【検査値を読めるようになろう】LDH(乳酸脱水素酵素)の異常は体内で何が起きているの?【臨床検査技師監修】

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

AST・ALT・γ-GTPと関係する臓器や疾患は、何となく分かるかなと思います。

LDH(乳酸脱水素酵素)は、特に何も思い浮かばないのではないでしょうか。

今回は、LDHの特徴と臓器や疾患との関係についてもお伝えしたいと思います。

LDH(乳酸脱水素酵素)とは

LDHは、細胞の中のブドウ糖が分解されてエネルギーに替わる時に働く血清中の酵素(タンパク質)です。

また、ASTやALTと同じ逸脱酵素の1つでもあります。

逸脱酵素とは、通常であれば細胞内で活動している酵素(タンパク質)が何らかの理由で血液中に流れ出したものです。

多くの場合、組織障害によって細胞が破壊されて血液中に流れ出てきます。

LDHは、体内の色んな組織に存在し、心臓、腎臓、筋肉、赤血球などに多くみられます。

組織が何らかの原因で障害を受けて細胞が壊れると、LDHが血液中に流れ出してLDHの値が高くなります。

      【細胞障害】

ただし、LDHの値だけでは組織および疾患を特定することは困難です。

そのため他の項目と組み合わせて総合的に判断する必要があります。

また、LDHには5種類のアイソザイムがあるので、これを調べることで障害部位をある程度特定することが出来ます。

アイソザイムとは、酵素(タンパク質)の活性がほぼ同じですが、タンパク質のアミノ酸の並びが異なる酵素をいいます。

簡単に言うと、働きが同じで構造の違う酵素(タンパク質)です。

LDHは、激しい運動をするとブドウ糖が大量に分解され、同時に大量の乳酸が生成されます。

そして、筋肉が乳酸を利用する許容を越えると、血液中のLDHの値が高くなり約1週間続くことがあります。

そのため、血液検査をする前の数日間は、運動を控える必要があります。

年齢差、男女差、食事による数値の変動はありません。

LDH・LDHアイソザイムの測定

LDHは、自動分析装置を用いて測定されます。

測定方法は、L(乳酸)⇒P(ピルビン酸)UV法でLDHの活性値を求めます。

測定原理

LADは、NADのある場所で乳酸をピルビン酸に変換する反応を促進させます。

同時にNADは還元(水素を保存)されて、NADHに変換されます。

この時にNADHの増加が起こります。

NAD:β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化型

NADH:β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型

L-乳酸 + NAD  ―LDH→  ピルビン酸 + NADH + H

LDHアイソザイム

LDHアイソザイムは、LDHが高値の時、どのタイプが増えているかで障害されている臓器などを推定することが出来ます。

測定方法は、電子冷却泳装置を用いた電気泳動法で行われます。

    【電気泳動装置】

電気泳動法

電気泳動で分離された血清中のLDHアイソザイムは、乳酸をNADのある場所でピルビン酸に脱水素化します。

この時に生成されるNADHジアフォラーゼがある場所でNTBを還元(水素を保存)して、LDHアイソザイム活性に対応する不溶性ジボルマザンを生成します。(難しい内容なので軽く流してください。)

LDH・LDHアイソザイム分画の基準値と異常値

LDHの基準値

115~245 IU/L(JCSS標準化対応法) 

*JCSS:日本臨床化学会

124~222 IU/L(IFCC標準化対応法) 

*IFCC:国際臨床化学連合

2021年4月1日より世界的に普及しているIFCCの基準測定操作法に変更されました。

LDHの異常値

LDHの高値は、生体内で起きている細胞の破壊と程度を反映しています。

要注意 114 IU/L以下   246~400 IU/L

要受診 401 IU/L以上

要注意の基準値以下(114 IU/L以下)の場合は、臨床的に問題となることはほとんどありません。

また、要注意の基準値以上の範囲内では、明らかな症状は認められませんが再検査を必要とします。

要受診は、数値によって3段階に分けられます。

  • 軽度増加  401~600 IU/L   心不全、慢性肝炎、肝硬変、ネフローゼ症候群
  • 中等度増加 601~1000 IU/L  悪性腫瘍、急性肝炎、心筋梗塞
  • 高度増加 1001 IU/L以上     悪性リンパ腫、急性骨髄性白血病、悪性貧血

高度増加は、重篤な細胞破壊が起きている可能性が高く、緊急報告を要するパニック値として扱われます。

また、多臓器不全を起こして死に繋がることもあるため、原因を特定して直ちに治療を必要とします。

LDHは、疾患以外に採血手技不良により血液が溶血してしまう機械的溶血、激しい運動、閉経後の女性ホルモンなどの生理的変動で高値を示すことがあります。

機械的溶血によるものなのかどうかは、LDHだけでなくASTやカリウムも高値を示すので、それらを含めて判断します。

また、再検査をして基準値範囲内であれば生理的変動と判断されますが、高値の場合は何らかの疾患が隠れている可能性もあるので精密検査が必要となります。

LDHアイソザイム分画の基準値

〈LDH総活性〉

  • LDH1 16.5~29.4%  
  • LDH2 30.7~41.4%  
  • LDH3 20.1~28。5% 
  • LDH4 6.2~13.2%
  • LDH5 4.8~11.8%

◆予測される障害部位と疾患

  • LDH1・2増加    赤血球・心臓  悪性貧血、心筋梗塞
  • LDH2・3増加    肺・白血球   肺癌、悪性リンパ腫
  • LDH3・4・5増加  腫瘍      転移癌
  • LDH5増加      肝臓・骨格筋  肝炎、肝癌、骨格筋の損傷

まとめ

LDHは、体の中のあらゆる組織に存在します。

これらの組織で細胞が破壊されると、障害のレベルに応じてLDHが血流中に流出します。

ゆえにLDHが高値のときは、体内のどこかで細胞障害が起きていると予想されます。

ただし、LDHだけで組織や疾患を特定することは困難ですので、他項目と組み合わせて判断する必要があります。

また、LDHアイソザイムから障害されている臓器を推定することができます。

LDHが高かったときは、自覚症状が無くても何らかの病気が隠れている可能性があります。

早めに医療機関へ受診することをお勧めします。



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