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今から5年8か月前の平成27年5月に【食道がん除去手術】を受け、令和2年5月に寛解を迎え今日に至っております。
75歳で手術に臨み、入院生活、そしてその後の治療生活を経て寛解に至りましたが、長く辛いことの連続でありました日々を思い出し闘病記を書いてみることにしました。
もくじ
癌が判明するまで

6年前の平成27年3月に『上部内視鏡診断画像』と『PET診断画像』を持参し、紹介されました【大阪大学付属病院消化器外科主任教授】の外来診察を受けました。
「この腫瘍はがんですね。胸部食道中部がんで、ステージ3です」と診断告知され、「今なら、体力的にも耐えられると判断出来ますので手術で除去する方法を薦めます」とも言われました。
告知から手術を経て退院まで
覚悟はしておりましたが、実際に【がん】と告知されますと、一瞬頭は真っ白になり呆然とします。
言葉がないと言う表現をしますが、まさにその通りでした。

腹を括ることも大切ですから、阪大病院での診察に同伴してくれました家内に相談し、次いで息子夫婦にも心境を報告しました。
手術を選択したことについて、誰からも反対されなかったことが逆に楽な気持になりました。
【不治の病】と言う悲壮感はなく、医療、医師を信じて前向きに考えようと決心し4月3日の入院を待つことにしました。
医師の指示でもありましたが、入院までにはしっかり体力をつけておくべく食欲増進を図り、且つ適度に運動もして心身ともに手術に耐えられるように頑張っておりました。
4月3日、予定通り入院してさっそく担当医と担当看護師を紹介されました。
そこで、手術前の化学療法、そして手術、手術後の治療と経過観察処置などの説明を受けて病室に入りましたが、「いよいよ入院生活に入るのか」と思いますと、少し感傷的になってくるのを思い出しました。
手術前の準備
ここでがんの手術ついて説明しますが、先ず『化学療法(抗がん剤治療)』が開始されます。
DCF療法と称されますが、これは月始めの5日間、昼夜連続で3種類の抗がん剤(5FU、プラトシン、ワンタキソテール)を体内に点滴方式で注入します。
その後20日間は休薬期間ですが、ここまでがⅠクールであり、通常はⅢクールまで繰り返されます。
投薬が終わり、休薬期間に入ってから副作用が始まるわけで、大変辛く苦しい期間でもあります。
休薬期間が終わりますと、前回の繰り返しです。
その結果により、
●がん細胞が消滅しておれば『優良』
●少しでも小さくなっていれば『良』
と判定され、手術に踏み切れるわけです。
その副作用の出方は各人により異なり、Ⅲクールを完全に終えて手術に臨む人や、Ⅰクルーで終える人など様々です。
私の場合、激しい副作用に苦しめられ、とくに白血球や血小板の減少傾向と38度超に近い強烈な高熱に侵され、心身ともに耐えられない状態に追い込まれました。

副作用に耐えられないので「中止して頂きたい、駄目であるなら転院を希望する」と訴えると同時に、体感的に胸の辺が軽くなったので再度精密検査をして欲しいと訴えました。
医師側の抵抗もありましたが検査の結果、幸いにしてがん細胞が小さくなっていたことが判明しましたので、手術に踏み切っていただきました。
ついに手術へ
4月末日にいったん帰宅し、5月10日には手術を前提として再入院をいたしました。
手術までは、『歯科、耳鼻咽喉科、認知検査、高齢者体力検査、麻酔科など』で必要な検査を受診し、5月14日に手術すると決まりました。
担当医から手術の具体的な説明を受けますと、さらなる不安が出て参ります。
「心配しないで下さい。我々を信じて下さいね」と言われ、「委ねるしかない」と腹を括り直し頑張ろうと決心しました。
この手術は【食道亜全摘・後縦胃管再建手術】と言われています。
喉元・右横腹・へそ上部の3か所を切開し、食道とリンパ節を全摘出、胃を持ち上げて食道を再建すると言う手術で、手術中の大手術と言われるほど難度が高く、通常でも9~10時間にも及ぶと言われております。
私の場合でも9時間を要しましたが、私は麻酔で眠ったままですから全く分かりません。

