼリーをつけて体の表面に密着させます。
そして、体の中の組織から跳ね返ってきた音を画像化してリアルタイムで観察していきます。
何が分かるの?
腎臓を多方向から観察することで異常な部分の有無を確認します。
腎臓でよく見かける液体を貯留した球状の袋の嚢胞(のうほう)や良性腫瘍の腎血管脂肪腫などの鑑別もします。
スクリーニング検査としの役割
腎細胞がんが疑われる場合、腹部超音波検査がスクリーニング検査として行われます。
また、人間ドックや検診の腹部超音波検査で発見されることが多いことから、腎臓の腫瘍を見つける検査の第一選択とされています。
CT検査・MRI検査
腹部超音波検査で見つけられた腫瘍が腎細胞がんかどうかを診断するために、造影剤を使ったCT検査が行われます。
MRI検査は、造影剤のアレルギーがある場合やCT検査での診断が困難な場合に行われます。
5.治療について
腎細胞がんの根治治療は手術です。
ほとんどの場合、開腹手術と比較して体の負担が少ない腹腔鏡手術が施行されます。

手術方法は、腎細胞がんの進行度や組織への浸潤の程度によって根治的腎摘除術または腎部分切除術が選択されます。
抗がん剤による治療は、腎細胞がんの効果的な抗がん剤がないためほとんど行われません。
6.まとめ
腎細胞がんは、初期症状がほとんどありません。
また、血液検査では腎細胞がんに特化した検査項目がないため、検査データから疾患を特定することは非常に困難です。
では、腎細胞がんを早期発見するにはどうすれば良いでしょう。
特に疾患のリスクのある方(男性、40歳以上、肥満、喫煙)は、健康診断で腹部超音波検査を受けることをお勧めします。
もし、自分が受診する健診セット項目に腹部超音波検査が入っていなくても追加オプションが可能です。
腹部超音波検査では腎臓以外にも、肝臓、胆のう、膵臓、脾臓などの臓器も検査しますのでメリットは非常に大きいと思います。
私も超音波検査をしていますが、健康診断で来られた方で腎細胞がんだけでなく、早期の胆管がん、膵がんが疑われる腫瘍を発見する機会が度々あります。

日本人の2人に1人が「がんを発症」して、3人に1人が「がんで亡くなるといわれています。
生活習慣の改善と定期的な超音波検査でがんの予防と早期発見をして健康寿命をのばしましょう。
ライター名(ランサーズ名):まさざね君
<経 歴>
臨床検査技師の国家資格を2000年に所得。
臨床経験は、総合病院で15年、癌・肺疾患専門病院で5年目になります。
臨床現場では、健診から救急患者まで生理検査を中心に従事しています。
臨床検査技師は、血液などの検査値だけでなく、細菌培養、画像診断、細胞や組織などについても検査して報告しています。
これらの検査を通して、病気の原因、検査、治療、予防など分かり易くお伝えしていきます。
気になるは病気について、少しでもお役に立てれば幸いです。
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