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もくじ
食欲不振の原因
食欲不振とは食べたいと思う気持ちがなくなってしまう状態です。
また、自分で食べたいと思っていても食べられない状態も食欲不振とよばれています。
食欲不振になる原因になるもの
- 精神的ストレス
- 睡眠不足
- 高齢化
- 妊娠
- アルコール
- 病気
・精神的ストレス
よく「ストレスは胃にくる」といわれています。
コロナウイルスのストレスの影響で、食欲不振の症状に悩んでいる方が増えました。
また人間関係によってもストレスがかかり、食欲不振などの症状をうったえる方もいます。
人はストレスがかかると自律神経がみだれてしまい、その結果として消化管(胃や腸)のはたらきが悪くなり食欲不振という症状がでてしまうのです。
・睡眠不足
ついつい携帯の画面を見ていると寝そびれてしまい寝不足になってしまう方も多いのではないでしょうか。
睡眠時間が足りないと自律神経の交感神経の働きが活発になってしまい、消化管の動きがにぶくなり消化が遅くなってしまいます。
それが食欲不振や吐き気の症状につながるのです。
・高齢化
高齢になると体の機能が衰えてきます。
- 飲み込むちから
- 噛むちから
- 味覚や嗅覚
- 認知機能
などが衰えてきます。
若い時に比べて運動量も減りますので、食事の量も少なくなるでしょう。
1人暮らしなどの場合は孤独感や不安などの精神的なものから食欲がなくなり食欲不振になることがあります。
・妊娠
妊娠初期に食欲不振になることがあります。
妊娠によってホルモンのバランスがくずれて胃腸の働きが悪くなるためです。
一般的には、「つわり」や「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と呼ばれています。
・アルコール
お酒を飲みすぎると「アルコール性肝障害」という病気になります。
何年もお酒を飲んでいると肝臓がアルコールを分解しつづけることになり、肝臓が疲れてしまい、最終的に肝臓の働きが悪くなってしまう病気です。
アルコール性肝障害の初期症状として腹部膨満感や食欲不振があります。
・病気
食欲不振になる病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
- 慢性胃炎
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 胃がん
- 甲状腺機能低下症
- うつ病
- 亜鉛欠乏症
- かぜ、インフルエンザ、胃腸炎
- 拒食症
さまざまな病気があります。
病気によって食欲不振がつづく期間がちがってきます。
かぜ、インフルエンザ、胃腸炎などは長くても1週間程度ですが、拒食症などのばあいは数年にわたり食欲不振になることがあります。
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食欲不振の時に飲むお薬

・つくしAM散、SM散
効能(薬の効き目)
胃酸(胃液)を中和して胃のムカムカをおさえたり、荒れてしまった胃の粘膜をなおしたりします。
入っている漢方薬が胃の働きを良くしたり、食欲を増進させたりします。
また消化を助ける働きもあります。
飲みかたなどの注意
高カリウム血症、甲状腺の病気のある方、透析を受けている方は飲めません。
大量の牛乳で飲むことはやめましょう。
抗生物質と一緒に飲むときは薬剤師に相談してください。
気をつける副作用
便秘など
・プリンペラン、ナウゼリン
効能(薬の効き目)
胃のはたらきを良くして、胃の中の食物を早く移動させます。
ムカムカや吐き気をおさえます。
飲みかたなどの注意
食前に飲んだ方が薬の効き目が良くなります。
褐色細胞腫と診断された方は飲むことができません(プリンペラン)
妊娠している女性・プロラクチノーマと診断された方は飲むことができません(ナウゼリン)
気をつける副作用
眠気・めまいが起こることがあります(プリンペラン)
下痢になることがあります(ナウゼリン)
<ナウゼリンの構造式>

<プリンペランの構造式>

・ガスモチン
効能(薬の効き目)
食後の胃・十二指腸の運動を良くして胃に食べ物が残らないようにします。
飲みかたなどの注意
食前に飲むと効果的ですが、飲み忘れてしまった時は食後に飲んでも大丈夫です。
気をつける副作用
肝臓の働きが悪くなることがあります。
下痢や軟便になることがあります。
<ガスモチンの構造式>

・アコファイド
効能(薬の効き目)
機能性ディスペプシアという病気における腹部膨満感の症状を改善します。
※機能性ディスペプシアとは:胃に悪いところはないのに、腹部膨満感などの症状が出る病気。
飲みかたなどの注意
食前に服用すると効果が高くなります。
気をつける副作用
肝臓の働きが悪くなることがあります。
下痢や軟便になることがあります。
<アコファイドの構造式>

