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もくじ
グリオーマとは
グリオーマ(神経膠腫)は、原発性悪性脳腫瘍です。
悪性度は、レベル1から4に分けられます。
脳に染み込むように広がるのが、特徴です。
手術で全摘出は難しく、治療は、手術、放射線治療、化学療法です。
腫瘍が発生した部位によりますが、
頭痛、嘔吐、意識障害、歩行障害、ふらつきが、主な症状です。

健康優良児が、グリオーマに
診察室の恐怖
健康優良児で生まれたわたしは、入院したことがない健康な子供でした。
17才のとき受けた健康診断で、
「何か気になることはありませんか」と診察医に聞かれました。
長い時間本を読んでいると、頭に違和感を感じることがある、と答えました。
精神科に回され、最後はCT検査に回されました。
CT画像に、卵くらいの大きさ、白い影が写っていました。
いきなり脳腫瘍と言われ、頭は真っ白になりました。
すぐに、紹介された大学病院に行きました。
造影剤のCT検査を受けました。(現在は、MRI検査です。)
検査後の診察室で、
「すぐに手術をしないと、手遅れになります」と、医師に言われました。
母もわたしも、脳腫瘍のことなど何もわかりません。
考える余裕がないまま、手術を受けることになりました。
恐怖だけが残り、医師の言葉は、トラウマになりました。

手術と術後の経過
腫瘍は右脳の小脳にあり、脳幹に密着していました。
全摘出はできず、腫瘍は3分の1が残りました。
術後、足と手の神経の感覚に問題はありません。
わたしの顔の前に、医師が人差し指を立てました。
もう一方の指を動かして、視野をチェックします。
そのとき初めて、視野の半分、左側が見えないことに気が付きました。半盲です。
細胞診の結果は、悪性腫瘍です。
グリオーマという言葉を聞いた記憶はありません。
2年後の検査で、残った脳腫瘍は固まっていると診断されました。
その後、定期検査はありません。
高校卒業後、大学生活を送り、教員の仕事につきました。

ジワジワと大きくなるグリオーマ
風邪と思ったら
最初の手術から10年後、風邪を引いて病院に行きました。
脳腫瘍を忘れた生活をしていましたが、
なぜか、「頭のCT検査してもらえますか」と、わたしは医師に頼みました。
診察室に入ると、何人も医師が立っていて、
大きな腫瘍が写った写真を見ています。
「早く手術をしないと手遅れになります。」と言われました。
一度経験したことです。わたしは冷静でした。

患者の意思
脳腫瘍の手術は後遺症のリスクがあります。
手術の前に、
様々な後遺症の可能性が書かれた承諾書に、サインをする必要があります。
わたしは毎日通勤をして、症状のない、普通の生活を送っていました。
後遺症を考えると、不安になりました。すぐに手術を受ける決断ができません。
症状出るまで手術を待つことにしました。
定期的に診察を受けること、色んな病院で検査を受けることを条件に、
家族は、わたしの決断を受け入れました。

検査と病院選び
地元の病院で、
「手術後3週間すれば、その後すぐに仕事に復帰できるでしょう」
と言われました。
東京の病院で、
難しい手術で長い入院になるから、地元の病院で手術をするように、
勧められました。
他の病院で、難しい手術だから当院ではできない、と言われました。
病院によって、言われることが違って、戸惑いました。
わたしの腫瘍は脳の奥にあり、脳幹に密着しています。
手術が難しいケースであることを、痛感しました。

2回目の手術へ
3ヶ月毎にMRI検査を受け、仕事を続けて2年と半年後、
意識を失う症状が出始めました。
医師である友人の勧めで、東京の病院で診察を受けました。
「わたしが執刀医に望むのは、手術の技術だけでなく信頼できる人格です」
自分の思いを診察医に伝えました。大学病院の医師を紹介されました。
飛行機で移動、家から病院まで半日かかる遠方でした。
難しい手術を決断するためです。ためらいはありません。
有名な医師でしたが、表情は穏やかです。
わたしの状態について、わかりやすく丁重に説明してくれました。
「すぐに手術をしないと手遅れになる」という言葉はありません。
この先生におまかせしよう。不安が消えて信頼感が湧きました。
1999年、わたしの腫瘍はソフトボールの大きさでした。脳内のようすがモニターに映し出される手術が、2回に分けて行われました。結果は全摘出でした。
細胞診の結果はグリオーマ(神経膠腫)、種類はアストロサイトーマ、
悪性度はレベル2です。
術後と経過
手術後意識が戻った後も、頭を動かさないでベッドに寝たままです。
少しずつベッドの角度を上げていきますが、
1週間トイレに行くことができません。ベッド生活は、苦痛でした。
軽い幻覚妄想状態になりました。記憶は幼少期に戻りました。
母親のことは覚えていますが、「にいちゃん」と夫を呼び続けました。
記憶と思考が普通に戻ったのは、手術から2週間後です。

退院後の経過
道を歩く、階段を登るなど、体の動きとバランスが難しく、
毎日公園で散歩をする療養生活を送りました。
半年で、普通の日常生活ができるようになりました。
今は、2年毎に、投影画像を病院に送ってチェックを受けてます。
最後の術から20年経ちますが、再発はありません。
手術前に難聴になり、手術から4年後に失聴になりました。
失聴の原因は不明です。4年後に後遺症が発症することもあるそうです。
人工内耳を装着し、現在は、通話、会話、普通の日常生活を送っています。
悪性脳腫瘍で3回手術をしたわたしの経験を聞いた人は、
「信じられない、そんなふうに見えない」と驚きます。

同じ病気にかかっている人へのメッセージ
悪性脳腫瘍と言われたら、頭に爆弾を抱えているような気がして、
恐怖で戸惑うと思います。
なんで自分が、なんでうちの家族が悪性脳腫瘍に、と自暴自棄にならないでください。
悪性脳腫瘍は重い病気ですが、色々なケースがあります。
病院まかせにしないで、自分の病気・状態について調べて、
十分理解してください。
後遺症で障害が残ることもありますが、色々なサポートが受けられます。
解決方法がないとあきらめないで、根気よく、周囲のサポートを受けながら、自分が納得する方法を探してください。

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