【社労士】休職・退職で使える公的補償【ケガ・病気編】

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

仕事をしていても避けられないケガや病気。
そんなときに役立つのが、公的な補償です。

中でも、労災、健康保険、雇用保険は耳にしたことがあるのではないでしょうか?この公的補償制度を
①ケガ・病気による休職や退職
②精神疾患による休職や退職(12/25の12時に公開します)
の2つに分けてご紹介いたします。

ケガ・病気編

労災とは?

労災は正しくは「労働者災害補償保険」といいます。
制定されたのは昭和22年で、まだまだ炭鉱での事故などが多い時代で、労働者がケガや病気をして働けない時期を補償する保険として制定されました。
労災が支給されるには
①労働との業務起因性(業務に原因があった)
②労働との業務遂行性(業務中であった)
の2つが必要です。

労災の条件

例えば、『建設現場で作業中に足場から落ちて足の骨を骨折する』というケースで解説してみましょう。
①足場から落ちた、という業務起因性(業務に原因があった)
②作業中である、という業務遂行性(業務中であった)
2つの条件が満たされるので、労災が支給される可能性が高いのです。
労災の種類は、療養等補償休業等補償障がい等補償など7種類に加え2次健康診断等給付があります。

労災以外の補償

健康保険

では、業務に関係のないけがや病気の場合はどのような補償があるのでしょうか?
それが組合健保や協会健保といった健康保険です。
風邪をひいたり、花粉症などで病院に行くことあるかと思いますが、風邪の原因が労働、と結びつけるのはなかなか難しいです。
そこで、日頃から不測の事態に備えるためにこの健康保険という仕組みがあります。
このおかげで、病院への保険治療での支払いは、多くの場合3割負担などとなっています。

雇用保険

では、雇用保険とはどういう制度でしょうか?
雇用保険は失業した場合などのときに給付されます。
失業したときに支給される雇用保険のカテゴリーは
①普通給付
②特定受給資格者
③特定理由離職者
の3つです。

普通給付は、支給まで約3か月待たされ、この期間を「待期」といいます。
普通退職は労働者の意思で退職している、とされますので、次の転職先がすぐに見つかる、という前提です。
3か月の待期の間に仕事をみつける、という想定が普通給付です。

これに対して7日間の待期で支給するのが②特定受給資格者と③特定理由離職者です。
また、普通給付に比べ雇用保険が支給される期間が長く設定されています。
特定受給資格者になるには、倒産、解雇など「会社都合」であることが必要です。


これに対して特定理由離職者は体力の低下、などがあげられます。
特定受給資格者と違う点は正当な理由のある自己都合退職者ということです。

公的補償制度の使用例

これは相談としてよくあるケースです。
会社の作業でケガをした労働者が、「会社が労災を申請してくれません」と訴えます。
ここで意外に知られていないのは、労災は本来本人の申請である、ということです。

しかし、ケガ、病気をした本人、また看病をする家族が申請をできないことは多々あります。
このため、会社が申請の代行をしているのが実際、ということです。
労働基準監督署に行けば、労災課があり、書類の書き方、申請の方法などを教えてくれます。

労災が出ないかもしれない、と焦っていた労働者はここでかなりほっとします。
しかし、労災は支給決定までおおむね6か月はかかります
支給の決定をするのは労働基準監督署長です。
そのため、労災が出ない期間は健康保険の傷病手当金という制度をつかいます。
傷病手当金は1年6か月支給され、その間に労災が支給決定になった場合は健康保険から労災に切り替える、というのがよくあるケースです。

そして、雇用保険です。
労働者がケガや病気で休み、傷病手当金の期限1年6か月を迎えてしまった、ということはあります。
注意しなければならないのは、会社は労働者がケガや病気をした、ということを理由に解雇をすることには慎重にならなければならない、ということです。

労働者を解雇してしまうと「特定受給資格者」つまり会社都合の退職とされ、雇用保険から出ている助成金の一部は半年間ほど支給が止まります
助成金は会社が雇用を促進していることをアシストするものなので、会社都合の解雇では助成金を支給する意味がなくなります。
助成金を会社の運転資金としてあてにしていることも多く、会社としてはなんとしても解雇は避けたいところです。

しかし、どうしても会社としてケガが治っていない労働者に対して仕事が用意できない、などということはあります。
そこで会社は解雇による特定受給資格者ではなく、まずは一旦、自己都合による普通退職、とします。
そして離職日の前に病院かかっていたことがわかる診断書などを労働者本人からハローワークに提出してもらいます。
体力の低下などで働けない、として特定理由離職者となれば「正当な理由の本人都合の退職」であり、助成金に影響は出ません。

会社は労働者に対し、特定理由離職者は7日間の待期で支給されること、普通退職よりも支給期間などが優遇されることを説明し、失業給付開始のときにハローワークで相談するように勧めます。
また、できるかぎり生活保障をするため就業規則に則った退職金を積むなど、退職する労働者へできる限りのことをすれば退職への話し合いもスムーズになります。

まとめ

労働に関係する公的補償制度はご紹介したように多くあります。
ケガをしないほうのが良いですが、不測の事態に備え多くの補償制度があり、それを利用できることをこの機会にぜひ知って下さい。

ライター名(ランサーズ名):saniken

<経 歴>

社会保険労務士・臨床心理士・通訳案内士(英語)。

労働問題、企業のメンタル問題に取り組む。

弁護士、医師、社会保険労務士ら専門職へのメンタルコンサルテーション、講義と、外国人労働者メンタル支援を得意とする。

りんどう国際事務所(https://www.rindowkokusai.com/)



カテゴリー:お金・保険関係, 社会保険労務士【労働・健康保険】

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Anonymous
Anonymous
9 months ago

雇用保険には働くことができる状態の人に支給する『基本手当』と働くことができない人に支給する『傷病手当』があるのでケガ、メンタルで仕事ができなくなった方も雇用保険が使えます(社労士受験生より)

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