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入院している時、看護師さんに「清拭しますね〜」と言われて「清拭ってなんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
また、この記事を読んでいる方の中には、「介護で清拭をすることになったけれど、どうすればいいのか分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、清拭(せいしき)について看護師が説明し、手順やポイントもお伝えします。
もくじ
清拭とは
清拭とは、お湯で絞ったタオル等で体を拭くことです。
入浴はお風呂まで移動し、体を洗うという多くの動作があります。
一方、清拭はベッド上で体を拭くので入浴と比べて疲れにくいです。

そのため、体調が悪い人や医療器具が付いていて入浴出来ない人に行うことが多いです。
お風呂に入れないと、汗や匂いが気になりますし、なんだか気持ちも落ち込んできませんか?
そんな時に、温かいタオルで体を拭くことによってさっぱりできますし、体の清潔を保つことにも繋がります。
清拭の目的
清拭には

①リラックス効果
②感染症の予防
③皮膚トラブルの早期発見
清拭時に皮膚や爪の状態を観察し、褥瘡(床ずれ)などの異常を早期発見します。
④血液循環を促進
拘縮(関節が固まって動きが制限されること)や褥瘡(床ずれ)を予防します。
⑤腸の動きを促進し、便秘を予防する
と様々な効果がありますね。
特に重要なのが『③皮膚トラブルの早期発見』です。
高齢者で寝返りや移動に介助が必要な方は、褥瘡(床ずれ)が出来るリスクが高く、清拭の際にしっかり皮膚の状態を観察する必要があります。
手順とポイント
では、実際に清拭をする際の手順とポイントを説明していきます。

まず、ご本人に清拭をすることを伝えましょう。
清拭時は衣類を脱いだり、陰部の洗浄を行いますので、プライバシーに配慮した空間を確保します。
ドアやカーテンを閉めるなどして、ご本人の羞恥心へ配慮しましょう。
準備するもの
・タオル(3~5枚程度)
顔用、身体用で分けて使用します。
・洗面器とお湯
お湯は50~55℃程度で用意しましょう。
ぬるいお湯だと皮膚に触れる時に冷たく感じ、不快感に繋がります。
また、血行促進などの効果が十分に発揮できません。
・石鹸やボディソープ
特別なものでなくても、ご自宅で使っているもので大丈夫です。
・ガーゼ
陰部を洗う際に使用します。
・陰洗ボトル
インターネット通販で販売されておりますが、身近なペットボトル等を利用して作ることも可能です。
ネット上で作り方や代替用品について記載されております。
ここでは割愛します。
・使い捨て手袋
薬局などで売っているものでOKです。
サイズが大きいと作業がしにくいので、ピッタリなサイズを探しましょう。
・着替え一式
オムツも用意しましょう。
シャツは前開きだと着替えが楽です。
・(必要に応じ)塗り薬など
塗り薬や保湿剤は、清拭後の清潔な皮膚に塗りましょう。
全身を拭く清拭の機会に一緒に塗り薬を塗れば、ご本人の負担もより少なくなります。
手順とポイント
基本的には末梢(指先や足先【外側】)から中枢(心臓の方向【内側】)に向けて拭いていきます。
順番は【顔→上半身→下半身→陰部】の順番です。
①顔
使い捨て手袋と顔用タオルを準備します。
お湯で絞ったあと、顔用タオルで目頭から目尻の方向に拭きます。
指が目に入らないように慎重に拭きましょう。
次に額→頬→顎と顔の周りを拭いていきます。
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この時、忘れずに耳の後ろも拭きましょう。
②両腕、脇の下
身体用タオルを使用し、末梢から中枢に向かって拭きます。
指→手首→腕→脇の下の順番で拭きましょう。
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指の間や肘の内側、脇の下はしっかり拭きましょう。
③胸、お腹
基本的に円を描くように拭きます。
首→鎖骨周辺→胸→腹部の順番で拭きます。
腹部はへその周りを「の」の字を描くように拭いていきましょう。
腹部を「の」の字にマッサージすることで腸の動きを促進します。
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女性の場合、乳房の下を忘れずに拭きましょう。
④太もも、足先
腕と同様に、末梢から中枢に向かって拭きます。
指→足首→足の付根に向かって拭きましょう。
point
指の間、足裏、膝の裏はしっかり拭きましょう。
⑤背中
ご本人に横向きになってもらい、腰→肩に向かって円を描きながら拭いていきます。
point
横になるときはベッド柵に捕まってもらうと、ご本人としても姿勢を保ちやすいと思います。
⑥陰部
ガーゼを使用します。
陰部はデリケートな部分なのでゴシゴシこすらず、ガーゼに石鹸(またはボディソープ)をとり、しっかり泡立ててから拭きましょう。
基本的に清潔な部分から拭きます。
肛門が不潔と考え、陰部→肛門の方向に拭いていきます。
なぜなら、肛門付近にいる細菌が尿道などに入り込むと感染症を引き起こす可能性があるからです。
男性
亀頭→陰茎→陰のう→肛門の順番で拭きます。
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陰茎の包皮は伸ばし、シワの間もしっかり拭きましょう。
女性
恥骨→肛門の順番で拭きます。
この時、恥骨側から肛門に向かって拭きます。
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大陰唇、小陰唇の間は汚れが溜まりやすいので忘れないようにしましょう。

陰部洗浄後は手袋に汚れが付きますので、ここで一旦手袋を交換しましょう。
交換後の清潔な手袋で、陰洗ボトルを使用し泡を洗い流します。
最後に、乾いたタオルで水分を拭き取ります。
⑦(必要時)保湿剤や塗り薬を塗ります
必要な方は、清拭後の清潔な肌に塗りましょう。
まとめ

体を拭くだけでも、様々な準備物や配慮すべきことがありますね。
入浴できないときは、清拭以外にも『足浴』や『手浴』といった部分的にお湯に浸かる方法もあります。
体の状態によって方法を使い分けていきましょう。
クラウドワークス名:池澤ひまり
<経 歴>
看護大学卒業後、急性期病院で看護師2年勤務し、現在は保健師として働いています。
カテゴリー:その他・予防法, 看護師【家庭でできる看護学】, 未分類