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酵素(タンパク質)には、検査前に運動することで値に影響を及ぼすものがあります。

1つは、体内のブドウ糖がエネルギーに変化するときに働くLDH(乳酸脱水素酵素)。
もう1つが筋肉を動かすためのエネルギーを貯める働きをするCK(クレアチンキナーゼ)です。
どちらも筋肉が障害されると血液中に流出して高い値を示します。
今回は、筋肉と関わりの深いCK(クレアチンキナーゼ)についてお伝えします。
もくじ
CK(クレアチンキナーゼ)とは
CKは、体内の筋肉(骨格筋や心筋)に多く含まれている酵素(タンパク質)です。
そして、筋肉の収縮や弛緩に必要なエネルギーを筋肉細胞に貯める働きをします。

そのため、骨格筋や心筋などが障害を受けると筋肉細胞内のCKが血液中に流出してCKの値が高くなります。
CKは、筋肉以外に脳にも僅かですが存在します。
また、CKは同じ働きをするが分子構造の異なる3つのアイソザイムに分類され、それぞれ含まれている臓器が異なっています。
- CK-MM(骨格筋)
- CK-MB(心筋)
- CK-BB(脳・脊髄)
健常者の血液中に含まれるCKのほとんどがCK-MMです。
CKが高い値を示した時は、CKアイソザイムを調べることで障害を受けている臓器を特定して、疾患の推測に繋げることも出来ます。
◆検査を受ける前の注意
CKは、激しい運動、肉体労働をしたときに疾患とは関係なく値の上昇が3〜4日間続きます。
他に筋肉注射、外科手術後、点滴漏れのときも筋組織が損傷したことで値が上昇します。
また、コレステロールの治療薬、抗精神薬などの副作用で横紋筋融解症となり値が上昇することもあります。
検査前の運動は数日前から控えるようにして、服薬の有無に関しても受診時に確認しておくとよいかもしれません。
測定について
◆CKの測定
自動分析装置が用いられ、UV法(JSCC標準化対応法)により血清中のCK活性値を求めます。
◆CKアイソザイムの測定(電気泳動法)
CKアイソザイムの電気泳動法は、原因となる臓器を特定することができます。
しかし、検査結果が出るまでに3~4日かかるため日常検査として行うには非効率的といえます。

CK-MBの測定には、電気泳動法だけでなく免疫阻害法、ラテックス免疫比濁法などがあり、日常検査の主流は免疫阻害法やラッテクス免疫比濁法となっています。
この測定には、CKと同じく自動分析装置が用いられます。
また、CK‐MBが高値のときは心筋障害のマーカーとして心筋トロポニン、HFABPなどと汎用されます。
◆測定原理(免疫阻害法)
抗CK-M活性阻害抗体で、CK-MM(骨格筋)、CK-MB(心筋)のMサブユニット活性を阻害して、残っているBサブユニット活性を2倍してCK-MB活性とする。
この測定の前提として、血液中のCK-BB(脳・脊髄)が微量で、出現する病状が限られていることとなっています。
基準値と異常値について
◆基準値
▪CK(UV法):男性:29~243 IU/L 女性:27~172 IU/L
*男性と比較して女性の数値は少し低くなっています。
CK-MB(免疫阻害法):25 IU/L
▪電気泳動法(CKアイソザイム)
- CK-MM(骨格筋):92~100%
- CK-MB(心筋) :0~6%
- CK-BB(脳・脊髄):0~2%
◆異常値
▪CK
筋肉に支障があるとCKは血液中に出るため高値となります。
心筋梗塞、筋ジストロフィーでは著明な高値を示します。
CKが高値で心疾患が疑われる場合は、CK-MB、トロポニン、HFABPなどの心筋マーカーを測定します。
もし、筋肉に関する疾患が特定できない時は甲状腺の疾患を疑います。
甲状腺機能低下症では、CK以外に総コレステロール、AST、LDHなども高値となります。
他に高値を示すものには、悪性腫瘍、妊娠などがあります。

▪CK-MB
CK-MBは、心筋梗塞を起こすと値が4~8時間で上昇し、24時間でピークとなり、約3日間上昇している場合が多いです。
また、CK-MBの値が総CKの10%を超えた場合は急性心筋梗塞や心筋炎が疑われ、心筋梗塞になると40%まで上昇します。
CK-MBを含めた血液検査以外に心電図検査や心臓超音波検査なども行われ、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)を特定します。
他に心筋炎が疑われる時は、これらの検査以外にMRI検査などが追加して行われます。
▪CK-MM
骨格筋に多く含まれるCK-MMが高値の時は、まずは横紋筋融解症を疑います。
横紋筋融解症を疑う時は、原因となる抗コレステロール薬などの治療薬の副作用、打撲などの怪我、脱水がないかを確認します。
また、筋肉の病気が疑われるときは筋ジストロフィーが考えられます。
この疾患を確認する場合、筋電図検査や筋生検(筋肉組織の一部を採取)が行われ、必要に応じて遺伝子検査を行なう時もあります。
症状などから筋疾患が否定される場合は、甲状腺機能低下症が疑われます。
追加検査として生化学検査(総コレステロール、ASTなど)以外に甲状腺ホルモン(TSH、FT4、FT3)や超音波検査で甲状腺の状態を調べます。
▪CK-BB
脳や脊髄に多く含まれるCK-BBが高値の時は、脳の病気(脳外傷、脳梗塞、急性脳症など)を考えます。
追加検査として頭部CTやMRI検査を行ないますが、脳脊髄液を採取して調べることもあります。
まとめ
CK(クレアチンキナーゼ)は、健診の血液検査の項目に入ることは、ほとんどありません。
心筋や骨格筋などに異常が疑われる時に検査されることが多いです。
もし、健診や他の疾患で受診したときに高値だったときには、まずは運動や服用している薬などの原因を確認してみて下さい。
また、慢性的な筋肉の炎症や甲状腺機能低下症でも高値と出るので、これらも除外できるかをセルフチェックして、気になる場合は医療機関へ受診してみて下さい。
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