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とてつもないスピードで高齢化の一途をたどっている日本。
その中で、医療保険、年金と並んで国民の生活を支える役割を担っているのが介護保険です。
しかし、介護保険の歴史はまだ20年あまり。
存在は知っているけれど内容はよく知らない方が多いのではないでしょうか。
そこで、今回は介護保険のそぼくな疑問にお答えします。
パンフレットを読んだときに、「なんだか知らない言葉が多くてよくわからないな」と思ったら、この記事のことをぜひ思い出してみてください。
※介護保険は適宜改正を行うため、内容が変更される場合があります。この情報は令和2年3月現在のものです。
もくじ
介護保険ってなに?

介護保険制度とは、定められた要件に当てはまった場合に必要なサービスが支給されるタイプの、区市町村が主体となっている公的保険です。
サービス利用には、毎月の介護保険料のほかに収入に応じた費用負担が求められます。
定められた要件とは、何歳になったから、とか車いすになったからという単純なものではなく、どの「要介護度」に当てはまるかがポイントとなります。
要介護度って?
要介護度とは、介護サービスがどの程度必要な状態なのかをわかりやすくするものです。
以下のような分類があり、介護度によって使えるサービスや量に違いがあります。
- 要支援1 軽度
- 要支援2 要介護1と背中合わせ
- 要介護1 比較的軽度
- 要介護2 ↓
- 要介護3 下に行くほど重い
- 要介護4 ↓
- 要介護5 最重度
介護度が違うと何が違うの?

要介護度が高いほど1ヶ月に使える介護サービスの量が増えますが、サービスによっては一回利用するたびにかかる料金も上がる傾向があるため、一概に介護度が高いことがよいというわけではありません。
ただし、一定の要介護度以上の方しか利用できないサービスも存在します。
要介護2以上で使えるもの
レンタル品の一部は要介護2以上が必要です。
車いすや介護用ベッド、徘徊センサー、移動用リフトなどが対象品になります。
要介護でも1人で動ける方には介護ベッドなどの用品は貸してもらえないのですね。
ただし、要介護度は1だけどベッドがないと起き上がれないなど特有の理由がある場合は、介護度に満たなくても利用が可能となることがあります。
その判断は担当のケアマネジャーが行いますので、困っているのであればすぐにご相談することをおすすめします。
要介護3以上で使えるもの
要介護3以上がないと特別養護老人ホームの入所ができません。
申し込みは可能な施設もあるのですが、入居の順番は相当後回しになるため、実際の入居は困難となります。
特別養護老人ホーム以外の入所の場合は、後述する施設サービスでご説明します。
要介護4以上で使えるもの
ベッド上での排せつのお世話を手伝ってくれる自動排泄処理装置(尿と便を吸引するタイプ)のレンタルは、要介護4以上が必要です。
この装置は尿のみタイプもあり、尿のみの場合はどの介護度でも借りることができます。
使えるサービスって?

