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もくじ
葛根湯の名前の由来
葛根湯は、葛根という生薬が入った漢方薬です。
最後についている湯というのは、生薬をぐつぐつ煮て、それを飲んで用いるという漢方薬ということです。
現在はエキス製剤といってその水分を蒸発させて乾燥させたものが販売されています。
葛根には、発汗、解熱などの作用があります。葛根湯はそのもととなっている別の漢方薬がありまして、桂枝湯というものです。
桂枝湯は
・桂枝
・芍薬
・大棗
・生姜
・甘草
という5つの生薬からなっていています。
桂枝湯は風邪の基本となる処方で、この桂枝湯にいろいろな生薬を足したり引いたりして、各種の風邪に用いる漢方薬が作られます。
葛根湯は、桂枝湯に葛根と麻黄を加えたものになります。
葛根湯はどのようなときに使うか
漢方薬は西洋医学で用いるお薬と異なり、使用する目的が複数あることが多いです。
また、同じ目的で治療する場合でも、体質によって異なる漢方薬を用いることがあります。
葛根湯の場合は、体質としては、がっちりとして見た目が丈夫なタイプがよいとされています。
用いられる病状としては、風邪、肩こり、扁桃炎、乳腺炎、下痢、副鼻腔炎や中耳炎などが代表的です。

・風邪に用いる場合、もっとも効果が高いとされている病状が昔からの伝統的な書籍である傷寒論(中国の伝統医学書で著者は張仲景という人です。3世紀ごろにできました)に記載されています。
病気の初期で、寒気があって、汗はまだかいてなくて、うなじのあたりがこわばるというときです。
・上半身の化膿性の病状で効果を発揮することが多く、結膜炎、扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、リンパ腺炎、乳腺炎などがそれに該当します。
・肩こりにもよく使用されるお薬です。上半身の筋肉のコリをほぐす作用があると考えられています。
・これはあまり知られていませんが、急性腸炎や蕁麻疹、上半身の神経痛にもちいられることがあります。
葛根湯に含まれる生薬
葛根4g、麻黄3g、大棗3g、桂枝2g、芍薬2g、生姜2g、甘草2g

葛根、麻黄、桂枝、生姜は発汗解熱作用、葛根、大棗、芍薬、甘草は筋肉を和らげる、
葛根湯の特徴
葛根湯は多くの漢方薬のなかで、解表剤という分類の漢方薬になります。
解表剤というのは分かりにくい言葉ですね。
昔まだ細菌やウイルスなどの微生物が知られていない時代、風邪はなにか悪いものが体の外側から中に進んでいって症状が出ると考えられていました。
そして、風邪の初期症状である寒気や鳥肌、震え、関節痛などは、その悪いものがまさに体の表面から侵入しようとしているときであると考えました。
この体の外側の表面のあたりの不調を解決するという漢方薬が解表剤ということになります。
微生物が発見された現在の医学からみても、なかなか鋭い考えや解釈だとおもいます。
このため、葛根湯は、風邪や扁桃炎、乳腺炎、中耳炎、副鼻腔炎などで、寒気がして、まだ汗をかいていない初期のころに用いる漢方薬と考えるとよいです。
同じ風邪でももっと症状が強いときには麻黄湯、体が虚弱な人の場合には桂枝湯や麻黄附子細辛湯が用いられます。
実際に使用した症例
Aさん:30台男性、がっちりした体格

Aさんは仕事をしている最中に寒気と少しだるい感じがしました。
そのまま様子をみていると、寒気は強くなり、関節が痛くなり、首の後ろのあたりがこわばる感じがしてきました。
熱がありそうで、はかってみると38度になっていました。
Aさんは早めに病院に行くことにしました。
病院ではAさんの症状を聞いて、診察しました。診察では、脈が触るとすぐわかって強く、お腹はさわるとがっちりしていて、舌は湿っていて周りは赤くて中央は白い苔が少しついていました。(これらは葛根湯が適していると思われる診察結果です)症状と診察から医師は葛根湯を処方することにしました。
Aさんが葛根湯を服用して数時間したころ、寒気がなくなり体が暖かくなりました。
熱は39度ですが、だるさがとれてきました。
その後汗をかいて熱がさがってくると、体調はよくなっていました。
まとめ
葛根湯は漢方薬の中でもっとも有名で、漢方薬しか治療手段がなかった江戸時代では、葛根湯の使い方は子供でも知っていたそうです。
ところが、現代ではその名称はとてもよく知られていますが、その詳しい使い方や作用の仕方はあまり知られていません。
丈夫でガッチリしたタイプの体質の人が使うことが基本で、体型が華奢で風邪をひきやすい人などは適していません。
風邪っぽい症状につかうときは、寒気やだるさがではじめた初期であって、うなじや背中あたりのこわばりがあるときが適しています。
現代医学の病名という観点から考えると、風邪、扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、乳腺炎などの病気の時に使うとよいです。
コロナウイルス感染症であってもこのような風邪の症状があるときには適していると思います。
この伝統的な使い方のほかに、うなじのあたりのこわばりがあって、汗をかいておらず、丈夫でガッチリした体格の人の諸症状、例えば肩こり、急性胃腸炎、蕁麻疹、上半身の神経痛などに使われるということを知っておくとよいです。
