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秋になると気分が落ち込むという方は多いようですが、それはもしかしたら心の病気かもしれません。
精神疾患というとあまりいいイメージがわきませんが、実際には様々な病気が存在します。統合失調症、うつ病、気分障害など耳にしたことがあるかもしれません。
疾患によっては早めの気づきや対処で、軽減できることもあるので、知識の一つとして知っておくことは大切です。

では実際に、精神疾患にはどのような分類や種類が存在するのでしょうか?
代表的な精神疾患の分類は、世界保健機関(WHO)の分類で、ICD-10(質病及び関連保険問題の国際統計分類)というものが存在します。 様々な病気の指針となる分類表のようなものです。(ほかにも、DSMというアメリカ精神医学会が出版している、精神障害の診断のための共通言語と標準的な基準を示したものが使われる場合もあります。)
その分類の中で、精神疾患にあたる分類は「精神及び行動の障害」のコードF00-F90の中に存在しています。主な項目は以下のとうりです。
- 器質性精神障害
- 精神作用物質使用による精神および行動の障害
- 統合失調症および妄想障害
- 気分障害
- 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
- 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
- 成人の人格および行動障害
- 知的障害
- 心理的発達障害
- 小児期の行動及び情緒の障害
- 詳細不明の精神障害
大きく分けてみるとこのように分類され、さらに細かく分けられています。
近年増加傾向にある精神疾患のなかで、特に大幅に増加しているのが、統合失調症、気分障害、認知症(厚生労働省の調べ)です。最近よく耳にする病気ではないでしょうか?でも、具体的にどんな症状なのでしょうか?具体的に見ていきましょう。

