【臨床心理士+社労士監修】withコロナと摂食障害(事例あり)

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摂食障害とは

摂食障害とは、一言でいえば、“食行動の異常”です。

限界になるまで食べ、隠れて吐く。

生命維持のぎりぎりの体重まで食べ物を制限することもあります。

原因は母子関係、社会的要因、個人の物事の捉え方など、一つに絞られるわけではありません。

いろいろな要因が複雑に絡み合っていることもあります。

しかし、いずれにしてもこの“食行動の異常”には「心の問題」とすり替えられています。

女性の場合

摂食障害の男女比は、1:9です。女性が圧倒的に多いといえます。

女性の摂食障害の原因はよく“痩せ願望”といわれます。

自分に自信のない女性、ありのままの自分でよい、と思えない女性はモデルのような体系になれば、自信がつく、ととらわれた考えになり、結果、摂食障害を発症することがあります。

自信のなさをダイエットにすり替えるのです。

マスメディアで映されるモデルらはスリムです。

画面を通すと、対象物は膨張してみえますから、実物の人間はもっとやせています。

しかし、売れている芸能人などは、実は栄養士やトレーナーがつき、スリムな体と健康の両方を維持していることが多いのです。

女性の摂食障害の原因の一つに母子関係も挙げられます。

家の中で、母親が不安定な心理状態な場合、家庭が子供にとっていつでもほっとできる安全基地になりません。

また、家の中で子供は自分をさらけだすどころか、親の面倒をみるいい子、として「子供が母親の面倒をみる」という逆転の立場に立たされることもあります。

よくできたかわいい娘、が実は母親との関係に問題を抱え、それを摂食障害という症状にすりかえていることもあります。

加えて、日本の女性は常に過酷な立場にあります。

高度経済成長時代、男性を24時間、フル稼働させるためには、オフィスで働く男性をいつも支える人、つまり専業主婦が必要でした。

扶養、という制度の元、家事と育児は女性担当。

ここに平成12年に介護保険法ができます。

家で介護を担えるのは、男性が勤め人の場合、健康な女性です。

さらに女性活躍、と仕事を推奨される時代になりました。

家事、育児、介護、それに仕事。これにすべて答えるのは困難であるといえます。

子供のころからいい子で、従順で、自分よりも他人優先・・。

そんな大人から見た優等生が、社会に出ても、なお期待にこたえ続ければ、女性としての生きづらさを異常な食行動にすり替えることもあるでしょう。

摂食障害が一生の病気といわれるゆえんかもしれません。

男性の場合

摂食障害の男性の比率は1割です。

女性の場合と同じように、社会情勢が反映することもあります。

男性でもアイドルタレントのようにスリムさを求められる場合もあります。

痩せなければ、という強迫的な行動が摂食障害となって症状を呈することも。

また、この時代のトピックとして挙げられるのがASD(自閉症スペクトラム)です。

摂食障害の患者の2、3割がASDだった、という調査結果もあります。

ASDは発達障害の一つです。

アメリカ精神医学界の診断基準DSM5によると、発達障害は、

①ASD(自閉症スペクトラム)

②ADHD(注意欠陥多動症)

③LD(学習障害)

となります。

ASDにはコミュニケーション障害などがあります。

そして、ASDは男性が女性に比べ4,5倍です。

整理すれば、

  • コミュニケーション障害などが出やすいASDは男性が多い
  • ASDの男性は摂食障害になる傾向がある

となります。

男性の摂食障害の原因にASDを考慮することは大切です。

治療法

摂食障害の治療は困難が予想されます。

まず、摂食障害者が治療に消極的です。

体重が極限まで減少していることもありますから、病院との連携は必要でしょう。

また、自信がなく治療者に依存的になってしまうことなどを理解して関われる臨床心理士・公認心理師とのカウンセリングが合う患者もいるでしょう。

また、当事者による集団療法も効果的といわれています。

ありのままの自分でよい、という安全安心な環境によって人にうまく頼る方法や自分を開示すること、他人の評価で生きていかなくてもよい、ということなどが体感できます。

さらに、ASDなどの発達障害を考えるとき、重要になるのことは周囲がどのように関わるか、ということです。

発達障害で最も重要なことは「①コミュニケーション障害などの特性がある+②生活に困る」という二つの要素がそろって診断される、ということです。

例えば、ASDでコミュニケーション障害などがあっても、生活に困らなければ発達障害ではありません。

日本はかつて農業大国でした。

そして、その後は製造業の時代でした。

そのときに職人さんの中には挨拶一つしない人もいたはずです。

しかし、その職人さんたちが「発達障害」といわれることはなかったはずです。

ちょっと変わり者、程度だったのではないでしょうか?

オフィスワーク中心となると、コミュニケーションが重要視され、生きづらい人が増えました。

しかし、ここにきて多様性が推奨され、さらにコロナでいろいろな働き方、生き方が可能となりました。

家にいながらITで会議をし、副業で食べ物の宅配をすることがあっという間に常識となりました。

こうでならなければならない」ととらわれている摂食障害の人には周囲が自分の正義を押し付けず

「時代が変った。君のやりかたをリスペクトする」

というメッセージを出すことが重要です。

具体例(症例)

ある20代の女性はその会社でいわゆる「困った存在」でした。

アミューズメント施設などを手掛ける会社ですが、女性は団取りが悪く、時間通り、指示通りができません。

字を書くこともおぼつかず、発達の問題だけでなく、ひょっとしたら知的な問題もあったのかもしれません。

周囲からは「なぜ辞めさせないのか?」という非難の声ばかりです。

しかし、イラストがプロ並みにうまく、性格は素直でお客さんには抜群の受けがいい人です。

「すぐに辞めさせるわけにはいかない」

と頭を抱える社長がぽろりと私に、

「仕事中によくいなくなります。トイレにいるようですが」

と言います。

保健師が常駐している企業だったので、すぐに聞きとりをしてもらうと、食べては吐いてを繰り返していた、といいます。

病院に行くことを促すと、実はすでに心療内科にかかっていました。

保健師、人事と女性で受診をすると、医師はくり返しカウンセリングを勧めていた、ということ。

しかし、女性は「自費診療のお金がない。一人暮らしで誰にも頼れない。正社員を続けるしかない」と言います。

正社員のままでは周囲も納得しません。

社長は社会保険が条件なく保障される労働時間(週30時間)のパートタイムとし、また、イラストを描く仕事を副業として許しました。

また、彼女と一緒に仕事をすることをいやがる人がいるならば、テレワークで対面させないこと。

双方のストレスを下げ、生活保障をしながら、イラストで少しずつ収入を得て自信をあげる。

また、保健師との面談を週1など定期的に行い、病院のカウンセリングで「悩みを話してもいい」環境をつくりました。

摂食障害の治療は始まったばかりですが、女性は

「仕事があるからお正月をアパートで過ごせます」

と笑顔でした。



カテゴリー:その他・予防法, 社会保険労務士【労働環境問題】, 精神, 臨床心理士【摂食障害】

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