【検査値を読めるようになろう】ChE(コリンエステラーゼ)の異常は低値が重要について【臨床検査技師監修】

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

皆さんは、ChE(コリンエステラーゼ)という酵素(タンパク質)を知っていますか?

今回は、あまり知られていませんが、肝臓・腎臓だけでなく有機リン中毒サリン中毒の検査項目でもあるChE(コリンエステアーゼ)についてお伝えします。

<補足:参考文献>

↓地下鉄サリン事件(朝日新聞社より引用)↓

https://www.asahi.com/articles/SDI201606179433.html

↓中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案について(朝日新聞社より引用)↓

http://www.asahi.com/special/080130/TKY200801300289.html

ChE(コリンエステラーゼ)とは

ChEとは、コリンエステルと呼ばれる物質をコリンと有機酸に加水分解する酵素です。

加水分解酵素とは、加水分解反応を触媒(化学反応を促進させる)する酵素の総称です。

具体的には、ある物質を水と反応させることで、その物質を分解して別な物質を生成することです。

ChEは、肝臓で合成され血液中に分泌されるので、肝臓や血液に多く存在しています。

また、肝臓や腎臓の異常を調べますが、有機リン中毒、サリン中毒の有無についても用いられます。

多くの項目の異常値は、高値に焦点が当てられますが、ChEは低値のほうが重要となります。

測定方法

ChEは、血清を自動分析装置にかけて測定します。

測定法はUV法(P-ヒドロキシベンゾイルコリン基質法) JCSS標準化対応法が用いられます。

測定原理

(第1反応)

ChEは、基質のP-ヒドロキシベンゾイルコリンを加水分解してP-ヒドロキシ安息香酸を生成します。

P-ヒドロキシベンゾイルコリン + H2O  -ChE→  P-ヒドロキシ安息香酸 + コリン

*P-ヒドロキシベンゾイルコリン:pHBC

(第2反応)

P-ヒドロキシ安息香酸は、NADPHがある場所でP-ヒドロキシ安息香酸酸化酵素により3・4ジヒドロキシ安息香酸に変換されます。

P-ヒドロキシ安息香酸 + NADPH + H + O → 3・4ジヒドロキシ安息香酸 + NADP + H

*P-ヒドロキシ安息香酸:pHBH

そして340nmの吸光度の減少速度からChE活性を求めます。

検査時間は、採血から自動分析装置で測定して結果が出るまで約1時間程度です。

ChEは、日内変動、飲食、運動などの影響を受けることはありません。

基準値と異常値

基準値

男性240~490 IU/L

女性200~460 IU/L

ChEは、測定方法によって基準値が異なるだけでなく、同じ測定方法でも施設によって多少基準値が異なります。

また、薬剤の影響や性別による生理的変動も認められます。

薬剤の影響は、コリンエステラーゼ阻害剤の服用によって低下します。

性別では、女性は月経前期および月経期で数値の減少が見られ、妊娠でも数値が低下します。

異常値

異常高値

  【脂肪肝】

ChEは、脂質代謝にも関わっているため、栄養の摂り過ぎ肥満で値が上昇して高値となります。

疑わしい疾患は、脂肪肝です。

追加検査として肝機能検査、腹部エコーなどを行ないます。

また、尿にタンパクが沢山出てしまうと、血液中のタンパク(アルブミン)が低下しています。

   【腎機能低下】

この時に脂質代謝の異常も起きるため、ChEの値が高値となります。

疑わしい疾患は、ネフローゼ症候群です。

追加検査として尿沈渣、尿中アルブミン、腎機能検査などを行ないます。

甲状腺ホルモンもChEと関係していて、ChEの合成を高める働きがあります。

そのため、血液中に甲状腺ホルモンが増えると値が高値となります。

疑わしい疾患は、甲状腺機能亢進症です。

追加検査として甲状腺ホルモン検査、甲状腺エコーなどを行ないます。

異常低値

ChEの異常値は、高値よりも低値のときが重要です。

極低値

     【農薬】

特に極低値で中毒症状がみられる場合は、農薬などの有機リン中毒、地下鉄サリン事件で使用されたサリン中毒が疑われるので緊急性が非常に高くなります。

なぜなら、有機リンやサリンはコリンエステラーゼの活性を強烈に妨害するという特徴を持っているからです。

また、極低値なのに薬物中毒が考えにくいときは、遺伝性変異の遺伝性ChE欠損症が疑われます。

この遺伝性ChE欠損症は、症状がなく治療の必要もありません。

低値

ChEは、肝細胞で合成されて血液中に分泌される酵素なので、肝細胞が破壊され機能が低下すると値は低くなります。

  【肝機能低下】

疑われる疾患には、肝硬変慢性肝炎劇症肝炎肝がんなどがあります。

肝硬変は、慢性的な肝臓の炎症が続いたことで肝細胞の破壊が著しく進み、肝臓が固い状態(線維化)になります。

そのためChEがほとんど合成されなくなり血液中の値は低くなります。

劇症肝炎は、発症してから日ごとに値の低下が大きくなる特徴があります。

慢性肝炎は、軽症の低下が持続します。

肝疾患による低値が疑われる場合は、肝機能検査、超音波検査、CT検査などの精密検査を行ないます。

またChEは、低栄養や悪性腫瘍(末期)でも低値となるので、他の検査データなどから総合的に判断する必要があります。

まとめ

ChEは、肝細胞が破壊されると合成が低下して低値となります。

そのためChEは、肝機能の異常を調べる検査の1つとされます。

異常低値の時は、肝疾患を疑いますが、その他の項目と合わせて総合的に判断する必要があります。

また、ChEが極低値で中毒性の症状がある場合は、有機リン中毒やサリン中毒を疑いがあるため緊急性を要します。

もし、ChEの値が低かったときは、症状の有無にかかわらず医療機関に受診することをお勧めします。



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