この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。
先日、患者さんとの会話の中で「風邪をこじらすと肺炎になるから気をつけないとね。 だって、新型コロナにでもなったら大変だから。」というのがありました。
今年は、新型コロナウイルスの影響もあって感染に対して凄く敏感なようで、このような会話が増えてるような気がします。

日本では、肺炎によって年間12万人が亡くなっています。
また、死因別統計によると癌、心血管疾患に次いで3番目に多いとされています。
さらに、亡くなる人の95%以上を65歳以上の高齢者が占めているため、高齢者にとって身近でとても怖い病気といえます。
そこで今回は、肺炎の話を中心に風邪との違いや新型コロナについてもお伝えしたいと思います。
もくじ
風邪と肺炎
風邪と肺炎は同じ病気でしょうか?
この2つは、症状が似ているところがありますが全く異なる病気です。
確かに、風邪の2次感染によって肺炎になってしまうことがしばしばあります。
そのため、風邪が酷くなってしまったのが肺炎と思っている人が意外と多いことがわかりました。
感染部位
風邪と肺炎では、感染する部位が異なります。
風邪は、鼻や喉(のど)などの上気道と呼ばれる器官にウイルスが感染して炎症を起こす病気です。
健康であれば細菌やウイルスの侵入を許さないので、普通の風邪であれば上気道で阻止することができます。
しかし、免疫が低下していたり、高齢のために咳などを上手くできなかったりすると肺炎になるリスクが上昇します。
肺炎になる原因の感染部位は、肺の組織(気管支、肺胞など)です。
そこに細菌やウイルスが感染して炎症を引き起こします。
症状
風邪の主症状は、くしゃみ、咳、痰、鼻水、喉の痛み、発熱(37度台)などです。
肺炎の主症状は、発熱(38度以上の高熱)、痰、悪寒、倦怠感、呼吸困難、息切れなどです。
痰の場合は、炎症性の痰(黄色、緑色など)がみられることがあります。
このように風邪と肺炎の症状は、似ているところもあるので、初期症状では判別しにくい部分もあります。
風邪の場合、市販薬の服用や自然治癒によって数日で回復します。
しかし、肺炎は市販薬を飲んでも症状が治まらないので、高熱の持続、炎症性の痰、呼吸困難などが見られたときは、肺炎を疑って受診することをお勧めします。
原因(病原体)と種類

風邪の原因(病原体)のほとんどはウイルスです。
肺炎には、細菌、ウイルス、寄生生物、真菌など様々な病原体が存在します。
肺炎の病原体
・細菌:肺炎球菌、インフルエンザ菌など
・ウイルス:インフルエンザウイルス、コロナウイルスなど
・寄生生物:マイコプラズマ
また、肺炎は、いつ・どこで発症したかが重要となります。
肺炎の多くは、通常の生活の中で発症する市中感染といわれるものです。
他にも抗菌薬などが効かない可能性がある細菌によって発症する院内(病院内)感染があります。
肺炎の検査と治療
肺炎の原因を調べるためには、問診、聴診、胸部X線検査、血液検査、細菌(喀痰)検査などを行います。
これらの結果から、肺炎の病原体を判別して抗菌薬や抗ウイルス薬などを投与していきます。
肺炎の症状が軽い時は、抗菌薬などの服用で自宅療養することもあります。
しかし、高齢者や病状が重い場合は、入院して抗菌薬や抗ウイルス薬の点滴を行います。
それでも病状が安定しない時は、酸素投与や輸液が必要になり、重症になると人工呼吸器を使うこともあります。

肺炎の予防
肺炎にならないようにするには予防することが最も効果的といわれています。
日常生活での予防
・帰宅後の手洗い
・うがい
・マスク着用
・口腔ケア(歯磨きなど)
これらは、感染防止をする上で当たり前のことですが、とても大切なことです。
予防には、他にも予防ワクチンがあります。
予防ワクチンは、予防の中でも大きな効果を示しますが、全ての肺炎に効果があるわけではありません。
部分的な予防効果になりますが、効果の大きいワクチンを紹介します。
予防ワクチン