統合失調症 (統合失調症および妄想障害に分類)
およそ100人に1人弱かかる病気であるといわれています。
症状としては、幻覚や妄想、思考障害という症状が見られます。そのような症状が見られることにより、人との交流や社会生活が困難になる生活面への障害や異常な感覚から自身の症状を認識することが困難な病識への障害が見られます。
〇初期症状〇
・眠れない ←気づきにくい症状
・イライラする
・集中できない
〇陽性症状〇
・幻聴(誰かの声が聞こえる) ←特徴的な症状
・幻覚(実際にはないものがあるように感じる)
・妄想(非現実的なことを考え現実だと考える。)
・行動異常
・思考の障害(まとまりのない会話)
〇陰性症状〇
・感覚鈍麻ー痛みを感じにくい。感覚が鈍い。
・感情喪失-感情変化が乏しい
・意欲低下
〇治療〇
主に「抗精神病薬」という薬により、過剰に活動しているドーパミン神経に働きかけることによって、活動を整え症状を安定させます。薬による治療に合わせて、精神科のリハビリテーションによる治療を行うことが効果的です。家族や周りの配慮などの、環境設定も必要です。
気分障害 (気分・感情障害に分類)
躁病、うつ病、双極性障害(躁うつ病)が存在します。
・うつ病は「気分が落ち込む」「憂うつ」という症状が継続して現れ、ある程度重症化したものをいいます。身体因性、内因性、心因性などの分類があり、主にうつ病と一般的に失れているものは心因性です。薬物治療をしなくても、一定の期間でよくなる場合もありますが、症状によっては(自殺などの危険性がある場合)早めの治療が大切です。
・うつ病症状がみられながらも、極端に調子がよくなって活発になる時期がある場合は、双極性障害(躁うつ病)かもしれません。
ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態をくりかえします。躁状態では気分がよいので、本人には病気の自覚がありません。しかし、うつ病だけの治療では双極性障害を悪化させてしまうことがあります。周りの気づきから、早めに治療を行うことが大切です。
〇治療〇
休養・精神療法・薬物療法があります。
薬物療法がのぞましいと判断された場合は、セロトニンやノルアドレナリンに作用する、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ剤)などの抗うつ薬が使われることがあります。
双極性障害(躁うつ病)の場合には、気分安定薬と呼ばれる薬が有効です。
※医師との相談の上、自分に合った薬を服用することが大切です。
強迫性障害(成人の人格および行動障害に分類)
広場恐怖症、社会恐怖症、恐怖症性不安障害などが含まれるもので、自分の意志とは反して、不安な気持ちやおそれの気持ちやイメージを抱き、無視や抑制しようと思いつつも、頭から不安が離れず回避するために行動してしまう。過剰な行動であることやばかばかしいと自信で認識しているものの繰り返し行ってしまう。
例)手にばい菌がついていることを不安に感じ、手を洗う行為を何回も繰り返し行うことや、鍵のかけ忘れを心配し何度も鍵のチェックを必要以上に行うなど。。
セロトニンやドーパミンなどを分泌する神経系の異常によるものとの考えもあるが、特異的な原因は不明。
〇治療〇
SSRI(フルボキサミン、パロキセチン)を中心とした薬物療法と認知行動療法。認知行動療法では、曝露反応妨害法が用いられることが多く、患者の不安を感じるものをあえて直面させる行動療法。不安を伴わせる低い刺激から段階的に体験させ、不安を軽減させるために行う異常行為を行わせないことで、強迫観念の緩和を図る。
摂食障害(生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群に分類)
極端な摂食制限や過度な食事の摂取などを行うことや繰り返すことにより、身体面・精神面に深刻な問題を及ぼす病気のこと。
〇神経性無食欲症
食べることが出来ない。過度な摂食制限をおこなう。拒食症。若い女性に多い。
〇神経性大食症
食欲をコントロールできず、短時間で食べ物を大量に摂食し、その後、体重増がを防ぐために意識的に嘔吐や下剤などで排出したりすることを繰り返し行う。過食症。
〇治療〇
心のケアが重要であるため、家族をはじめ、医師、栄養士、心理士などチームで治療を行ていくことが重要。
広汎性発達障害(心理的発達の障害に分類)
アスペルガー症候群や自閉症、レット症候群、小児崩壊性障害などを含む発達障害の総称。対人関係及びコミュニケーション能力の障害やこだわりの強さなどが特徴的にみらる障害。
〇アスペルガー症候群
言葉の遅れはないものの、社会性の質的障害、コミュニケーションの質的障害、興味や活動の偏りが見られる。
〇自閉症
社会性発達の質的障害、コミュニケーションの質的障害、興味や活動の方よりが見られる。3歳頃までに判断されることが多い。言語面の発達の遅れや精神遅滞が見られることもある。
〇レット症候群
生後6か月くらいまでは一見正常に見えますが、それ以降に、体が柔らかい、四つ這いや歩行などの運動の遅れ、視線が合いにくいなどの自閉症状が出る。多くは1歳6か月から3歳までに、今まで使っていた手の運動が上手にできなくなり、手を合わせる手もみなどの、特有な手の常同運動が出現します。多くの場合女児に発症する。難病に指定されている。
〇小児崩壊性障害
2歳ごろまでは正常な心身発達が見られるが、ある時点から急激に退行していくのが特徴です。対人関係の問題やこだわりなど、自閉症と同様の症状が現れるとされ、10歳以前に発症した場合にのみ診断される。

聞いたことのある精神疾患はありましたか?このように世の中には、小児から成人まで様々な精神疾患が存在し、分類分けされています。
精神疾患のほとんどは、自力で治すことは困難です。時間の経過とともに症状が悪化するものや、誰かのサポートなしには治療できないこともあります。もし、何か心の状態で不安を感じることがある場合は、信頼できる人に相談するか、精神科の受診を考えることが必要かもしれません。

ライター名(ランサーズ名):Lin Let
<経 歴>
2012年に言語聴覚士資格を取得し、リハビリテーション病院回復期で2年、訪問外来リハをおこなう医院で3年の臨床経験があります。
臨床現場では、主に高次脳機能障害、摂食嚥下障害、構音障害などの疾患を持つ方を対象にリハビリを行っていました。
現在は海外で日本語教師などの仕事を行いながらライターをしています。
言語聴覚士がかかわる分野での疾患や体の機能などについて、わかりやすく説明できるように心がけています。
生活に役立つ情報を提供できれば幸いです。
カテゴリー:精神, 言語聴覚士【精神・まとめ】