【製薬会社開発部のひとりごと】医療用新薬は売り出しすぐに飛びつくのは危険?

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新医療用医薬品が発売されると、期待が大きいと新聞などの専門外のマスコミでも取り上げられることがあります。

新発売の医療用医薬品に飛びつくことの危険性を新医療品ができるまでのステップを紹介しつつ説明します。

新薬が出来るまで

新薬が出来るまでには次のようなステップを踏んで作ることが法律で決められています。その法律は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。

厚生労働省資料 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/11-2/kousei-data/PDF/23010234.pdf より抜粋
  1. 新規化学物質のスクリーニング
  2. 動物を用いた毒性試験
  3. 健康成人を対象とした第一相試験
  4. 用量・用法を決めるための患者を対象とした第二相試験
  5. 効果を確認するための無作為化対照比較試験(第三相試験)

1.で見いだされた化合物は2.の毒性試験で脱落し、毒性試験を通過したものでも3.の第一相試験で脱落し、さらに4.あるいは5.で脱落します。

早くに脱落するほど製薬会社は経費の損失は少なくなりますが、5.で脱落すると大変な損失になります。

また、5.がクリアできることをある程度確認してからでなければ、その薬を製造するための工場を建てることはかなり大きなリスクを負うことになります。

新薬開発のステップ(臨床)

第一相試験から第三相試験までで重篤な副作用は全て確認できているので安全性は保障されていると考えがちですが、決してそうではありません。

人に対して初めて投与するときには健康成人を選択するように、なるべき大きな副作用が表れないように対象を絞ります。(健康成人でも副作用がでるなら患者ではもっと副作用が出る可能性が高くなるので、絞るという言葉は不適切かも知れません。)

第一相試験

第一相試験は初めて人に投与する試験です。動物実験で分かった毒性量以下の用量から始めて、毒性がでるまで用量を上げていきます(最小毒性量の探索)。

同時に、動物実験で薬の効果で働く検査値が変化するかを調べます。

人が耐えることができる毒性量で十分な薬の効果がでれば第一相試験はクリアです。

第二相試験

第二相試験では第一相試験で安全が確保できて、薬効が期待できる用量をその病気にかかっている人に投与して効果と安全性の当たりを付けます。


実際にその病気かが治るかどうかを評価項目として試験を行います。

投与量は第一相試験を参考に、2~3種類を試験で治すのが普通です。

実際には用量設定試験を前期第二相試験で行い、その前期試験で決まった投与量を用い人数を増やして有効率を求める場合もあります。

会社が求める安全性と有効性のハードルを超えれば第二相試験はクリアです。

第三相試験

第三相試験は第二相試験で得られた効果と安全性を二重盲検比較試験で確認するために行います。

対照群は他の薬剤がない分野ではプラセボが使われます。

すでに薬剤がある場合は、標準治療薬が対照薬となります。

標準薬がある場合には非劣勢であることが統計学的に明らかになればクリアです。

ただし、あまりにも同じ作用機序の薬が同じ病気に対して沢山ある場合には新医療医薬品ではなく、後発医薬品としか厚生労働省が認めない場合もあります。

第三相試験がクリアになれば厚生労働省に今までの動物実験から第三相試験の内容をまとめて厚生労働省に提出して審査を求めます。

その審査内容は審査を通ったものは全て公開されています。(特許に関わる部分は黒塗りですが、そのほかは誰でも厚生労働省の関連法人である医療用医薬品医療機器機構のホームページで公開されています。)

その後、審査会で薬価が決定されて、薬価決定半年以内に発売されることになります。

なぜ新薬にとびついてはいけないのか

法律で決められている試験は高齢者他の病気を併発している患者を除外して行い、薬の評価がしやすくなっています。

しかし、実際の臨床の場では、あらかじめ併用薬で明らかに副作用の発生率が高くなることが、新薬の作用機序から分かる場合を除けば、その条件に当てはまる人たちは発売後に初めて薬を飲むことになるのです。

さらに、有望な薬であればあるほど、発売時にたくさんの人に使われることになります。

そうなると第二相試験と第三相試験の試験者数よりも発売3か月の間の使用者数が上回ることになります。

そうすると潜在的で重篤な副作用がでることがあります。

従って、厚生労働省は新薬発売後はある一定期間副作用に関して詳しく調査することを販売会社に求めています。

つまり、新薬の発売すぐはまだ安全性を広く見る試験の途中なのです。

この期間に重篤な副作用がでて発売中止になった薬剤もあります。

参考例:肺がん治療薬イレッサの教訓

厚生労働省がこのような規制を置いたのは、肺がん治療薬”イレッサ”の教訓によります。


イレッサは発売時には新聞などマスコミが「夢の新薬」が出来たと取り上げました。

発売後5か月間で5万人に処方され、イレッサ投与が関連する間質性肺炎で200人近くがなくなりました。

「また薬害か…」と心配する声もありました。

しかし、間質性肺炎を起こして死亡した人を分析するとイレッサの対応疾患である肺がんではなくて、そのほかのがんがほとんどでした。

臨床試験でイレッサを投与されたのは1,000人前後でした。


その結果の解釈はイレッサが「夢の新薬」であるとマスコミが報じたため、肺がん専門家以外の医者がそのほかのがんに使用して間質性肺炎が悪化するまで見逃してしまったことから間質性肺炎の死亡率が高くなった可能性が高いと考えられます。

これはイレッサに間質性肺炎という副作用がないということではなく、適応症以外の肺がんに用いられたことで、間質性肺炎の死亡率が上がったということです。

薬害というよりも「マスコミ害」というようなものでした。

これを教訓として、発売直後は販売会社の担当者(医薬情報担当者:MR)が、副作用が出ていないか、適切な使用が行われているかに関して聞いて回るという規制ができました。

↓当ブログ内の医薬情報担当者記事も参考にしてください。

最後に

非常にまれな副作用は第二相試験から第三相試験では見つからない可能性があります。

それならみつかる程度の数でやればいいという意見も出ますが、そうすると新薬が市場にでることが遅れ、治るべき人もなくなってしまう可能性も高くなります。

政府や製薬会社はひとまとまりで判断しますが、薬を飲む患者は効果が歩かないか、副作用がでるかでないかの一発勝負になることから、せめて新薬の評価がある程度固まってから使う事をお勧めします



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