【検査値を読めるようになろう】肝機能異常の検査項目AST・ALTについて【臨床検査技師監修】

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

肝機能異常を指摘された時、一番初めに思い浮かぶ項目のAST・ALT。

このAST・ALTは、健の情報番組や雑誌でも取り上げられることが多いので、比較的メジャーな項目と言えますが詳しく知らないという方も多いと思います。

そこで今回は、臨床検査技師の立場から測定値(基準値・異常値)などを通してAST、ALTを分かりやすくお伝えしていきたいと思います。

AST・ALTとは?

ASTとALTというのは、肝細胞でつくられる酵素のことで、肝臓の機能を調べるための代表的な項目です。

     【肝臓】

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)

心臓、肝臓、腎臓、筋肉などの細胞に多く含まれていて、アミノ酸の代謝などの働きをしてくれる酵素です。

ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)

肝細胞に非常に多く含まれていて、ASTと同様にアミノ酸の代謝などの働きをしてくれる酵素です。

AST・ALTは、健康な人でも血液中にわずかな量が存在します。

また、肝臓に何かしらの負担がかかって細胞が破壊されると血液中にAST・ALTが放出されます。

その結果、血液検査をするとAST・ALTの値が高く出ることになるので、これらの分量を測定すると肝機能異常の程度がわかります。

    心筋梗塞】

ただ、AST値だけが高い場合は、肝機能異常ではなく心臓や筋肉の病気の可能性がありますので、注意が必要です。

AST・ALTの測定について

ASTとALTの測定には生化学分析装置が用いられます。

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の測定原理

少し難しいですが以下のような内容になります。

α-ケトグルタル酸のα-ケト基とL-アスパラギン酸のアミノ基の転移反応(結合位置を変える化学反応)によって化学反応を促進させて、オキサロ酢酸とL-グルタミン酸を生成します。

このオキサロ酢酸にβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド還元型(β-NADH)とリンゴ酸脱水素酵素(MDH)を作用させて、リンゴ酸とβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド酸化型(β-NAD)が生成します。

このβ-NADHの減少による吸光度の減少速度を測定することでASTを求めます。

ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の測定原理

α-ケトグルタル酸のα-ケト基とL-アラニンのアミノ基の転移反応によって化学反応を促進させて、ピルビン酸とL-グルタミン酸を生成します。

このピルビン酸にβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド還元型(β-NADH)の存在下で乳酸脱水素酵素(LD)を作用させると、乳酸とβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド酸化型(β-NAD)が生成されます。

このβ-NADHの減少による吸光度の減少速度を測定することでALTを求めます。

基準値と異常値

AST

基準値:10~35 IU/L 

※施設によって若干基準値の幅が異なります。

異常値

この値は厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」で公表しています。

要注意(保健指導判定値):31 IU/L以上

異常(受診推奨判定値) :51 IU/L以上   

※健診は、早い段階で病気を見つけることが目的ですので、上記の基準値よりも厳しい数値設定になっています。

【AST高値で疑われる病気】

肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝、肝硬変、肝がんなど

ただし、ASTのみ高値は、肝臓以外の異常が疑われます。

心筋梗塞、多発性筋炎など

ALT

基準値:5~40 IU/L 

※施設によって若干基準値の幅が異なります。

異常値

ALTもASTと同様に以下の数値で厚生労働省から公表されています。

要注意(保健指導判定値):31 IU/L以上

異常(受診推奨判定値) :51 IU/L以上   

ALTは肝臓に多く存在するので、値が上昇している時は肝臓に異常があることになります。

【ALT高値で疑われる病気】

肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝、肝硬変、肝がんなど

ASTとALTの関係

肝機能異常で病気を推測していく場合は、ASTとALTを組み合わせてみていきます。

例えば、ASTとALTが共に高値を示している時は、肝炎・脂肪肝、肝硬変、肝がんなどが考えられます。

また、ASTとALTの上昇の度合いによって肝炎の種類を推測することも出来ます。

  • ASTとALTの急激な上昇:A型肝炎、急性B型肝炎
  • ASTとALTの緩やかな上昇:慢性B型肝炎、C型肝炎
    【脂肪肝】

ASTとALTの比率からも肝疾患の推測ができます。

  • AST<ALT:脂肪肝、肝硬変、肝がんなど慢性的な肝臓の病気が疑われます。
  • AST>ALT:急性肝炎など肝臓に急激な悪化を伴う病気が疑われます。

まとめ

AST・ALTの値を見ることで、肝機能の異常を知ることが出来ます。

ただし、ASTのみの上昇の時は肝臓以外の異常が考えられます。

肝臓は、自覚症状がほとんど現れることがありませんので、健康診断などでAST・ALTが51IU/Lを超えている時は、早めに医療機関に受診することをお勧めします。

また、100IU/L以上の場合は、肝炎にかかっている可能性が非常に高く、投薬(抗ウイルス薬)治療などを必要とする場合もあります。

そういうことから、高値のまま放置することは肝炎のリスクを上げ、肝硬変や肝がんなどに移行する危険性があるということを知ってく必要があります。

初期段階であれば、肝機能異常を指摘されたとしても生活習慣の改善で治ることもあります。

逆に自覚症状が出てからでは、病状が進行している場合も多いため完治が困難となるケースも少なくありません。

自覚症状もないので、見過ごしてしまいがちな肝機能異常ですが、健診結果を見直して健康について考えてみましょう。



カテゴリー:臨床検査技師【検査値】, 検査値

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