◆肺炎球菌ワクチン
市中感染の原因として多い肺炎球菌のワクチンは、一度の接種で5年以上の効果があります。
◆インフルエンザb型ワクチン
インフルエンザ菌が引き起こす肺炎を予防できるだけでなく、この菌による他の感染症も予防できます。
◆インフルエンザワクチン
インフルエンザウイルスに感染すると免疫機能が低下するため細胞性肺炎に合併しやすくなるといわれています。
ワクチンの接種によってインフルエンザの予防だけでなく細菌性肺炎の予防にも繋がります。
ワクチン接種の費用は自己負担となりますが、特にお年寄りの方にとっては肺炎のリスク軽減に繋がるのでワクチン接種をお願いしたいです。
高齢者の肺炎
高齢者の肺炎の症状
高齢者は、肺炎にかからないように注意しなくてはいけませんが、症状がハッキリと現れないために発見が遅れることが多いといわれています。
特に、免疫や体力が低下した高齢者の場合、症状が急激に悪化することがあります。
また、インフルエンザになったときに細菌性の肺炎を併発する確率が高くなるので注意が必要です。
そこで、症状のハッキリしない高齢者の場合、周りの方が普段と異なる以下のような事が認められたときは肺炎を疑い受診することをお勧めします。
高齢者の肺炎を疑う症状
・元気がなくなった
・食欲がなくなった
・寝ていることが多くなった
・動くことが少なくなった
・意識がハッキリしない(反応が遅くなった)
誤嚥性肺炎
高齢者特有の肺炎には、唾液や食物などが誤って気管に入り、それと一緒に細菌が肺に入り込んで発症する誤嚥性肺炎があります。
この肺炎は、飲み込む力が弱くなったり、気管に入ったものを咳で外す力が弱まった高齢者にみられます。
また、肺炎の原因となる細菌は唾液に含まれていることが多いので、口の中を清潔にしておくことが肺炎予防にも繋がります。
新型コロナウイルスと肺炎

新型コロナウイルス(COVID-19)の主症状は、発熱、咳、倦怠感です。
時々みられる症状には、喉の痛み、頭痛、下痢、味覚や臭覚の消失があります。
ですので、味覚や臭覚の消失がなければ、症状だけでは風邪との判別は困難といわれています。
新型コロナウイルスに感染すると多くの場合は、風邪症状程度で回復しますが、まれに肺炎になることがありますが、感染して人の命を奪う原因となるのは「肺炎」です。
そこで大事になってくるのが、新型コロナウイルスについて正しく知って予防に備えることだと思います。
新型コロナウイルスに感染した時、持病(糖尿病・心血管疾患・高血圧など)のある人や高齢(65歳以上)の人は肺炎になるリスクが高いといわれています。
肺炎のリスクが高い理由として、免疫力の低下や咳などの防御システムがうまく働かないというのがあります。
通常、肺炎に感染する人の多くは、肺炎球菌などの細菌を主とした感染です。
しかし、新型コロナウイルスによる肺炎は、ウイルス性感染です。
一般的に治療しやすいのは、細菌感染といわれています。
ウイルス性肺炎は、胸部X線検査では見つけにくいため、CT検査で確認する必要があります。
また、ウイルス性肺炎の多くは治療薬がなく、新型コロナウイルスにも治療薬はありません。
現在の治療は、基本的に対処療法のみとなっています。
そのためにも日常生活での予防が非常に重要となります。
正しい予防で、感染防止に努めましょう。
ライター名(ランサーズ名):まさざね君
<経 歴>
臨床検査技師の国家資格を2000年に取得。
臨床経験は、総合病院で15年、癌・肺疾患専門病院で5年目になります。
臨床現場では、健診から救急患者まで生理検査を中心に従事しています。
臨床検査技師は、血液などの検査値だけでなく、細菌培養、画像診断、細胞や組織などについても検査して報告しています。
これらの検査を通して、病気の原因、検査、治療、予防など分かり易くお伝えしていきます。
気になるは病気について、少しでもお役に立てれば幸いです。
カテゴリー:その他・予防法, 臨床検査技師【呼吸器】, 臨床検査技師【検査】