この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。
膵臓の検査と言えば、血液検査のAMY(アミラーゼ)が有名で、最も汎用されている検査項目です。
しかし、AMYは膵臓の病気に対して、感度があまり高いとは言えません。
今回は、どうして膵臓の検査にAMYが用いられるのかなどを含め、AMYと膵臓の病気についてお伝えします。
もくじ
AMY(アミラーゼ)とは
AMY(アミラーゼ)は、でんぷん(糖質)やグリコーゲンを分解して糖にする消化酵素(タンパク質)です。
膵臓・唾液腺・耳下腺から分泌されますが、ほとんどが膵臓由来です。

また、食品の大根や山芋などにも含まれていて、市販薬の胃腸薬などにも活用されています。
AMYには、S(唾液)型アミラーゼとP(膵)型アミラーゼの2種類のアイソザイムが存在します。
このアイソザイムを分析することで、原因となる臓器を特定することが出来ます。
- S(唾液)型アミラーゼ:咀嚼の時に唾液に含まれます。
- P(膵)型アミラーゼ:食物が胃から腸に送られる時に腸に含まれます。
通常、血液中に微量だけ漏れ出たAMYは、全身を回ると腎臓でろ過され、尿として排出されます。
膵臓や唾液腺で障害が起きると血液中に大量のAMYが漏れ出てくるため血清AMYの値が高くなります。
検査と測定法
◆どのような時に検査するの?
血清アミラーゼの検査は、消化器症状(腹痛・背部痛・体重減少・下痢など)、発熱、耳下および顎下腺の腫れと痛み、アルコールの多飲、糖尿病など膵臓や唾液腺の病気が疑われるときに行われるスクリーニング検査です。
また、病気を疑って血清アミラーゼを測定する時は、尿中アミラーゼも一緒に測定します。
血清アミラーゼに比例して値が上昇します。
ただし、数値が高いからといって病気が確定するわけではありません。
血清アミラーゼの上昇の程度と膵臓の病気(膵炎)は、必ずしも一致しないのです。
もし、膵臓や唾液腺の病気であった場合、重症な時ほど血清アミラーゼが高値となり、治療して軽快に向かうと徐々に値が下がっていきます。
このことから、血清アミラーゼを治療効果の判定や定期的な経過観察に用いられることがあります。
◆AMYの測定方法
血清アミラーゼは、自動分析装置で血清を測定します。
また、採血から結果報告まで約1時間を要します。
▪測定方法
酵素法(UV法)
▪測定原理
アミラーゼを基質液(一定濃度のデンプン溶液)に作用させて、加水分解で生じた還元糖の吸光度変化量を測定することにより、α‐アミラーゼ活性を求めます。
*尿中アミラーゼも尿を自動分析装置で測定します。
基準値と異常値
◆基準値
- 血清アミラーゼ 37~125 IU/L
- 尿中アミラーゼ 380 IU/L
- P(膵)型アミラーゼ 21~64 IU/L
基準値に性差や食事の影響はありません。
また、やせ型の方が肥満型の人よりもアミラーゼの分泌量が高いため、血清アミラーゼの値が約20%高くなる傾向があります。
どちらの体型も異常がなければ基準範囲内です。
◆異常値
異常値は、膵臓・唾液腺の細胞に障害が起きていることを示しています。
▪血清アミラーゼの異常値(重症度の分類)
36 IU/L以下 低アミラーゼ血症
126~399 IU/L 軽~中等度の高アミラーゼ血症

400~899 IU/L 高アミラーゼ血症
900 IU/L以上 パニック値
低アミラーゼ血症:膵臓・肝臓の病気の末期症状、病的症状がなければ、特に心配なく経過観察
軽~中等度の高アミラーゼ血症:膵臓・肝臓・唾液腺および腎臓の病気が疑われるため精密検査が必要
高アミラーゼ血症:軽~中等度よりも強く病気が疑われる
パニック値:病的症状があれば、命を危ぶむ危険があるため直ちに治療が必要
◆異常値と疾患
▪高値を示す疾患
急性・慢性膵炎、膵がん、耳下腺炎(おたふくかぜ)、慢性腎不全など
▪低値を示す疾患
慢性膵炎(末期)、膵がん(末期)
急性膵炎
・症状:激しい腹痛
・原因:過度の飲酒や脂肪分の多い食事など
・異常値:発症すると急激に上昇(基準値の10倍以上)

慢性膵炎
・症状:持続した軽度の腹痛
・原因:常習的な過度の飲酒
・異常値:軽~中等度上昇(基準値の2~3倍)
膵がん
・症状:進行するまで症状が出にくい
進行したときの症状(腹痛、食欲不振、膨満感など)
・原因:遺伝、糖尿病、慢性膵炎、喫煙など
・年齢と性別:50~70歳の男性に多い
・異常値:軽~中等度上昇(基準値の2~3倍)
炎症を引き起こすと基準値の10倍以上
◆病気以外で高値
血清アミラーゼでは、病気以外で稀に高値を示すことがあります。
それは、マクロアミラーゼ血症と呼ばれ、病的なものではなく心配はありません。
高値となる原因は、アミラーゼに抗体として働くタンパク質(免疫グロブリン)が結合して大きくなると、尿に排泄できずに血液中に滞ってしまうためです。
マクロアミラーゼ血症は、1000人に1~2人(高アミラーゼ血症の0.5~2.5%)と言われています。
炎症などの異常がなく、血液よりも尿中のアミラーゼの値が低いことから判定します。
まとめ
AMYは、膵臓の病気に対して感度はあまり高くないですが、膵臓・唾液腺の細胞に障害が起きると異常値を示します。
また、検査が容易に出来るため膵臓や唾液腺の病気を疑う時は、スクリーニング検査として多くの医療機関で汎用されています。
そこで異常が出たら、精密検査をして病気の有無を特定していきます。

膵臓の病気の中でも膵がんの発症率は、近年高い傾向にあります。
膵がんは、自覚症状に乏しいため早期発見が難しいと言われています。
そのため、年1回の健康診断でAMYや腫瘍マーカー(CA19-9)を測定して、可能であれば腹部エコーやCT検査もオプションとして加えることをお勧めします。
もし、AMYが持続して上昇、体の変化(背中の痛み、体重減少など)があれば、早期受診することが理想かと思われます。
カテゴリー:”薬”立つ情報, 臨床検査技師【検査】, 臨床検査技師【検査値】, 検査値