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足腰が衰えてきたから杖を使おうと思うんだけど・・・杖に頼ったら益々足腰が弱る気がするわ。
シルバーカーとかもあるけど、何を選べば一番足腰の機能を維持できるのかしら?
加齢とともに足腰の機能が衰えるのはある意味自然の摂理です。いつまでも若い頃のように元気で歩く、というのは簡単なことではありません。
とはいえ、生きている間は出来るだけ丈夫でいたい、自分の足で歩きたい、と思うもの。
今回の記事では、出来る限り足腰の機能を維持するためにはどんな歩行補助具を選んだらいいかという事についてお話させて頂きます。
もくじ
歩行補助具はこんなに色々ある
歩行を補助する道具というものは、杖だけではありません。
具体的に細かく分けると
- 1本杖
- 多脚杖(4点杖・3点杖など)
- 松葉杖
- ロフストランドクラッチ
- 歩行器
- 歩行車
- シルバーカー
歩行補助具にはこれだけの種類があります(これらが全てではありませんが代表的なもの)。
聞きなれないものもあると思いますが…
足腰が弱ってきたな、と感じた時最初に思い浮かべるのは
やはり1本杖ではないでしょうか?

比較的置き場所も取らないし手軽に使えるため、それほど使用頻度が多くない場合でも、とりあえず1本持っている、という高齢者も少なくありません。
ちなみに上のイラストは1本杖の中でも、いわゆるT字杖と呼ばれるタイプのもの。
ところで皆さんは下イラストのタイプの杖をご存じですか?

よくウォーキングや山登りで使うタイプの1本杖、ノルディック杖といいます。
1本杖を使うのであれば個人的にはT字杖よりもノルディック杖をおススメします。
人間の歩行の特徴

人間の歩行というのは、実はジェットコースターと同じ原理。
ジェットコースターって、一度高いところまで登って行ったらそこから急降下、そしてその急降下したスピードを利用してまた急上昇・・・こんな動きを繰り返しますよね?
急降下したスピードをエネルギーとして利用するので、ジェットコースターというのは最初に高い所まで登っていく時以外、ほとんど自動で進むといっても過言ではありません。
つまり、エネルギー効率がすごく良い、という事になります。

実は人間も歩行の時、全く同じメカニズムで動きを作っています。
真っすぐ立っている時は重心が高い位置にあり、そこから一歩振り出すとともに身体は前に引っ張られながら重心の位置が下がります。
振り出した足が地面に設置したら、身体が前に引っ張られたエネルギーを利用し、また身体を伸ばして立位の姿勢に。
そこから反対の足を勢いのまま振りだして・・・
これを繰り返すことで歩行という動作が完成します。
歩行という動作は、実は歩き出しの1歩目以外それほどエネルギーを必要としない効率のいい動作だったんです。
そして、このエネルギー効率のいい歩行パターンを正しく使うためには、背筋を出来るだけ伸ばし、重心を繰り返し高い位置にもっていく必要があります。
ノルディック杖の有用性
先ほど、杖を使うならT字杖よりもノルディック杖がおすすめ、という話をしました。
その理由は、T字杖だとついつい杖に体重を預けるような形になるため、背筋が曲がりやすくなってしまい、人間が本来行うべき歩行のメカニズムから更に逸脱していってしまう可能性が高いからです。
同様に、歩行器やシルバーカーを使用した場合でもT字杖を使ったときと同じ動作パターンになりやすいため、益々背中の丸まった動作が習慣化していってしまいます。
逆に、ノルディック杖を使った場合は杖で身体をグッと前に押し出しながら背筋を伸ばすような格好になるため、本来人間が歩く時に必要な体幹の動きを自然に誘発してくれるのです。
本来あるべき歩行に近い形で動作を行なうという事は、その動作能力を維持・向上させるうえで非常に重要なファクターになります。
したがって、ノルディック杖を使って背筋を伸ばしながら歩くという事が、歩行機能の維持・向上のために効果的なリハビリになるのです。
もちろん、歩行補助具というのはひとりひとりの歩行能力に応じて選択されねばなりません。
誰しもが必ずノルディック杖を使うべき、というつもりはありませんが・・・初めて杖の使用を検討するという場面では一度ノルディック杖を試してみるというのも良いのではないでしょうか。
おわりに
今回は、初めて杖を使う時はノルディック杖を使ってみてはどうか、というお話をさせて頂きました。
歩く時に腰が曲がりやすい、ふらふらして足が思うように出しにくい、等の場合は検討する価値があると思います。
一方で、歩行補助具の選択ミスというのは、転倒から骨折等の重篤な怪我につながる可能性もあります。
歩行補助具を選択する時は出来る限り独断で決めず、医師や理学療法士、福祉用具専門相談員など専門知識のある職種に相談しましょう。
適切な歩行補助具の選択こそが、より長く自分の足腰の機能を保つコツだと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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