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週末、一緒に少年サッカーのコーチをしている友人が痛そうに足を引きずりながら練習場にやってきました。
あの”時限爆弾”が爆発したのです。
それは、「風が吹いても痛いといわれる」痛風発作です。
これまでにも何度か発作を繰り返しているので、発作の前兆と思われる関節のムズムズ感を発作の前夜に感じたそうです。
痛みのある部分を見せてもらうと右足の親指の付け根周辺が、赤紫色に痛々しく腫れあがっていました。

今回は、この痛風についてお話しさせていただきます。
もくじ
🔷近代日本の食生活
戦前の日本には、痛風の患者さんは多くなかったと言われています。
戦後も1980年頃の日本の食生活は、栄養バランスに優れていて世界から良いモデルケースとして注目されていました。
しかし、それから40年の間に日本の食生活は大きく変化したといえます。
主食の米類が半減し、動物性食品や加工食品の摂取が一気に増えたのです。
エネルギー摂取量には変化がありませんが、タンパク質、脂質の割合が増えたのです。
これにより、生活習慣病(肥満・糖尿病・脂質異常・高血圧)が日本でも急増します。
この食生活の変化は、痛風も例外ではありません。
🔷痛風について
日本国内では、成人男性の20%以上が痛風予備軍(高尿酸血症)と言われています。
少し前までは、中高年の男性に多いイメージがありましたが、最近では20~30代の若い男性の痛風も目立ってきています。
では、どのようにして痛風が起きるのでしょうか?
1.高尿酸血症と痛風
はじめに高尿酸血症と痛風について簡単に説明します。
高尿酸血症とは、血中の尿酸の値が7㎎/dl以上の場合をいいます。
(血液100mlの中に尿酸が7㎎以上含まれていること)
健診の血液検査では、ほぼ必須項目になっていますので自分の数値を一度確認してみて下さい。
痛風は、尿酸の値が高い状態が5年以上続いていて、激痛などの発作が突然現れた場合をいいます。

2.症状と特徴
血液中の過剰な尿酸は、老廃物となって関節部分に蓄積して尿酸塩結晶となります。
この結晶が剥がれ落ちた時に、白血球が異物と認識して処理しようと働きます。
その時に炎症が起きて痛風発作(急性関節炎)を引き起こすのです。
発作の痛みは、しばらくすると治まります。
ただ、この発作を繰り返す場合は、血中の尿酸値が高値のままということを意味します。
何も治療せずに放っておくと、発作が起きるたびに関節の腫れなどがひどくなり、痛風腎、腎結石などの合併症を引き起こす可能性も高くなっていくのです。
3.原因
痛風の前段階の高尿酸血症となるには、様々な原因が考えられます。
暴飲暴食、肥満、激しい運動、アルコールの過剰摂取、水分補給不足、腎臓の尿酸排出機能が低下などです。
🔷検査と診断
痛風の検査には、様々な検査があります
ここでは、代表的な検査について紹介していきます。
1.血液検査(尿酸)
痛風の検査では、痛風の前の高尿酸血症かどうかは1つの判断基準となります。
高尿酸血症かどうかは、血液検査の尿酸値を調べることで分かります。
基準値は、男女ともに7.0㎎/dl以下です。
この数値を超えてしまった場合、高尿酸血症となります。
ただし、痛風発作中の尿酸値は低くなる傾向があるため注意が必要です。

2.尿検査(尿酸クリアランス検査)
尿中の尿酸を測定する検査です。
尿検査と一緒に血液検査をおこなうことで、正常を含めた4つのタイプに振りわけます。
- 正常
- 産生過剰型:全体の1割
- 混合型:全体の約3割(産生過剰と排泄低下の混合)
- 排泄低下型:全体の6割
タイプによって治療法(使用薬)が異なるため、この検査は必ず行います。
3.超音波検査
痛風の起きている関節を超音波で見ることで、炎症の程度を把握できます。
また、同時に腎臓も検査して合併症である腎結石や尿管結石の有無も確認します。
🔷治療
痛風の治療法のメインは、薬物療法と生活習慣雄改善になります。

1.高尿酸血症の治療
生活習慣の改善が第一選択となります。
暴飲暴食の改善、プリンタ体を多く含む食品を控える、水分をよく取る、アルコールの過剰摂取をやめる、激しい運動を控えるなどです。
2.痛風発作時の治療
非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服、局所麻酔入ステロイド剤を関節内注入します。
就寝時は、患部を心臓より高くして冷やしておくと痛みが軽減できます。
3.痛風の痛みが消失後
痛みが取れてから2週間以上経過してから尿酸降下薬を内服します。
4.発作の前兆症状
コルヒチンを投与します。
この薬は、発作前に投与することで白血球(好中球)の働きを抑制して関節炎(痛風発作)を起きにくくします。
治療で一番注意しなくてはいけないのは、関節炎(痛風発作)が起きないからといって、薬を勝手に止めてはいけません。
再発作を引き起こすリスクが大きくなってしまうからです。
🔷まとめ
健康診断などで尿酸値が高いと指摘されたら、それは痛風のイエローカードです。
初期段階では全く症状がないため、軽く考えてしまう傾向があります。
しかし、それは「嵐の前の静けさ」に過ぎません。
予防も兼ねて、早めの受診と生活習慣の改善をお勧めします。
また、痛風発作が起きても、時間が経てば痛みもなくなるので放置しておく方も多く見られます。
痛風は生活習慣病とも密接に関係しているため、様々な合併症を引き起こす危険性があります。
痛風の放置によって、心筋梗塞や脳梗塞などの命の危険に繋がることもないとはいえません。
痛風の放置によって痛風の重篤化や合併症を併発すれば、医療費(薬代・治療費など)の負担が家計に重くのしかかってきます。
疾患の度合いが高くなればなるほど医療費は徐々に高騰していくのです。
早めの予防で、合併症とお金の負担を少しでも解消していきましょう。

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ライター名(ランサーズ名):まさざね君
<経 歴>
臨床検査技師の国家資格を2000年に所得。
臨床経験は、総合病院で15年、癌・肺疾患専門病院で5年目になります。
臨床現場では、健診から救急患者まで生理検査を中心に従事しています。
臨床検査技師は、血液などの検査値だけでなく、細菌培養、画像診断、細胞や組織などについても検査して報告しています。
これらの検査を通して、病気の原因、検査、治療、予防など分かり易くお伝えしていきます。
気になるは病気について、少しでもお役に立てれば幸いです。
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