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間質性肺炎は、肺炎の種類の中の1つと思う人もいるかもしれませんが、この2つは全く異なる病気なのです。
肺炎は、肺の中で感染による炎症が起こる病気です。
間質性肺炎は、肺の中の間質で炎症が起きて肺が硬くなってしまう病気です。
そのため、全く異なった症状や経過を示します。
今回は、難治性の肺の病気である間質肺炎についてお伝えします。
もくじ
肺の働きについて
肺は、非常に目の細かいスポンジ状の構造をしています。
また、肺には空気の通り道の「気管支」があり、それが細かく枝分かれして、末梢の「肺胞」という袋状の組織に空気が送られます。

肺胞は、小さな風船が集まったような構造をしていて、それを包んでいる壁のことを間質(かんしつ)といいます。
間質は非常に薄くて、内部が網の目状の毛細血管となっています。
その毛細血管では、血液中の赤血球に酸素を与え、同時に二酸化炭素を取り出すという「ガス交換」が行なわれます。
間質性肺炎という病気とは?
間質性肺炎は、肺胞の包んでいる間質が繰り返し炎症やダメージを受けることで、間質が線維化して厚く硬くなる病気です。

この間質が、炎症などによって線維化して厚くなると、肺は膨らみにくくなります。
そして、間質内の毛細血管でガス交換の効率が低下して、呼吸困難の症状が出てきます。
この線維化が進んでいくと、その部分は肺の機能を失ってしまいます。
そのため肺全体の機能が低下して、血液中の酸素が慢性的に不足している状態となります。
また、呼吸困難から呼吸不全へと悪化すると日常生活にも支障をきたすことにもなります。
原因不明なことが多い
間質性肺炎は原因不明なことが多く、特定の困難な病気といわれています。
それゆえ、原因が特定できない事から「特発性」という言葉を用いて特発性間質性肺炎と医学的に呼ばれています。
特発性間質性肺炎は、病状が異なる6つの種類に分けられます。
以下の3つが大半を占めていますが、特発性肺線維症の割合が非常に高くなっています。
特発性肺線維症 80~90%
特発性非特異性間質性肺炎 5~10%
特発性器質化肺炎 1~2%
特発性肺線維症
特発性肺線維症の発症率は10万人対2人で、有病率が10万人対10人とされています。
発症年齢は50歳以上に多く、男女比では男性に多くみられます。
また、受診していない早期病変の「隠れ間質性肺炎」の数は、その10倍以上いるだろうといわれています。
この病気を発症した人の多くが喫煙者であることもあるため、喫煙が病気を進行させる「危険因子」と考えられています。
典型的な症状と身体の変化
間質性肺炎の初期症状は、無症状のことが多いといわれています。
しかし、症状が進んでいくことで、特有な症状や身体変化が見られます。
・乾いた咳(咳嗽:がいそう)
この症状が出てくると、体を動かしたときに息苦しさ(労作時呼吸困難)が見られます。

・ばち指
特発性肺線維症の約40%に指先が太鼓のばちのように太くなる「ばち指」という身体の特徴がみられます。

急性増悪について
特発性肺線維症は、風邪をキッカケに症状が急激に悪化する急性増悪を起こすことがあります。
急性増悪すると、死亡率が80%の大変危険な状態に陥り、改善したとしても平均6か月程度で亡くなるともいわれています。
間質性肺炎の検査と治療
間質性肺炎の検査では、有病の有無、進行の程度などについて検査して治療法を決めていきます。
検査
- 問診
間質性肺炎の原因を複数の原因項目から推定していきます。
- 血液検査
炎症の程度をみるためCRP、LDHなどを検査しますが、この病気に特有なものではありません。
肺組織の壊れ具合を調べるために、SP-A、SP-D、KL-6を検査します。

これらは間質性肺炎で特有に上昇するので、その値から進行の程度や治療効果の判定に用いられます。
*SP-A、SP-D、KL-6は、肺の細胞から産生・分泌される肺特有のタンパク質の1つです。
- 肺機能検査
間質性肺炎の重症度を評価するために検査します。
間質性肺炎であれば、間質が線維化しているので典型的な拘束性パターンと肺拡散能力の低下がみられます。
- レントゲン・CT検査
間質性肺炎の進行度や原因鑑別が行われます。
また、合併症の肺がんの有無もチェックします。
・特殊検査(気管支鏡検査、外科的肺生検)
入院を必要とする検査で、内視鏡や気管支鏡を用いて細胞や組織などを摂取して病理診断をします。
治療
間質性肺炎の治療は、種類によって異なります。
ただ、共通しているのは、病気の進行を加速するのを抑えるには禁煙です。
特発性間質性肺炎の大半を占める特発性肺線維症には、完治できる治療法はありません。
ただ、早期発見・早期治療をすることが重要だといわれています。
以前の治療法は、在宅酸素療法を行うくらいでした。
最近、治療薬が発見されたことで、抗繊維化薬(ビルフェニドン、ニンテダニブ)が使用されるようになりました。

しかし、治癒が困難とされているため、進行抑制が治療目標となっています。
また、急性増悪の抑制効果もあるとされていて、生存期間の延長が期待されています。
特発性肺線維症は難治性の病気
死亡率は5年間で50~70%とされていますが、個人差があるため予測は難しいとされています。
また、死亡原因には急性増悪によるものが多く、数日から1ヵ月で呼吸不全に悪化して亡くなってしまうこともあります。
そのため、日頃からの風邪をひかないように体調管理やインフルエンザなどの予防接種が推奨されています。
特発性肺線維症以外は、比較的予後が良好で回復率や生存率も高いとされています。
受診の目安
間質性肺炎の初期は、無症状のことが多いため、気がついたときには悪化している可能性が高くなります。
そのため、体を動かしたときに息苦しさを感じたり、痰を絡まない乾いた咳が2週間以上続いた時が受診の目安といわれています。
「咳だけでなく息苦しさも出てきた」
「風邪の症状が2週間以上続いている」
と感じたら、早めに呼吸器内科へ受診してみましょう。
ライター名(ランサーズ名):まさざね君
<経 歴>
臨床検査技師の国家資格を2000年に取得。
臨床経験は、総合病院で15年、癌・肺疾患専門病院で5年目になります。
臨床現場では、健診から救急患者まで生理検査を中心に従事しています。
臨床検査技師は、血液などの検査値だけでなく、細菌培養、画像診断、細胞や組織などについても検査して報告しています。
これらの検査を通して、病気の原因、検査、治療、予防など分かり易くお伝えしていきます。
気になるは病気について、少しでもお役に立てれば幸いです。
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