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年齢を重ねるにつれて気になってくるお口のトラブル。
よくCMなどで「歯槽膿漏」という言葉を耳にすることはありませんか?
自分も歯槽膿漏なのではないかと不安に思ったり、そもそも歯槽膿漏ってなに?と思う方も多いのではないでしょうか。
歯槽膿漏とは何か、原因や治療法などこの記事で詳しく説明していきたいと思います。
歯槽膿漏とは?
歯槽膿漏とは歯周病とも言い、歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けてしまい、歯茎に出血などの炎症が出たり、歯がグラグラ揺れてきて最終的には抜けてしまう恐れがある怖い疾患です。

歯周病が進行し重度になってくると膿がでてきたりするのですが、その症状のことを歯槽膿漏といいます。
よく歯肉炎や、歯周病といろいろな言葉がありますが、歯槽膿漏=歯周病と思っていただいて大丈夫です。
原因
歯槽膿漏(歯周病)の原因は清掃不良でできる歯垢や歯石などの汚れです。
歯垢や歯石には虫歯菌や歯周病菌などの菌がたくさんいます。
その数は1g辺り1000億個以上と言われています。
歯垢はネバネバとした白い塊のことをいい、個人差はありますが約4~8時間程で形成されます。
歯垢がお口の中に残っていると唾液中のカルシウム成分などによって約2週間程かけて固く石のようになります。
歯垢が石のように固くなったものを歯石といいます。
これらの汚れが歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の中にまで入り込み、歯垢や歯石の中に潜んでいる歯周病菌が歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かし始めるのです。

出血や膿など歯茎の炎症はもちろんのこと、歯を支えている骨がなくなってくるため歯がぐらつき始め抜けてしまうのです。
疫学(統計)
歯周病にも軽度・中程度・重度などの度数があり、歯周ポケットが4mm以上から歯周病の疑いがあるとされています。
最近の歯科疾患実態調査の統計では30代以上の3人に2人が歯周病という結果がでているようです。

歯槽膿漏などの重度の症状の割合は年齢が上がるにつれて高くなり、80歳で20本歯が残っている人は約半数ほどとされています。
歯周病は、年齢が高くなってからというイメージを持たれがちですが、若いからといって油断してはいけません。
10代~20代でも歯周病の患者さんはいます。
歯周病までとはいかなくても歯周病リスクの高い方をたくさん見ますので若い方でも注意が必要です。
また歯槽膿漏(歯周病)は、男性よりも女性の方がなりやすい傾向があります。
思春期や妊娠中、更年期などによる女性ホルモンが原因で歯茎が腫れやすくなったり、お口の中が不安定になります。
歯茎が腫れることにより清掃状態が乱れ、汚れがつきやすくなり歯周病リスクが高まります。
特に妊婦さんは歯周病には要注意で歯周病菌が原因で早産・低体重児のリスクが高くなるといわれています。
他にも糖尿病の方や喫煙中の方、てんかん剤や降圧剤、免疫抑制剤などの薬剤を飲んでいる方も歯周病リスクが高くなりやすいので注意が必要です。
治療法
歯槽膿漏(歯周病)の治療法はまず原因である汚れを完全に除去することです。

歯垢は柔らかい汚れなので歯ブラシなどのセルフケアで除去することが可能ですが、歯石になってくると硬く歯にくっついてしまっているため自分で取ることが困難になってきます。
歯石は歯医者さんで使用する専用の器具によって除去していきます。
通販などで歯石取りの器具が販売されていますが、自分でやると取りきれなかったり、歯茎などを傷つける原因になりますのであまりおすすめはしません。
歯科医院では歯石を取る場合、通常のクリーニングで除去することが可能ですが、歯周病が進行し歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の深いところまで歯石がついている場合は、痛みがでないよう麻酔をして歯茎の中をお掃除していきます。
歯茎の中は目で見えませんので、手探りと感覚で歯石を取っていきます。
他にも歯槽膿漏(歯周病)が重度の場合や上記のお掃除方法を行って改善がみられない場合など、外科的処置をする方法もあります。
少し怖いですが、歯茎を切開し歯茎をめくることによって直接的に目で見て歯石を除去することが可能です。
これらの歯医者さんでのクリーニングによって原因の汚れを取り除くことがき、歯を支えている骨(歯槽骨)の退縮を抑えることができるのです。
通常歯周病で失われた骨(歯槽骨)は元に戻ることはありませんが、再生療法という外科的な処置によって再生することが可能な場合もあります。
症例
歯槽膿漏(歯周病)がどういった疾患かわかった上で、歯周病の進行度を画像を踏まえ説明していきます。
通常歯科医院では、歯周病の進行度をみるためにメモリのかかれた器具を使って歯と歯茎の隙間(歯周ポケットの数値を測っていきます。
またレントゲン写真を撮り、歯を支えている骨(歯槽骨)の位置も確認します。
・健康な状態
歯茎の色がピンク、またはサーモンピンク色をしていて引き締まっている状態です。
出血もなく、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の数値は1~2mm。
・歯肉炎
歯茎がぷくっと膨れ軽度の発赤がみられ、ブラッシング時に出血がみられることもあります。
歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の数値は2~3mm。
・軽度歯周病
歯茎の腫れが大きくなってきます。
歯を支えている骨(歯槽骨)が破壊され始めます。
歯茎の検査時に出血がみられます。
歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の数値は3~5mm。
・中程度歯周病
歯茎の腫れなどの炎症がさらに大きくなってきます。
歯を支えている骨(歯槽骨)が半分近くまで破壊されます。
歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の数値は4~7mm。
・重度歯周病
歯を支えている骨(歯槽骨)の喪失が進み、歯のぐらつきが激しくなってきます。
出血はもちろん、膿がでることもあります。
歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の数値は7mm以上。
一般的に歯周病の進行度は上記の数値などを参考にされていますが、私の経験上2~3mm程度であれば正常範囲とされている歯科医院さんが多いです。
4mm~は歯周病の疑いがみられますが、クリーニングで原因の汚れを除去することによって改善されることも多いです。
上記の歯茎の炎症状態を自分で見て判断するのは難しいので、一度歯医者さんで検査をしてもらうことをおすすめします。
歯科衛生士としての取り組み
歯科衛生士としての歯槽膿漏(歯周病)の取り組みは、歯茎(歯周ポケット)の数値を測定し、原因である汚れをクリーニングで除去していくことです。
一度失われた骨や歯茎は基本的には元に戻りませんので、いかに状態が悪化しないよう現状維持していくことが大切になってきます。
そのためにはご自身のセルフケアはもちろんのこと、定期的な歯科医院での検診やクリーニングなどの予防歯科が重要です。
歯槽膿漏(歯周病)などが原因で歯を失ってしまった人は、
「入れ歯がこんなに違和感があって大変だとは思わなかった。」
「歯の大切さを失ってから知った。」
「ご飯がおいしく感じられない。」
と言われる方がほとんどです。
自分のお口の中の状態をしっかり把握しておくことはとても大切なことです。
歯医者さんには痛みや症状がでないと行かないという方がほとんどですが、しばらく歯医者さんに行ってない方は是非一度歯医者さんに行って、検診を受けてみてください。
ライター名(ランサーズ名):まめ
<経 歴>
平成27年 歯科衛生士専門学校 卒業
とある歯科医院で3年間勤務
妊娠・出産を機に一度離れ、現在はまた歯科衛生士として復帰
主に予防歯科メインに活躍中