【検査値を読めるようになろう】総タンパク(TP)・アルブミン(Alb)について知っておこう!【臨床検査技師監修】

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

もくじ

総タンパク(TP)・アルブミン(Alb)とは

人の血液中には、100種類以上のタンパクが存在しています。

健康な人は、そのタンパクが合成したり分解したりすることで、体内のバランスを保っています。

その中でも、血液検査で見かける総タンパク(TP)とアルブミン(Alb)が、どのような役割を果たし、異常でみられる症状や病気についてお伝えします。

総タンパクは、血液中に含まれているタンパク質の総量を意味しています。

また、総タンパクの3分の2(60~70%)をアルブミンが占めています。

残りのタンパクは、グロブリン(Glb)と呼ばれアルブミンと同じく肝臓で作られています。

総蛋白 = アルブミン + グロブリン

アルブミンは、肝臓のみで合成されるので肝障害の程度をみるのに有用です。

さらに、アルブミンは総タンパク中に占める割合が大きくタンパク代謝を反映するため栄養状態の指標として用いられます。

    【抗体】

グロブリンは、抗原に合わせて作られる免疫グロブリン(IgG、IgMなど)という蛋白質が主体となっていて「抗体」ともいいます。

この免疫グロブリン(抗体)は、主に炎症の指標として用いられます。

測定方法について

総蛋白とアルブミンの測定には、生化学自動分析装置が用いられます。

総蛋白の測定方法

ビウレット法

アミノ酸のペプチド結合と銅イオンの反応を利用したタンパク質濃度の測定法です。

測定原理は、タンパクがビウレット試薬(硫酸銅が含まれている青い液体)と反応して赤紫色の錯体(さくたい)という液体になります。

この赤紫色に700㎚、546㎚の吸光度(光が通ったときの強度の弱まり)を測定することでタンパクが求められます。

ビウレット法はアミノ酸の組成に影響を受けないため、ほぼ全施設で適用されています。

アルブミンの測定方法

日常検査で使われているアルブミンの測定方法は、BCG法、BCP法、改良BCP法の3種類です。

ただ、この3種類の測定方法は、低アルブミンの時に測定値に違いが出てしまうということを知っておく必要があります。

BCG法

アルブミンだけでなくグロブリン分画(γ-グロブリンなど5つのグロブリン)、急性相反応蛋白(CRPなど)とも反応するため各種の病態で偽高値を示すという欠点があります。

・BCP法

グロブリン分画とほぼ反応しないが、酸化型アルブミンが還元型アルブミンと比較してとの反応性が高くなります。

また、透析患者血清やδ-ビリルビン(過去の肝・胆道障害の名残)で負の誤差が出てしまうという欠点があります。

・改良BCP法

BCP法の酸化型と還元型アルブミンとの反応差を解消した測定法です。

また、アルブミンに対して高い特異性を示し、免疫学的測定法で測定した値とも一致するので、正確度が高いと言われています。

そのため、現在は多くの施設で改良BCP法が適用されています。

基準値と異常値

◆総蛋白(TP)

総タンパク増減には、さまざまな理由があるため病気を診断することは困難です。

しかし、病気の有無の指標として用いられます。

基準値:6.5 ~ 8.0g/dl

異常値

異常値は、以下のように分類されます。

〈総タンパクの低値〉

アルブミンまたはグロブリンの低下で起こりますが、多くの場合はアルブミンの低下が原因とされています。

低値で疑われる疾患

ネフローゼ症候群、急性腎炎、免疫不全疾患、低栄養状態など

〈総タンパクの高値〉

多発性骨髄腫によって増殖したリンパ球から同じ分子構造を持つ免疫グロブリン(抗体)が異常に産生されるのが原因とされています。この免疫グロブリン(抗体)は「M蛋白」と呼ばれています。

【高値で疑われる疾患】

多発性骨髄腫など

アルブミン(Alb)

・基準値(改良BCP法):3.8~5.2(g/dl)

・異常値

  • 低値(低栄養状態)3.5g/dl以下 手足に浮腫(むくみ)が出てきます。
  • 高値:あまり問題になりません
  • パニック値(生命が危ぶまれる値)2.0g/dl以下

アルブミンが低値となる原因には3つ考えられます。

  • アミノ酸の摂取不足による栄養不足。
  • アルブミンを合成する肝臓の機能低下。(肝硬変など)
  • アルブミンが尿にたくさん出てしまう。(ネフローゼ症候群)

アルブミンは血管内に水分を保つ働きをしていますが、アルブミンが減ると血管から水分が染み出して浮腫(むくみ)、腹水、胸水などの原因となります。

【低値で低値で疑われる疾患】

急性感染症、肝硬変、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、白血病など

【高値で疑われる疾患】

脱水症状

アルブミンの高値は、脱水が原因のことが多くあまり問題になりません。

A/G比(アルブミン/グロブリン比)

アルブミンとグロブリンの比を見ることで体の状態を知ることが出来ます。

・基準値:1.10~1.80

A/G比は、アルブミンとグロブリンのバランスをみていて、総タンパクの値だけでは推測できなかった疾患の可能性を知ることが出来ます。

ゆえに基準値を外れた場合は、何らかの異常が隠れていると言えます。

   【肝機能異常】

健康な状態では、アルブミンが多く比率が1以上ですが、肝臓などに病気があると1以下となります。

例えば、肝臓が悪くなり肝機能が落ちるとアルブミンは極端に減少します。

感染症では、グロブリンが高値となるのでA/G比は1以下となります。

A/G比が1以下の時に疑われる疾患は、肝疾患、ネフローゼ症候群、栄養不良、骨髄腫などがあります。

まとめ

総タンパクを測定すると病気の有無を知ることができますが、病気を診断することは困難です。

アルブミンは主に栄養状態の指標として用いられますが、低下する原因は低栄養だけではありません。

肝機能障害やタンパク質の消費増大・喪失などによっても低下して病気の原因となる場合が多いので注意が必要です。

 【タンパク質の多い食品】

また、アルブミンの低下は、代謝や内分泌などのバランスが崩れて免疫低下による全身不調にも繋がります。

肝臓とアルブミンの関係から、肝機能の低下がアルブミンの低下にも繋がりますので、「お酒の飲みすぎ」「食生活」などの日常生活に注意しましょう。

そして食生活では、必須アミノ酸が多く含まれている肉類、魚介類、牛乳、大豆、卵などをバランスよく摂ることをお勧めします。



カテゴリー:臨床検査技師【検査値】, 検査値

0 0 votes
Article Rating

コメントをして情報共有しませんか?

0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments
0
Would love your thoughts, please comment.x
()
x
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。