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これまで、赤血球・白血球について紹介しましたが、今回は血小板についてお伝えします。
繰り返しになりますが、身体中を流れている血液内の主な細胞は、赤血球・白血球・血小板で構成されています。
それぞれの役割を例えると、
赤血球は酸素を体の隅々まで送る「運送屋さん」。
白血球は外敵の侵入から守ってくれる「兵隊さん」。
血小板は傷口を塞いでくれる「修理屋さん」のような感じです。

もくじ
血小板とは
血小板は、赤血球や白血球と同じく骨髄内で作られる血液成分の1つです。
そして、骨髄の細胞で一番大きい巨核球の細胞質がちぎれたものが血小板となります。
1つの巨核球からは、2,000個の血小板が産出されます。
血小板の大きさは直径1~3µm(1mmの1/1000)と赤血球(7~8µm)よりも小さいので、顕微鏡では赤血球や白血球に混じって小さなゴミのように点在して見えます。
寿命は、約10日程度と赤血球(寿命:120日)と比較するとあまり長くありません。

◆血小板の役割
血小板は、出血部分を止血して傷口を塞いでくれる役割をしていますが、もう少し詳しく説明すると以下のようになります。
・血管が破れて出血
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・血小板が壊れた場所に集合して止血を開始(一次止血)
⇩
・肝臓で作られた凝固因子によって血小板同士が結合して塊(血栓・かさぶた)を形成します。(二次止血)
⇩
・血小板から放出されたフィブリンと呼ばれる物質で傷が完全に塞がり止血が完了します。
血小板の測定
血小板の測定は、赤血球・白血球と同様に自動血球計数装置を用いるのが一般的です。
血球を測定するには、EDTA-2Kという血液を固まらなくさせる薬剤が入った試験菅に採血します。
しかし、まれにEDTAとの反応で血小板凝集を生じてしまうことがあります。
それを自動血球装置で測定すると、単体の血小板も凝集した血小板も1個と計測してしまうため、本来の血小板数より低値に出てしまうのです。
この場合の対応は、採血時にEDTAの代わりとなる薬剤(ヘパリンなど)が入っている試験管で採血して測定をすることで正しい値を出すことができます。
血小板数の基準値と異常値について
基準値
血小板数の基準値は15~45万/µlです。
また、日本人間ドック学会での基準値は14.5~32.9万/µlとなっていて、9.9万/µl以下または40.0万/µl以上が異常値と判定され精密検査の対象となります。
日本人間ドック学会の基準値が一般的なものより厳しい数値設定になっているのは、
『異常が疑われる人を早めに見つける』
という健康診断の目的によるためです。
異常値
異常高値:45万/µl以上

血小板数が基準値よりも明らかに多くなると血栓や出血が起きやすい状態になります。
例えば、血小板数が60万/µl以上の時は血液疾患の可能性が高く、そのまま放置しておくと重篤な血栓症(心筋梗塞・脳梗塞など)を発症する危険性があります。
◆血小板数が増加する原因
血小板数が増加する原因は3つ考えられます。
①血液以外が原因(反応性血小板増加)
・血液を沢山作る必要がある
鉄欠乏性貧血(女性に多い)や出血で沢山の血液を骨髄で作られるときは赤血球と一緒に血小板も増加します。
・炎症がある
感染症、膠原病(リウマチなど)、悪性腫瘍などから放出される物質によって血小板の母細胞である巨核球が刺激を受けて血小板が増加します。
②血液が原因(原発性血小板増加)
骨髄内の血液をつくる基となる細胞(造血幹細胞)に何らかの異常が起きて血液が増えてしまう病気です。
この病気には慢性骨髄性白血病、骨髄繊維症、真性赤血球増加症(真性多血症)などがあります。
③脾臓摘出後
脾臓を摘出したことで血小板の寿命が長くなり血小板が増加します。
異常低値:15万/µl以下

血小板は出血を止めて傷口を塞ぐ役割があるので、基準値より明らかに少ない時は出血が起こりやすく血が止まりにくくなります。
例えば、血小板数が5万/µl以下の時は軽い怪我でも出血する可能性があります。さらに2万/µl以下になると傷口が無くても軽い刺激で出血するリスクが高くなります。
◆血小板減少の症状
主な症状には、以下のようなものが認められます。

- 鼻血が出やすい。
- 手や足に皮下出血が複数見られる。
- アオアザが出きやすい。
- 歯ぐきや口の中に頻繁に出血が見られる。
◆血小板が減少する原因
血小板数が増加する減少は3つ考えられます。
- 骨髄の血液を造る機能が低下(骨髄抑制)
血液のガンや骨髄がガンに侵されることで、骨髄中の造血幹細胞が害を受けて血液細胞を作る機能が低下します。
この病気には急性白血病、再生不良性貧血などがあります。
- 血小板が身体の中で破壊される(自己免疫性疾患)
特発性血小板減少症(ITP)、膠原病など
- 血小板が身体の中で大量消費される
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、大量出血など
まとめ
血小板は赤血球や白血球と比べると少し影が薄いですが、出血を止めてくれるという身体にとても大切な血液成分です。
また、血小板が減ってしまうと出血が起こりやすく血が止まりにくくなり、増えすぎてしまうと血栓症のリスクが高くなります。
血液検査で「血小板の異常を指摘された」、症状で「鼻血や口の中が出血しやすい」「知らないうちにアオアザが増えている」などがみられときは、医療機関に受診して詳しい検査を受けることをお勧めします。
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