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昔は一般的に自家中毒症という名前で呼ばれていた病気ですが、現在では周期性嘔吐症と言われています。
私も、プレッシャーや環境の変化に弱い子ども時代に繰り返しました。
今回は、私と子供が経験した自家中毒症の体験談をお話しします。
もくじ
自家中毒症の症状と経過
私が発症したのは40年以上前で、よく嘔吐すると小児科の先生にかかっていました。
母が信頼していた小児科の先生は、高齢でしたが海外などにも行かれており治療方法は自分のやり方に固執はせずよりよい方法を調べる方で、私が体調を崩すと夜中でも診察をしていただけました。
ただその夜に発症した自家中毒症はいつもより激しく、布団に張り付いたままで母が洗面器を持って往復し、私はそこに顔をつっこんで嘔吐を数十回繰り返す一晩でした。
最初は夕食として胃にあったものが固形物や半消化物として吐き出されましたが、すぐに胃は空になり、その後は胃液の嘔吐が続き、最後には水さえ出なくなりました。
いつもの先生に連絡を取ったかどうか、母に最近訊いても覚えてはいなかったのですが、洗面器から顔も上げられない状態では布団から出ることもできませんでした。
ふだんはそこまで激しい症状は起こさず、注射を受けて快復していたことが多かった記憶があります。
母はなにかの薬を注射されているものと思っていたようですが、少し大きくなって先生に自分で訊いたところ生理食塩液だと言われました。
周期性嘔吐症を治療するというより、それで起こっていた脱水症状に対してだったようです。
思い当たる原因
こういった症状が起きるきっかけは、幼稚園での進級によるクラス替えで環境が大きく変わったとき、性格から友だちが作りにくく孤立してしまったとき、幼稚園のお遊戯会などで疲れたときなど、疲労や過度の緊張感を感じた後が多かったと思います。
母は、子どもは大勢と群れて外を走り回って遊ぶことや、何でも友だちと行動を共にすることが楽しいものと信じていましたが、私は一人で静かに屋内遊びをすることが安心できる性格でした。
そのため、強引な母に集団の中に放り込まれてストレスを溜めるたび、多少にかかわらず発症していました。
激しい嘔吐の夜を過ぎて
劇症といえるほど、一晩中水すら出なくなるまで嘔吐を続けたのはその一夜だけですが、母が信頼する先生の小さな個人診療所には点滴設備があったかどうか、今となっては不明です。
その頃に、自家中毒症(周期性嘔吐症)が尿検査でケトン体が大量に排出されることで検査が可能になる時代だったかどうかもわかりません。
自分が大人になり、環境の変化には相変わらず弱いものの、自家中毒症とはっきりわかる症状は起こしにくくなり、むしろあの一晩から嘔吐に対して強すぎる恐怖心を植え付けられて嘔吐恐怖症になりました。
それ以来ほとんど嘔吐とは縁がなくなったことで、親となるまで自家中毒症との再会はありませんでした。
子供にも同じ症状が

20年ぶりに典型的な自家中毒との再会は、最初の子が幼稚園に入ってしばらく経ったときでした。
友だちと遊ぶことも幼稚園の生活も楽しんでいる明るく社交的な子が、私の父に些細なことで食事中に怒鳴られて、食べていたものをテーブルに激しく嘔吐しました。
親たちは私が悪い物を食べさせたせいだろうと言いましたが、独特の口臭であるアセトン臭からおそらく過去の自分と同じ自家中毒症だろうと思い、休日だった夫の運転で小児科救急外来へ向かいました。
検査の結果、当番医だった小児科の先生が
「ケトン体が出てますね」
と仰ったので私はすぐ自家中毒症と分かり、ケトン体を知らない夫は横からうるさく訊いてきました。
先生からは「スポーツドリンクを少しずつ、一口ずつ」と指示され、子どもにはそれで水分補給をし、以降子どもが私の時のような激しい症状を繰り返すことはありません。
経験を活かして対策
幼稚園の休みには子どもの好きなことをさせ、行きたいと言ったところに無理のないスケジュールで遊びに連れていき、理不尽に怒鳴りつける父からはできるだけ離して食事をさせるようにしました。
風邪をひきやすい体質の子で、それもきっかけになると自分の体験から覚えているため、風邪予防に努め、発熱時には効率よく水分を摂取させ、疲れ過ぎないように休養を心掛けることで自家中毒症を繰り返さないよう気をつけました。
自家中毒症はケトン血性嘔吐症とも呼ばれます。
胃腸風邪だと思って診察を受けると、ケトン体が尿に多く出ていることで自家中毒症と診断されたりします。

ほかにも脱水でケトン体が出ている病気はありますが、子どもが環境の変化などのストレスで激しい嘔吐を始めたときに、自分が幼児期の体験から同じ状況だったことで、これは自家中毒症の可能性が高いと感じました。
そして案の定、ケトン体が尿から検出され、親の私でもわかるほど子供の口からはアセトン臭がしていました。
親子で似た体質、似た気質だったようです。
まとめ

自分が一度体験しているから、子どものときに慌てず対応できたこと、もしかしたらいつか自家中毒症にかかる可能性があるかもと、事前に最新の知識を得ていたことなどは、役に立ったと思います。
特に子どもは、私の幼少時も同様ですが、すぐ脱水状態に陥ります。
だからといって急に水を一気に飲ませるとまた嘔吐を繰り返します。
夫は私と同年代なのに、それを理解していない人だったため、子どもが嘔吐を始めたときの食や水分といったことでの対応は、ちゃんと医学面から説明しておく必要がありました。
似たような症状で悩んでいる方へ
入学や卒業、新学期や転校、入社や転職、多くの環境変化があります。
自家中毒症は大人も子どもも発症します。
ストレスに弱い人は日ごろから体調管理と、できるかぎりリラックスできる時間を取ることなど、いろいろ注意してほしいと、今もあの激しい嘔吐に強い恐怖が残る身としては、そう思ってしまいます。
カテゴリー:体験談