・H2ブロッカー、PPI(プロトンポンプインヒビター)
H2ブロッカー:ガスター、ザンタック、タガメットなど
PPI:タケプロン、パリエット、ネキシウムなど
効能(薬の効き目)
胃酸(胃液)が分泌されるのをおさえて胸やけや胃の痛みなどをおさえます。
H2ブロッカーよりもPPIの方が効き目が強いお薬です。
ヘリコバクターピロリ菌の除菌の補助のお薬として飲むことがあります(タケプロン、パリエット、ネキシウム)
低用量アスピリン(バイアスピリンなど)を飲んでいる時の胃潰瘍の予防(タケプロン、パリエット、ネキシウム)
非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニンなど)を飲んでいる時の胃潰瘍の予防(タケプロン、ネキシウム)
飲みかたなどの注意
心臓の病気のある人は注意が必要です(ガスター)
腎臓や肝臓の悪い人は注意が必要です(ガスター、ザンタック)
肝臓の悪い人は注意が必要です(タガメット、タケプロン、パリエット、ネキシウム)
レイアタッツカプセル、エジュラント錠を飲んでいる人は飲むことができません(タケプロン、パリエット、ネキシウム)
1歳以上の小児も飲むことができます(ネキシウム)
気をつける副作用
便秘になることがあります(ガスター、ザンタック、タガメット、パリエット)
肝臓の働きが悪くなることがあります(ガスター、ザンタック、タケプロン、パリエット、ネキシウム)
発疹が出ることがあります(ザンタック、タガメット、タケプロン、パリエット)
下痢になることがあります(ザンタック、パリエット、ネキシウム)
女性化乳房になることがあります(タガメット)
頭痛がおきることがあります(タケプロン、パリエット)
血圧が上がることがあります(パリエット)
<ガスターの構造式>

<ザンタックの構造式>

<タガメットの構造式>

<タケプロンの構造式>

<パリエットの構造式>

<ネキシウムの構造式>

・マーロックス
効能(薬の効き目)
胃の粘膜を保護したり、胃酸を中和して胃潰瘍や胃炎をなおしたり、胃の働きを正常にもどします。
飲みかたなどの注意
透析を受けている方は飲むことができません。
腎臓の悪い方、高マグネシウム血症、心機能障害、下痢のある方は注意が必要です。
経管栄養処置(食事ができず鼻からチューブなどで栄養をとっている方)を受けている方は注意が必要です。
気をつける副作用
下痢または便秘になることがあります。
<マーロックスの構造式>

・アルサルミン、マーズレンS
効能(薬の効き目)
胃潰瘍・急性胃炎の時に荒れているところをなおして出血を押さえたり、胃のむくみをとったりして色々な症状をおさえます(アルサルミン、マーズレンS)
飲みかたなどの注意
透析を受けている方は飲むことができません(アルサルミン)
腎臓の悪い方は注意が必要です(アルサルミン)
気をつける副作用
便秘になることがあります(アルサルミン、マーズレンS)
口の中が乾くことがあります(アルサルミン)
顔が赤くなったり、ほてることがあります(マーズレンS)
<アルサルミンの構造式>

<マーズレンSの構造式>

・ガストローム、アルロイドG
効能(薬の効き目)
胃潰瘍・急性胃炎の時に荒れているところをなおし出血を押さえたり、胃の中をアルカリ性にすることで胃の痛みやムカムカなど色々な症状をおさえます(ガストローム)
胃潰瘍や逆流性食道炎、または検査の後の胃の出血を胃の粘膜を保護することでおさえて、痛みやムカムカなどの症状をおさえます(アルロイドG)
飲みかたなどの注意
飲むことができない場合は鼻から投与することもできる(アルロイドG)
気をつける副作用
便秘や下痢になることがあります(ガストローム)
<ガストロームの構造式>

<アルロイドGの構造式>

・セルベックス、ムコスタ
効能(薬の効き目)
胃の荒れているところを血流を良くしたり、粘膜を保護してなおします(セルベックス、ムコスタ)
ストレスによる胃への負担を軽くします(セルベックス)
痛み止めで胃が荒れるのを予防します(ムコスタ)
飲みかたなどの注意
食後30分以内に飲んで下さい(セルベックス)
気をつける副作用
肝臓の働きが悪くなることがあります(セルベックス)
<セルベックスの構造式>

<ムコスタの構造式>

・ドグマチール
効能(薬の効き目)
胃の血液の流れをよくして荒れた胃の粘膜をなおします。
胃のはたらきをよくして消化をたすけます。
飲みかたなどの注意
プロラクチノーマと診断された方、褐色細胞腫の疑いのある方は飲むことができません。
授乳中の方は飲むことができません。
気をつける副作用
月経異常、乳汁分泌、女性化乳房になることがあります。
眠気、めまいがでることがありますので車の運転などには気をつけてください。
口が渇いたり、便秘になることがあります。
身体がだるく感じることがあります。
<ドグマチールの構造式>

・ガスロンN
効能(薬の効き目)
胃の血液の流れをよくして荒れた胃の粘膜をなおします。
荒れている胃の粘膜を保護し、炎症をおさえます。
飲みかたなどの注意
特にありません。
気をつける副作用
肝臓の働きが悪くなることがあります。
<ガスロンNの構造式>

食欲不振の原因と薬のまとめ

食欲不振になる原因はいろいろあります。
1つは胃の粘膜があれてしまったり、胃酸(胃液)が出すぎてしまったりと胃の働きが悪くなってしまうことが原因になることです。
2つめは胃の働きは健康なのにストレスや睡眠不足などの精神的なものが原因で食欲不振になってしまうことがわかりました。
食欲不振の時に飲むお薬も、原因によって効果のちがう薬を医師が処方してくれます。
同じ症状でも原因によって効能の違う薬を飲みますので医師の指示通りお薬を飲みましょう。
お薬のことでわからないことがあれば薬剤師に相談してください。
執筆者:荒川 高広先生

ランサーズ名:荒川 高広
経歴:調剤薬局薬剤師xブロガーxライター
調剤薬局で働く27年目の薬剤師です。
・認定実務実習指導薬剤師
・研修認定薬剤師
いつもは薬局内で患者さまに説明していることを、さらに分かりやすく記事にしています。