手術当日は手術室まで自分で歩きます。
家内も付き添って来ますが入り口までです。
手術台に上がり、前かがみになってうつむきますと、腰部から麻酔注射が打たれます。
しばらくするとスーッと眠りに入り後は全く分かりません。
手術翌日の午後に目が覚めますとICU室でした。
担当医、看護師、そして家内の顔を見た時に「無事に終わったのか、生還できたか」と痛感しました。
ICU室で2日間、回復室で3日間を過ごし、手術から5日後には一般病棟に戻ることになりました。
始まったリハビリ
それからが、いわゆるリハビリ期間です。
点滴が中心で、
●水分や食事の採り方を練習
●食事の量、尿や大便の回数と尿量を逐次記録
●検温と体重の測定
●歩行訓練
など、12本のチューブを付けたままでのリハビリには挫けそうになりました。
あらためて手術後の重要さを肌で感じた20日あまりでした。
体力が回復して来るにしたがってチューブが1本1本外されますが、何よりもシャワ―が楽に使えるようになることの喜びは例えようがありません。
(それまでは身体の拭きのみでした)
担当医から6月上旬に退院しても良いとの許可は出ましたが、次なる課題は退院後の治療方針です。
手術を受けた本人の選択や家族の選択にもよりますが、私の場合、術後検査の結果リンパ節へのがん細胞流出が多かったため、抗がん剤治療を続ける必要があると担当医から助言頂いたので、指示に従うように決めました。
これも各人各様で、リンパ節へのがん細胞流出が見当たらない場合は通常の定期的問診経過観察で済むのです。
退院許可が出され6月5日無事に退院いたしました。
久しぶりに我が家で寛ぎ、風呂の湯船に浸りながら「生還できて本当に良かった」と本心から思いました。

退院から寛解まで
リンパ節への流出が多く見られたので引き続きの治療がベストであるとの担当医からのの指示により『がん手術後のフォロー病院』としての位置づけにある【彩都友紘会病院】への通院治療を始めました。
幸いなことに、担当医が月2回、この病院での臨時的治療に派遣されておられましたので、私としましては、退院後も担当医に経過観察をしていただく機会に恵まれたと感じた次第でした。
退院後の抗がん剤治療
この病院では【術後補助化学療法】が採られ、抗がん剤の投与が中心となるのです。
先ずは、1週間の入院で抗がん剤の投与がなされます(点滴方式)。
ドセタキセル化学療法として1日目の24時間昼夜を問わず抗がん剤が入り、2日目以降は休薬期間になるのです。
4日間の休薬期間を経て退院となり、後は外来での問診及び単発的抗がん剤投薬治療に替わります。
1カ月に1度外来診察に通い、ここで約2時間の抗がん剤投与点滴注射を受けます。
その後は休薬期間ですが、次の外来診察には抗がん剤投与です。
この繰り返しの中で採血、CTと上部内視鏡検査が実施され、経過観察として担当医の問診があるのです。
当然、副作用が発生します。
私の場合、白血球や血小板の減少が目立ちますので、その場合は投薬を中止し様子を見ることになるのです。
白血球や血小板の数値が上昇してきますと投薬再開です。

平成27年11月の外来時、担当医より「今までの投与点滴注射から錠剤服用に切り替えましょう」との提案がなされ自宅での服用開始が始まりました。
抗がん剤は『テイーエスワン配合カプセルT20』で、毎朝夕食後に2錠服用するもので、4週間服用し2週間休薬します。
月1度の外来で採血検査を実施して担当医の判断を仰ぐのです。
例によって副作用が発生しますから、その時は服用中止となり、薬剤の単位を下げて処方されるようになりました。
その間に検査で様子を見るわけですが、毎日服薬日誌(体重、体温、血圧、身体の様子など)を記録して状況を把握し、問診時には担当医に報告しておりました。
ついに寛解へ
抗がん剤治療を始めてから一年半の28年9月には抗がん剤投与が中止され、検査の結果、他の臓器への転移も見られないとの判断を頂きました。
以降、抗がん剤の投与はありません。
3か月に1度は担当医の問診と服用薬剤処方箋の発行(整腸剤と胃酸抑制剤)、そして年2回の採血、CT、上部内視鏡検査で進んでおりました。
令和2年4月の検査を経て寛解を通過いたしましたが、今も3か月に一度の問診、1年に1度の検査が続いております。
なお、副作用の中で顕著なのが脱毛であり、これは絶対に避けて通れません。
食道がんで苦しんでいる方へ
以上が闘病記ですが、あくまでも私自身のものであって、このパターンが食道がんを罹病、手術、闘病中の皆様に当てはまるものではありません。
ご承知の通り【がんの5年生存率】と言われる統計があり、生存率の一番高い部位は前立腺、一番低いのが膵臓で、食道は41.5%と言われております。
しかし、最近では驚異的な医療技術や薬学の発展でがんへの意識も変わってきました。
早期の検診による早期発見で大手術に至らない場合もあります。
私も若い頃からの早食い、熱いもの好き、暴飲暴食、喫煙が発症要因の一つでしょうが、後から分かって後悔するのです。
食道がんになり、全摘出手術を経てから寛解までの道のりはとっても長いです。
毎回、検査結果を聞く前は不安いっぱいですが、ある意味では手術後の生活が非常に重要になってきます。
まとめ
経験からまとめますと、
1.健康に対する自己管理に留意すること
2.今まで以上に食生活に気を配ること
3.食道が無いと言う自覚を持つこと(胃が食道の替わりをしている)
4.頭のぼけ防止に努めること
5.趣味を持つこと
6.体力が落ちているから徐々に回復に努めること
7.医師の指示には従うこと
以上が、食道がんを経験したうえで私が重要だと感じたことです。
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