【整形外科医監修】が教える「骨折」について

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骨折とは

骨は人体を内側から支える頑丈な組織で、若い健康な人では特に、体重の数倍の重量を支えることもできる丈夫な組織です。

この丈夫な骨にその強度以上の外力が加わることにより骨折が起こります。

骨の構造としては丈夫な周囲の皮質骨と中身の海綿骨からなっています。

骨折の検査としては主にレントゲンを使用します。

レントゲンでは骨の皮質がずれて線が入って見えます。

明らかにずれがあれば容易にレントゲンでもわかりますが、ほとんどずれがないものや、骨折線が横断しきっていないもの(不全骨折)は患者さんにはいわゆる「ヒビ」としてお伝えしますが、これはあくまで骨折です。

レントゲンではわかりづらい場合、骨折線の有無をCTを使って調べることもあります。

それでもわからない場合やCTでも映らないほど軽微な骨折を不顕性骨折といい、MRIなどさらに追加の検査を要することがあります。

骨折の起こる仕組み

通常の骨折の場合、転倒や打撲、捻り動作などによって骨の強度以上が加わったときに骨折を生じます(転倒して手をついた時の橈骨遠位端骨折や、転倒して尻もちをついた時の大腿骨近位部骨折や、腰椎圧迫骨折など)。

あるいは、打撲部から離れた部位においても、骨や人体を通じて構造的に強度の弱い部位においても骨折が起きる可能性があります(転倒して手をついた力が前腕・肘・上腕を伝って生じた鎖骨骨折など)。

加齢(特に閉経後の女性)や腎不全などの内科疾患、ステロイドなどの内服薬などによって骨粗鬆症を発症することがあり、骨の強度が弱まり、より軽微な外力で骨折をしてしまう可能性があります。

高齢者では、ある日の起床時から腰痛があり病院に行ってみると腰椎圧迫骨折していた、といういわゆる「いつの間にか骨折」が発生することがあります。

その他、癌などの転移が大腿骨近位部(鼠径部のあたり)にあった場合、ただ歩いただけなどもっと軽微な外力によって骨折が生じることがあります。

骨折に関する疫学

年齢が若く、活動性も高いうちは、転倒、打撲、転落・墜落、捻りなどによる比較的高エネルギーの外力が加わった部分の骨折が多いです。

鎖骨骨折、肘頭骨折、尺骨骨幹部骨折、膝蓋骨骨折、脛骨骨幹部骨折、足関節内果・外果骨折、胸腰椎破裂骨折などがあげられます。

その他、前述のとおり、骨の強度は年齢や合併症、内服薬などによって徐々に低下していきます。

特に閉経後の女性は、女性ホルモンの減少により閉経後骨粗鬆症をきたすことがあります。

骨粗鬆症(骨密度が若年者に比べると70%以下)になると脊椎圧迫骨折(頚椎、胸椎、腰椎)、橈骨遠位端骨折、大腿骨近位部骨折、といった脆弱性骨折の発生頻度が高くなります。

最も多いのは高齢女性の脊椎骨折といわれ、70代前半の女性で25%程度、80代前半の女性で43%程度に脊椎椎体の変形があったという報告もあります。

骨折の治療方法

骨折の治療は大まかに、

・キャスト(いわゆるギプス)とシーネ(金属や特殊なガラス繊維による当て木)固定いった保存治療

・プレートや髄内釘、ワイヤーといった金属を用いて骨折部を固定する手術治療

以上2つの方法があります。

保存治療

・比較的ずれの少ない骨折の場合

・手術治療が困難な部位(肋骨など)、ずれてはいるものの年齢や合併症、もともとの活動性が低く手術のリスク(全身麻酔はかけるだけで高齢者にとってかなりの負担です)が高いと判断される場合

に選択されます。

シーネは患部を支えるように当てる板状の装具で、テープ材や包帯で固定します。

一方、キャストは水でぬらすと重合反応を起こして熱を出しながら固まる素材で、柔らかいうちに全周性に巻いて固定します。

固定力はギプスのほうが高く治療効果は高いのです。

しかし、骨折後に患部の腫脹が増悪しているうちに固定をしてしまうと、患部が圧迫、最悪の場合コンパートメント症候群にいたり、末端部に血流が行き届かなくなる可能性があります。

手術治療の場合、ズレを整復し金属を当てて固定します。

プレートや髄内釘、ワイヤーといった金属の使い分けは骨折の形態やそれぞれの部位によってある程度標準的な治療法が確立しており、我々整形外科医が判断します。

保存治療、手術治療いずれの場合も、3~4週間で線維性の安定性が得られ、骨癒合が始まります。

おおよそ3カ月をかけて、骨癒合が完了します。

骨折の症例

最後に実際の症例を供覧します。


70代女性、施設利用者の患者さん。

施設内で転倒し受傷による救急要請がありました。

搬送された病院で大腿骨転子部骨折の診断がつきました。

受傷時のレントゲン正面像と側面像、および3D -CTの正面像です。
左大腿骨の転子部で骨折しています。

大きな既往なく可及的速やかに手術を予定し、翌日、観血的骨接合術を施行しました。

術後の正面像と側面像です。
観血的骨接合術により髄腔内に髄内釘が留置されています。

その翌日からリハビリを開始しました。

・術後2週で歩行器安定。転院調整開始。

・術後3週で転院。

・術後8週で転院先病院から施設へ退院。

退院後外来フォロー開始。

術後3か月時受診で骨癒合完了を確認しました。


以上が症例になります。

記事をお読みいただきありがとうございました。

ライター名(クラウドワークス名):北海道在住 整形外科医

<経 歴>

北海道の勤務医、医師5年目、整形外科専攻です。



カテゴリー:骨折

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