【身内のドライマウス】高齢者のお口のトラブル~唾液が減るとどうなる?~【介護福祉士】

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

「最近よくムセているな…」「ちょっと口臭が強くなったかも…」

自分の親を見たときに、このような変化を感じることはありますか?

その違和感、もしかしたらドライマウスになっているのかもしれません。

特にドライマウスは本人も自覚がないうちに始まり、いろいろな場面で影響を及ぼすのです。

今回は、外見からはなかなか気が付かない、高齢者の唾液の減少について少しお話させていただきますね。

もくじ

高齢者のドライマウスって?

高齢になると、だれでも唾液が減って口が渇いてきます。

口が渇くことをよくドライマウスと言いますが、医学的には口腔乾燥症というそうです。

唾液の分泌が低下して、口が乾いた状態のことをさします。広い意味での口腔乾燥症は、唾液分泌の低下だけでなく、口が乾いていると自覚する症状すべてをさすことになります。

口腔外科相談室 公益社団法人日本口腔外科学会より引用しました

ドライマウス自体はどの年代にも起こる珍しくない症状です。

ただ、高齢になると顔やあごの筋力が低下が起こり、唾液が出る腺への刺激が不足してしまいます。

唾液が減った結果、どうしてもお口が渇きやすくなるのです。

お口が渇くと、

  • お口のねばつき
  • 虫歯の増加
  • 飲み込みにくさ
  • 口臭

このようなお口に関する不快な症状が現れますが、唾液は徐々に減るので、本人も気にしていないことが珍しくありません。

高齢者に起こるドライマウスの弊害

不快な症状のほかにも、高齢者特有のよくない影響があります。

滑舌が悪くなる

唾液の分泌が減るとお口の中が渇き、舌が動きにくくなります。

舌が動きにくくなるとしゃべりにくさを感じるだけでなく、はっきり発音しにくくなるので滑舌が悪くなってしまうのです。

特に、入れ歯を使用している場合はかなりしゃべりにくくなるようです。

話しているうちに入れ歯が出てしまう方がいますが、これは入れ歯が合っていないこと以外に、唾液の減少や舌の動きも関係しています。

おしゃべりしにくくなったり、聞き返されることが増えると、つい寡黙になりがちです。

でも、おしゃべりしないと唾液はどんどん減ってしまいます。

滑舌が悪くなるのは唾液が減る悪循環への入り口なのです。

食事が飲み込みにくくなる

食事の時にちょっと意識してみてください。

よく噛んでいると唾液が出てきて、食べ物と自然に混ざり合っているはずです。

食べ物は唾液にしっとりとまとめられて、のどに流れ込みやすくなります。

唾液には、食べ物を飲み込みやすくする働きがあるのです。

さらに高齢になると、飲み込む力も弱くなります。

お茶などのサラサラした水分を飲み込むときにムセやすくなったり、嚙む力の低下が重なってイカなどが飲み込みにくくなるのはよく聞く話です。

唾液が減ると、なおさら飲み込みにくくなってしまいます

食事は人生の楽しみのひとつですが、うまく飲み込めないと生活の質にも影響が出る可能性が高いです。

飲み込みにくさは次の項でお話しする誤嚥にも大きく関与しています。

誤嚥につながる

唾液が減ると、先述した飲み込みにくさからムセや窒息、誤嚥の引き金となります。

高齢になると、誤嚥性肺炎というものにかかる確率がぐーんとアップするのをご存じでしょうか。

誤嚥性肺炎と気管に異物が入ることで起こる肺炎のことで、食道を通るはずだった食べ物や、お口の中の雑菌が気管支に入り込むことで起こるのが一般的です。

唾液には抗菌作用もあるため、普段はお口の中の雑菌が繁殖するのも防いでいます。

しかし、唾液が少ないと自然に洗い流されるはずの雑菌がお口に留まり、だらだらと気管へ滑り落ちていき、肺炎を引き起こします。

また、唾液が十分出ていないと飲み込もうとする食べ物の滑りがわるく、食べ物もまとまらないために、ごっくんと飲み込んだ食べ物がのどでバラバラになります。

バラバラになったものの一部が気管に入り込み、ムセを誘発するのです。

ドライマウスの方が太巻きのノリが嚙み切れず、丸のみしたら喉に張り付いてしまい、救急搬送されるいう実例もあるので、本当に気を付けてください。

補足:運営がお邪魔します。当ブログに作業療法士さんからいただいた誤嚥予防記事がありますのでそちらを紹介しますね。

なぜ渇きやすいの?

ドライマウスになる原因は、加齢以外にもさまざまなものがあります。

  • 脱水
  • 薬の影響(抗パーキンソン薬や降圧剤など)
  • 病気によるもの(糖尿やシェーングレン症候群など)
  • ストレス
  • 口呼吸

高齢の方にも当てはまるものが多いので、注意が必要です。

対処法~唾液を出すために実践しやすい方法を考えてみました!~

唾液の減少を防ぐには、とにかく唾液を意識して出すことです。

唾液が出るところは3か所、耳の付け根付近(耳下腺)、あごの付け根付近(顎下腺)、あごの先端の下付近(舌下腺)から出ています。

私が考えた唾液が出やすくなる方法をお伝えしますね。

おしゃべりしよう

あごを動かすのが唾液腺への刺激に効率がよいです。

それにはおしゃべりするのが一番

一人暮らしなどで誰ともお話しないでいると、唾液腺が劣化してしまいます!

歌がお好きな方であれば、歌を歌うのもよいです。

一人暮らしなら電話でもいいでしょう。

高齢者施設などでは、さらに唾液の分泌を促しやすい「パ・タ・カ・ラ」という言葉を使った体操が普及しています。

顔全体を大きく動かしておしゃべりしましょう!

よく噛んで食べよう

噛むこともあごを動かして唾液の分泌を促してくれるよい動作です。

よく噛むには、歯の治療も大切です。

噛みにくいから柔らかいものばかり食べていると、唾液がどこかへ行ってしまいますよ。(無理に硬いものを食べることはありません)

入れ歯も合わないのであれば、手直ししてもらいましょう。

最近の歯科技巧はすごいので、一から作り直さなくてもかなり修正してくれます。

可能であれば、ガムをかむのも唾液のためには効果的です。

顔をマッサージ

唾液が出る3つの腺は、あごのラインをマッサージすることで効率よく刺激することができます。

おしゃべりや噛むことで内側から刺激し、さらにマッサージで外側からも刺激してみましょう。

難しいやり方ではなく、下あごの骨に沿って少し押す感じで手を添えるだけでも違います。

くれぐれも強くしないでくださいね。

あなどらないで

加齢に伴って唾液が少なくなるのは、自然現象でもあるので致し方ない部分があります。

でも、長い目で見ると食事やおしゃべりなどの生活の質に影響し、誤嚥などの命に係わる重大な因子でもあるのです。

今後も平均寿命は延びていきます。

年をとっても質の良い生活が送れるように、ご自身も親御さんもお口の環境を見直してみてはいかがでしょうか?

ライター名(ランサーズ名):石塚もここ

<経 歴>

音楽大学中退後、介護福祉士・介護支援専門員として自転車に乗り地域を奔走する3児の母。

ライター業も加わり4足のわらじを履いている。

通所リハビリで取り組んだ音楽療法ではお年寄りと一緒に本気で歌謡曲を熱唱していた。

介護へのナーバスな印象を払拭したい思いで介護関連の記事を書いている。



カテゴリー:介護, 介護福祉士【介護】

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