【理学療法士監修】糖尿病と運動について深堀します【GLUT4(グルットフォー)】

この記事を読むのに必要な時間は約 12 分です。

皆さんも一度は耳にしたことがある血糖値。

血糖値とは血液中に含まれる糖分の事を指しますが、この数値が高いと糖尿病と診断されます。

糖尿病の予防と改善に関して「食事」「」「運動」が治療の3本柱として広く知られていますが、今回は理学療法士の視点から「なぜ運動が良いのか」について説明していきます。

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もくじ

①糖尿病の基本と種類~Ⅰ型とⅡ型~

まず、糖尿病の種類についてご説明します。

糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンに異常をきたす疾患です。

原因は大きく2つで、

1️⃣インスリン分泌量の減少

2️⃣インスリン抵抗性低下

に大別されます。

Ⅰ型糖尿病は膵臓の先天的な異常による1️⃣インスリン分泌量の減少が主原因であり、若年発症且つやせ型が特徴です。

一方で、生活習慣病に該当する糖尿病はⅡ型の方であり、2️⃣インスリン抵抗性低下が主原因となっています。今回は、Ⅱ型糖尿病の原因であるインスリン抵抗性について詳しく説明していきます。

②なぜ運動がいいのか~血糖値に影響する運動の効果~

運動が効果的である事を詳しく知る為には、インスリンの働きと筋肉の働きを知らなくてはなりません。

まずはインスリンについてです。

膵臓から分泌されたインスリンはいわば運搬車であり、血中に漂う糖分=血糖を筋肉や脳、臓器の血管へと運ぶ役割を担っています。

そして、インスリンによって筋肉中の血管まで運ばれた血糖は、筋肉内に取り込む必要がありますが、実は筋肉内にはGLUT4という受け取り人がいて、GLUT4が受け取る事で初めて筋肉内に取り込まれます。

ここで気付いた方もいらっしゃると思いますが、2型糖尿病の方は糖質過多に加えて、運動不足によって受け取り人であるGLUT4が受け取ってくれない、といった事が主原因となります。

これがインスリン抵抗性低下と呼ばれ、血糖値が高くなってしまいます。

つまり、運動とはこのGLUT4の活性化を目的として、インスリン抵抗性を改善させる治療であるということなのです。

③有酸素運動と無酸素運動の違いとトレーニング方法

無酸素運動

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②で説明した運動、それが実は無酸素運動の事です。

無酸素運動とは筋力トレーニングの事で、主に筋肉量を増やす事が目的です。

筋肉量が増えるという事は、それに比例して糖分をエネルギーとして消費する量が増えるという事ですので、血糖値が下がりやすくなります。

では、

「実際にどんな筋力トレーニングをしたらいいの?」

と思う方がいらっしゃると思いますので、ここでは器具を使わずに出来る無酸素運動の負荷量設定の方法をお伝えします。

筋力トレーニングの基本は、最大筋力の60%以上の負荷量が基本とされています。

器具を使用しない場合、自身の体重という重さは変えることが出来ないので、回数の設定を60%に合わせていきます。

例えば

腕立て伏せを限界まで行った回数が100回だとすると、その60%は60回という事になります。

このように、60%で出来る回数を設定する事で筋力が付くトレーニングになるという事です。

運動の内容に関しては特にこれが良いというものはありませんが、全身の筋力をバランスよく鍛えることが良い為、

☆上半身(腕立て伏せ)

☆体幹(腹筋・背筋)

☆下半身(スクワット)

のようにバランスよく鍛えることが重要になります。

有酸素運動

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有酸素運動とはウォーキング・ジョギング・サイクリング・水泳など、自分のペースで長く続けることが出来る運動の事を指します。

そして、この有酸素運動こそがGLUT4の活動を活発にする為、インスリン抵抗性改善につながる最も重要な運動という事なのです。

では上記に挙げた有酸素運動ですが、どのくらいの負荷量と頻度・時間を行ったらいいの?という事ですが、実は「ややラクである」程度の強度で、「1日30分以上」を行うのが良いとされています。

まず負荷量に関してですが、実は運動負荷量と長期的な血糖値(HbA1c)の変化に相関はなかったとされています。

それを踏まえて運動強度を設定しますが、有酸素運動の自覚的疲労度の評価にBorgスケールというものがあります。

今回詳しい説明は省略しますが、このBorgスケールにおいて「ややラクである」程度の強度が低強度として相関がある為、自覚的に「ややラクである」という感覚であればよいという事になります。

それよりも運動頻度・時間との相関を認めており、高頻度で長時間の運動を行う事が良いとされています。

また有酸素運動は、運動後にも持続的にGLUT4を活性化し続ける効果がある為、「10分×3回」というように運動を分けて実施する事も良いとされています。

このように、1日30分以上の運動時間を確保するという事が重要です。

④糖尿病と診断された時にも運動して良いの?~病期と運動負荷量~

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糖尿病に対して運動が効果的な事を説明していきましたが、実は病気の時期によっては「運動に注意が必要」または「運動自体が禁忌事項である」という事があります。

それが合併症の出現です。

まず、糖尿病性神経障害の最も重篤な状況が、足の壊疽(えそ)です。

これは末梢神経障害により足部の感覚が鈍くなり、ケガをしても気付かずに傷口から感染し腐敗してしまった状態の事を言います。

壊疽が生じると体重をかけてはいけない為、必然的に運動は禁忌事項となります。

次に、糖尿病性網膜症です。

網膜症には進行段階があり、単純網膜症から増殖網膜症へと進行していきます。

単純網膜症は自覚症状はなく、運動制限は特に必要ありませんが、増殖網膜症であれば積極的な運動は行ってはいけません。

増殖網膜症であれば、「視力低下」「黒いものがちらつく」などの症状がある為、これらの症状が出現した場合は積極的な運動は控えてください。

最後に糖尿病性腎症です。

腎症にも進行段階がありますが、原則としてどの進行段階でも運動は可能です。

しかし腎不全の状態となると、運動だけではなく、日常生活の全てにおいて疲労を感じない程度の範囲で動くようにしなければなりません。

腎不全の症状は「尿量の減少」です。

極端に尿量が減った場合は腎不全が進行している為、運動の負荷量には注意して行いましょう。

⑤まとめ

いかがでしたか?

糖尿病とは生活習慣病であり、誰もがなりうる病気です。

この病気の恐ろしいところは、血糖値が高いと何が悪いのか?という事があまり周知されていないところにあります。

まずは糖尿病と診断される前にしっかりと予防する事、診断後であれば合併症が生じる前に生活習慣を見直し、適度な運動を行う事で糖尿病を治すように心がけましょう。

<記事作成者(ランサーズ名)>Matsumoto

<経歴>

1992年福岡県生まれ。

小学3年生から野球を始め、5年生の時に野球肘を発症。理学療法士からのリハビリをきっかけに理学療法士の道を目指す。

2014年に専門学校を卒業し、福岡県にある総合病院に入職。

2019年から大学体操部フィジカルトレーナー就任。現在も総合病院で理学療法科主任として勤務しています。


※運営からコメント:当ブログに以前掲載した記事がありますのでそちらの記事もリンクしておきますね。



カテゴリー:理学療法士【糖尿病】, 糖尿病

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