介護サービスにはさまざまなものがありますが、大きく分けると2つに分かれます。
- 自宅で生活するために必要なサービスを「居宅サービス」
- 施設に移り住んで介護を受ける「施設サービス」
各自治体で行っている「介護予防事業」というものもあり、まだ要介護状態ではないが必要なサービスを利用できる場合もあります。※ごく軽度の方向けの居宅サービスです
居宅サービスとは
自宅で生活するために活用できるサービスです。
逆に、その方の生活に必要のないサービスの利用はできない仕組みになっています。
介護の必要性をケアマネジャーが判断しますので、ご家庭特有の悩みや困りごとなどをよく担当ケアマネジャーと相談することが大切です。
介護サービスにはたくさんの種類があるので、部門ごとにご紹介します。
家に来てくれるサービス
- 訪問介護(ヘルパーさん)→自宅に来て介護する
- 訪問看護→医師の指示のもと家での処置や薬の管理を手伝う
- 訪問リハビリ→医師の指示のもと自宅内でリハビリを行う
- 訪問入浴→自宅に簡易浴槽をもってきて入浴介護を行う
- 定期巡回随時対応型訪問介護看護→1ヶ月定額で短時間の介護や看護を受ける
ほかに、居宅療養管理指導といって医師や歯科医師、薬剤師が医療保険と介護保険を併用する形で自宅に訪問することもあります。
通って受けるサービス
- 通所介護(デイサービス)→食事、排せつ、入浴などの基本的な介護を受ける
- 通所リハビリ(デイケア)→デイの内容に加え医師の指示のもとリハビリを行う
- 療養通所介護→医療処置が必要な方が利用できるデイサービス
- 認知症対応型通所介護→デイサービスの認知症特化型
宿泊サービス
- 短期入所生活介護(ショートステイ)→宿泊して生活に必要な介護を受ける
- 短期入所療養介護(ショートステイ)→リハビリ施設に宿泊する
その他
- 福祉用具貸与、販売→介護用品のレンタルと販売
- 住宅改修費支給→自宅内のリフォーム費用の一部負担
- 居宅介護支援→ケアマネジメントにかかる費用
入所サービスとは
入所にもさまざまな形があります。
- 特別養護老人ホーム(とくよう)→終の棲家として入る施設 要介護3以上
- 老人保健施設(ろうけん)→リハビリ目的の施設 要介護1以上
- 介護療養型医療施設→医療処置の必要な方が入所できる施設 要介護1以上
- 介護医療院→長期療養が可能な病院と介護施設の融合施設 要介護1以上
- 介護付き有料老人ホーム→介護にかかる料金が一ヶ月定額タイプの民間施設 要支援1以上
施設にいるけれど居宅扱いのもの
実は、施設に入っているけれど施設扱いではないものもあるんです。
- グループホーム→認知症の方が住む家
- 住宅型有料老人ホーム→必要なサービスを必要なだけ利用する住宅
- 小規模多機能型居宅介護→通う・泊まる・訪問が一体となったところ
また、最近増えているサービス付き高齢者向け住宅なども介護保険での施設基準を満たしていないため居宅扱いとなります。
介護施設に入所すると居宅サービスの利用はできません。
逆に、居宅扱いの住まいでは居宅サービスの利用が可能であることが特徴です。
施設に入りながら、通いなれたデイに通い続けることも可能なんですね。
番外編・老人福祉法で定められた施設
- 軽費老人ホーム→身の回りのことはできる方が自立に不安がある方が対象
- 養護老人ホーム→自立に不安があり生活に困窮した方が対象
要介護認定をお持ちの方でも、お体の状態によっては入居可能です。
介護保険は何歳から使えるの?

介護サービスを利用できるのは40歳以上の方という決まりがあります。
介護保険料の徴収が始まる40歳から権利があるというわけです。
ただし、65歳以上の方と40歳以上65歳未満の方では要件が違うため、両方の場合をご説明しますね。
65歳以上(第1号被保険者)
65歳以上の方は、どんな理由であれ要介護状態となれば介護サービスが利用できます。
ケガや交通事故、昔からの持病の悪化などが原因でも介護認定の対象となります。
40歳以上(第2号被保険者)
40歳以上で65歳未満の方の場合、介護状態となった理由が限定されます。
介護保険で定められた特定疾病16種類は以下の通りです。
- がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
たくさんありますが、交通事故やただの骨折などでは介護保険に該当しないことがわかります。
そのため、同じ認知機能障害でもケガによる高次脳機能障害などが除外されていることが特徴です。
65歳未満の方が上記16種類の特定疾病ではない理由で支援が必要になったら、障害サービスを利用する仕組みになっています。
介護保険を知っていざというときに備えよう
いかがでしょうか。
介護保険のパンフレットを少しかみ砕いてご説明しました。
少し難しいかもしれませんが、基本的な用語を知っていると市の窓口や地域包括支援センターなどでの相談も理解しやすくなります。
介護保険は利用しないで済むに越したことはありませんが、早期の適切な利用が体の衰えや後遺症の悪化などの予防策となることもあります。
「まだ早いからいいや」という前に、利用できる公的サービスを知っておくことが賢い選択肢ではないかなと個人的には思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
カテゴリー:お金・保険関係, 介護福祉士【介護保険】